139 / 722
第2章 幼年編
140 海水浴とBBQ
しおりを挟むこの日はお楽しみの海水浴だ。
この日ばかりは勉強はナシ。漁村の先の砂浜へみんなで歩いて行った。
キャー
キャー
キャー
水をかけあったり、泳いだり。
浜辺の海は、とにかく最高だった。
水着姿の女子はみんな可愛かった。
(なぜか水着は現代日本のそれと変わらなかった)
ナタリー寮長のビキニの水着姿は‥‥‥ハイルだけでなく俺も鼻血が出そうだった。
「アレクどうしたの?」
「顔が赤いわよ?」
「べ、べ、別に赤くねーし‥‥」
「フフ。なに照れてるのよ!」
「照れてねーし‥‥」
いつもバカを言い合うくらい仲良くなったアリシアとキャロルのかわいい水着姿。
アリシアのビキニ姿にもキャロルのセパレート姿にも照れて、まともに視線を合わせられない俺だった。
(やっぱり女子のほうがマセてるんだよな)
見てはいけないモノもあった。
レベッカ寮長のハイレグ水着だ。これは違った意味で目の毒だった。
あー楽しいなー。
俺は平泳ぎやクロールをして楽しく泳いだ。
なんかでっかいイカがたくさんいた。
「こうか?こうか?」
バタバタバタバタ
「ああいいぞ、うまいぞ」
バタバタバタバタ
「こうか?こうか?」
両手を持って相方のバタ足を促す。
そう、寮の相方ハイルは泳げなかった。
もちろん海を見るのも、中に入るのも初めてだという。
ただセンスは良いみたいで、ものの5分もしない内に浮かんで犬掻きをし始めた。
キャー
キャー
キャー
その後は、みんなとボール投げをしたりして遊んだ。
うわぁーん!
チクショー、最高だぜー!
なぜか泣きながら遊ぶハイルがいた。
「おーい?ハイル何処だ?おーい?」
「ハイルくーん?」
あれ?さっきまでいたハイルがいない。
「おーい?おーい?」
しばらくして、ぷかーと浮上するハイル。
「おい!しっかりしろ!」
「レベッカ寮長!ハイル君が!」
沈むボールを追いかけて、ハイルは溺れてしまった。
(本人曰く、あまりの楽しさに息をするのを忘れていたらしい)
「まっ!たいへんよ!息をしてないわ!」
レベッカ寮長が言う。
(えっ?マジ?ヤバいんじゃね?)
ガバッ!
ちゅーーー!
ハイルを抱えた寮長が呼吸をしないハイルをマウストゥーマウスで息を吹き込む。
(えっ?でも寮長吸ってない?)
「んん‥」
しばらくして蘇生を果たしたハイルがいた。
「ああ、みんな。俺溺れたんだな」
「そうよ、危なかったんだからね!」
アリシアとキャロルが声をかける。
「なんかね、俺、天使が見えたよ‥」
「「「天使‥‥」」」
なんとも言えない空気感が漂った。
「アレク‥‥何があった?」
「いや、知らない方がお前のためだ‥‥」
「ご馳走さまっ!」
レベッカ寮長が呟いた。
「えっ?何?」
ハイルが周囲を見渡す中、みんなが下を向いていた。
「「さーみんなーお昼ご飯よー!」」
レベッカ寮長とナタリー寮長の2人が寮生たちを呼ぶ。
ふだんは1日2食なんだが、こうもしっかり遊ぶとさすがに腹も減る。
「「「腹減ったー」」」
砂浜に作られた簡易テントには、お楽しみのBBQが用意されていた。
大小さまざまな魚や、海老、貝。鍋もある。
そこには予想以上に美味しそうな魚貝類が並んでいた。
年配の方々を中心に、漁村のみなさん総出の歓待だ。
食事の前に、漁村のお爺さん村長が挨拶をした。
「今年もみんなで来てくれてありがとう。寂しくなったこの村も、学園のみんなが来てくれる夏は、賑やかだったころを思い出せるんじゃよ。どうかお腹いっぱい食べておくれ」
「「「いただきまーす」」」
「「うまっ!」」
「「おいしーい!」」
塩中心の味付けだが、なんと魚醤もあった。魚醤は魚から作られた醤油みたいなものだ。田舎の爺ちゃんが好みだったので俺にも馴染みの調味料が魚醤だ。
うん、この世界にきて、塩以外に初めて出会う調味料だよ。
シンプルに塩も美味しいが、どの魚も貝も少し魚醤を垂らして炙ればそのおいしさはさらに美味しくなった。村の名産という魚の干物や、海藻や魚のアラで煮て魚醤で味付けをした漁師汁もたまらなくおいしかった。
「アレク君、こっちに来たら?」
「はーい」
レベッカ寮長やナタリー寮長と一緒に、楽しく話しながらのBBQ。
やっぱり夏はいいな。
最初に挨拶をした村長さんや村のお年寄りも中に入って、食べて歓談する楽しいひとときだ。
「アレク君、この漁村ね、海の魔獣のせいで寂れちゃったのよ。それでも昔、私やお兄ちゃんがアレク君くらいのときはまだ賑やかだった名残りもあったのよ」
「そうなんじゃよ。こいつが村をダメにした魔獣キーサッキーなんじゃ」
こう言いながら、村長さんがキーサッキーという名の海の魔獣をBBQ台にどーんと乗せて焼き始めた。
「見た目が悪いんじゃよこのキーサッキーは。ワシは決して見た目ほど不味くはないと思うんじゃがの。みんな食べたがらず、結局駆除出来ずに増えすぎて魚も獲れなくなって村も廃ってしまったがの」
(さっきたくさん泳いでたやつ?)
俺の記憶にある「それ」の数倍はあるキーサッキーを焼きながら村長さんが言った。
「レベッカ寮長、これが魔獣キーサッキーなんですよね?」
「そうよ。クネクネして気持ち悪いわよねー」
そう言いながらクネクネしだすレベッカ寮長。
(いやいや寮長の方が怖いよ!)
「あーん!?」
レベッカ寮長の形相が瞬時に魔獣に変わった。
(えっ!?また俺、口に出してた?)
「ゴホ、ゴホッ。寮長、なな、なんでキーサッキーって言うんですか?」
「アレク君今何か言ったかしら?」
「言ってません!」
「‥まあいいわ。それはね、鳴き声がキーキー言うのよね、この子たち。サッキーは頭の先が尖ってるでしょ。『キーキー鳴く先の尖った魔獣』って言う意味なのよ」
(やっぱり!こいつはデカい剣先イカだわ)
「レベッカ寮長、ナタリー寮長、村長さん。魔獣、ひょっとしたらなんとかできるかもしれません」
「「「えっ?」」」
「ちょっと待っててください」
そう言った俺は合宿所にアレを取りに戻った。そう、粉芋と一緒に、誰かのお土産にと、ついでに持ってきたマヨネーズだ。
剣先イカとマヨネーズといったら、作れるものは2つある。
1つは大人の居酒屋の定番メニュー。もう1つはミートチョッパーで作る俺の爺ちゃんの故郷の味だ。ともに美味しい最強のアレだよ。
次回 イカす村おこし
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない
鐘成
ファンタジー
世界中にランダムで出現するダンジョン
都心のど真ん中で発生したり空き家が変質してダンジョン化したりする。
今までにない鉱石や金属が存在していて、1番低いランクのダンジョンでさえ平均的なサラリーマンの給料以上
レベルを上げればより危険なダンジョンに挑める。
危険な高ランクダンジョンに挑めばそれ相応の見返りが約束されている。
そんな中両親がいない荒鐘真(あらかねしん)は自身初のレベルあげをする事を決意する。
妹の大学まで通えるお金、妹の夢の為に命懸けでダンジョンに挑むが……
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)
丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】
深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。
前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。
そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに……
異世界に転生しても働くのをやめられない!
剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。
■カクヨムでも連載中です■
本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。
中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。
いつもありがとうございます。
◆
書籍化に伴いタイトルが変更となりました。
剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~
↓
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る
受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
haruhi8128
ファンタジー
受験を間近に控えた高3の正月。
過労により死んでしまった。
ところがある神様の手伝いがてら異世界に転生することに!?
とある商人のもとに生まれ変わったライヤは受験生時代に培った勉強法と、粘り強さを武器に王国でも屈指の人物へと成長する。
前世からの夢であった教師となるという夢を叶えたライヤだったが、周りは貴族出身のエリートばかりで平民であるライヤは煙たがられる。
そんな中、学生時代に築いた唯一のつながり、王国第一王女アンに振り回される日々を送る。
貴族出身のエリートしかいないS級の教師に命じられ、その中に第3王女もいたのだが生徒には舐められるばかり。
平民で、特別な才能もないライヤに彼らの教師が務まるのか……!?
努力型主人公を書いて見たくて挑戦してみました!
前作の「戦力より戦略。」よりは文章も見やすく、内容も統一できているのかなと感じます。
是非今後の励みにしたいのでお気に入り登録や感想もお願いします!
話ごとのちょっとしたものでも構いませんので!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる