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第2章 幼年編
125 双子の小熊
しおりを挟む「アレク君」
「はい神父様」
領都ヴィンランド教会のコーエン神父様が言う。
「アレク君が来ることはディル神父からの手紙で聞いておってな」
「はい!?」
あーやっぱりと俺は思った。
だって今までもモンデール神父様も師匠(ディル神父様)もシスターナターシャも、俺が行く先々を道に迷わないように照らしていてくれているから。
「私も神父になる前は、王都騎士団員の端くれだったんじゃよ」
「コーエン神父様も王都騎士団だったんですね」
「ああ」
王国最強の名をほしいままにする王都騎士団は中原でも指折りの精鋭揃いだ。
「王都騎士団の副騎士団長だったディル神父はそれはそれは強かったんじゃよ」
「へー」
「王国各地の教会に訓練場を作って子どもたちを教えるようになったのもディル神父の考えからなんじゃよ」
「へー俺、それは知りませんでした。てか師匠はそんなことぜんぜん話しませんでしたよ。お前は筋が悪いと師匠からひたすら叩かれてましたもん」
「カッカッカッ。そうか、そうか。気にいった弟子は特に鬼指導をしておったディル神父らしいのぉ。それと、今日はありがとうの」
「いえ、俺も楽しかったです神父様」
「それからアレク君にはお願いがあっての。ディル神父から秋の教会のバザーには‥」
「コーエン神父様、もちろんです!」
神父様の言葉を遮って俺は即答した。
だって教会バザーといえばもちろん俺の出番だもん。
「カッカッカッ、アレク君はディル神父の考えなんぞはお見通しじゃな」
「もちろんです!弟子として師匠の考え以上に俺は頑張ってやります!」
「では秋には頼みますぞ」
「はい神父様」
「ハンスお兄ちゃんの格闘を見たい」
「俺もハンス先輩の格闘が見たい」
「アレクちゃんも闘えるんだよね」
(ん?アレクちゃん?)
「私もアレクちゃんが闘うのを見たい」
(アレクちゃん‥)
「じゃあアレク、俺たちも闘るか!」
「よし、昨日の続きだな」
最後はハンスと組み合った。子どもたちに見せる目的も忘れて、俺自身が楽しんでしまったのはちょっぴり反省だ。
やっぱりハンスとの格闘は楽しいな。
「アリシアちゃん、キャロルちゃん、アレクちゃんもまた来てねー」
(なぜか俺は子どもたちからアレクちゃんと呼ばれるようになった)
「「「ばいばーい」」」
訓練場を出て一旦トールの家の前を通る。
家が近いトール、ハンス、シナモンとはここでお別れだ。
すると、トールの家から双子の兄妹が出てきた。
おお、この子たちが弟ステファンと妹ステファニーだな。
俺も弟のヨハンとは6歳差だけど、ステファンとステファニーはまだ1歳ほどの幼児だ。
「「トールお兄ちゃーん」」
トテトテと歩く双子はまさに子熊の赤ちゃんだ。
かわゆすー!
これはハンスがかわいいと食い気味に言ったのもうなづける。
獣人の子は幼児のうちは人より獣が表に出るみたいだけど、この子たちも2足歩行をする小熊のぬいぐるみみたいだ。
「小さな天使だ‥」
思わず呟いた俺。
「「キャー」」
「ウチも抱っこしたいー」
アリシアとキャロルが速攻で2人を抱きしめ、シナモンも含めて3人で小熊を奪い合うみたいに揉みくちゃにしているよ‥。
「ハンス、お前が言う意味がわかるよ。めちゃくちゃかわいい子たちだなぁ」
「だろ!」
ハンスも目を輝かせて双子を見つめている。
「トール、本当にお前の兄弟(弟妹)か?」
「どういう意味だよー」
ワハハ
わはは
「今日は本当に楽しかったよ。ハンスもトールもシナモンもありがとう」
「本当ね!アレクの言う通りよ。ハンスもシナモンもトールもありがとうね」
「トールのおかげでおいしかったし、ハンスとシナモンのおかげで楽しかったわ」
いつしか皆んなが普通に名前を呼び捨てで呼び合える仲になっていた。
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