アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

124 武技訓練所

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「「「ごちそうさま。とってもおいしかったです」」」

「みんなまた来ておくれよ」

「おじさん、おばさんご馳走さま。俺、今度ゆっくり来ます」

「ああアレク君、待ってるよ」

「「「ごちそうさまー」」」





「いやーアレク、いろいろびっくりしたよー」

「本当よー」

「でもダーリンはダーリンだよ」

「シナモンはなぜ俺をダーリンって呼ぶ?」

「ダーリンだから」

腕を絡めてにぱーっと笑うシナモン。

「そっかー」

(かわいい‥)

キャロルがこっそりハンスに言う。

「ねーハンス君。アレク君って実はめっちゃチョロい?」

「あーキャロルさんもそう思ったんだ。俺もそう思う」

「やっぱり‥」

「シナモンさんだからいいけど、アレク君のアレク袋とかいろいろ分かったら、いつか色仕掛けとかしてくる子も出てくるんじゃないかなーって」

無意識に腕を絡ませるシナモンに、鼻の下が伸びきったアレクが歩く。
そんなアレクを心配する周りの友人だった。

一方。

(その手があったか!てか私胸も無いし、まだぜんぜん子ども体型だし‥シナモンのように出るとこ出てるのが羨ましいわ‥)

「ちょっとアリシア聞いてる?アリシア?」

「‥ハッ!何だっけ?」
 
(あーこの子もダメだわ‥)

ーーーーーーーーーーーーーーー

トール家の食堂でご馳走になったあと、訓練場へ向かった。
そこはハンス、シナモン、トール、今日は来れなかったがモーリスとセバスが小さいころから練習していた訓練場だ。

「ここだよ」

ハンスが案内してくれたのは、領都教会に併設された領都ヴィンランド教会学校訓練所だった。
重厚で立派な建屋は、俺のヴィンサンダー領の領都学校訓練場とは比べるまでもなかった。さらにはヴィンサンダー領冒険者ギルドの訓練場よりもしっかりとしていた。
ここは、領都内の子どもを対象とした剣術、格闘(体)術、魔術で身体を鍛錬する施設だという。
その運営はヴィヨルドの領費で賄われ、子どもたちは無償で通うことができる。その上、時おりはオヤツなども提供されるそうだ。無償運営の教会学校同様に教育にも真摯なヴィヨルド領ならではだ。
(俺もデニーホッパー教会学校や領都学校に寄付しようと思った)

「ここができるまでは領都でも子どもを狙った盗賊がよく現れたらしいんだ。とくに獣人の子どもを狙った盗賊とかな。でもこの訓練場のおかげで今はほとんど危険は無くなったんだよ」

「みんな鍛錬してるからそう簡単には悪い人に捕まらないんだよ」

シナモンも言った。

「私の町の教会にも小さいけど訓練場があったわ」

「私のとこも」

アリシアもキャロルもそう言った。

デニーホッパー村の教会学校で剣術指導を受けてたのは俺だけだったし、護身の術は誰も習わなかった。攻撃魔術も、俺もシャーリーも独学だったもんな。
こうして思えば、デニーホッパー村は平和だったんだよな。でもそんな村にも盗賊はやってきた‥。
領都学校の訓練所はここほど施設は充実してなかったよなあ。
うん、勉強になることがいっぱいあるよ。


「「「先生こんにちはー」」」

神父様を訓練中は先生と呼ぶのは変わらないようだ。
訓練場の中に入ると、年配の神父様と何人かの助手のような人たちが子どもたちを指導中だった。

「おおみんなお帰り。シナモン、クラスはどうじゃった?」

「うん、みんな1組だったよ」

シナモンが嬉しそうに報告した。

「そうかそうか。みんな1組か。よかったのぉ」

「モーリス様とセバスは?」

「もちろん一緒だよ」

(『モーリス様』か。忘れそうになるけど、アイツは領主の次男だもんな)

「みんな一緒に1組とはのぉ。本当によかったわい」

「うん。先生たちのおかげだよ」

ニコニコとトールが言った。

「いいや。お前たちが一生懸命にがんばったからじゃよ」

「先生、今日はクラスメイトになった仲間を案内してきたんだ」

ハンスが言う。

「「「こんにちはー」」」

「はい、こんにちは。ようこそヴィンランド教会学校の武技訓練場へ」

「先生、こいつはヴィンサンダー領から来たアレク。あと女の子2人がアリシアとキャロル。3人とも魔術もすごいよ」

「そうか、そうか。ちょうどいい。君たち先輩の姿は、小さな子どもたちの励みになるからの。挨拶がてら子どもたちみんなにも魔法を少し見せてやってくれるかい」

「はい、俺たちでよければ」

アリシアとキャロルもうなづいた。

「みんなー集まってくれ」

「「「はーい」」」

ヒューマンの子と獣人の子が半々くらい。100人くらいの子どもたちが集まった。

「みんなの先輩、ハンス、トール、シナモンの3人が領都学園の1組になったぞ」

「モーリス様とセバスチャンもな」

「すげえー」

「ああ、本当にすごいことじゃ。あとこの3人もわざわざみんなに会いに来てくれたんじゃよ。魔法使いのお姉さんにお兄さんじゃ」

「こんにちは、ヴィンサンダー領から来ましたアレクです」

アリシアもキャロルも自己紹介する。


「これからお姉さんたち2人が魔法を発現して悪い人たちをやっつけるから見ててね」

俺は司会をしながら魔法を子どもたちに見せる。

「「「はーい」」」

(じゃあさ、昨日の試験みたいに俺が土兵を発現するから2人は倒してみせて)

((わかったわ))

俺は訓練場の10mくらい先から土兵を発現させる。土兵は刀を振り上げた盗賊をイメージした。遠くから少しずつ刀を下ろしてくる、そう、以前に領都学校で発現してみせたやつだ。もちろん、硬くはないよ。

ズーン ズーン ズーン

10mくらい先から、刀を振り上げた盗賊が襲ってくる。

ゴーー!
ドカッ

ヒュッ!
ドカッ

これをアリシアのファイアボールとキャロルのエアカッターがモグラ叩きのように次々と土兵を倒していった。

うわー
すげえー
かっけー

子どもたちの歓声が上がった。

「みんなもがんばればこんな風になれるよ」

憧れてアリシアとキャロルを見る子どもたちの目がキラキラしていた。


「じゃあ魔法を発現できる子や興味のある子はこのお姉さんたちの前に集まって。格闘はシナモンお姉さんとトールお兄さん、ハンスお兄さんと俺の前は剣術で。それぞれ集まってくれるかい?」

「「「はーい」」」


こうして俺たちは、魔法と格闘・剣術に分かれて子どもたちを指導した。
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