アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

120 セロ

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「第2訓練場準決勝いくよー。アルス君とセロニアス君」

シナモンさんに勝った俺は、準決勝でヒューマンの男の子と戦うことになった。
これに勝てば決勝で再びハンスと闘(や)れる。
油断することなく、一戦一戦を全力で頑張らないとな。
一歩一歩をしっかり進めた先に結果がついてくるはずだから。

相手はセロニアス君。
長身痩躯。作務衣のような女神教会の男用装束を着た丸坊主のモンク僧だ。
体型同様に手にする棍もピタリとハマっている。

「セロニアス、セロだ。教会本部のモンク見習いだ。よろしく頼む」

「ああ、俺はアレク。ヴィンサンダー領から来た農民の子だ。よろしく」


◯  モンク僧
教会組織内や法国の警察、警備、軍事を担当する。いわゆる僧兵、武闘派の僧侶である。
女神教本山がある法国に本部がある。
女神教教会でも武闘派の僧侶を、モンク僧と呼んだ。


セロ君が手にするのは身の丈近くの長さのある棍(杖)。
リーチだけで言えば俺には圧倒的に不利だ。が、攻略法はもちろんある。
それはスピードだ。
棍という長い武器の性質上、刺突以外は2手3手と連続して繰り出すのにはやや難がある。
初手を防いで間合いに入ることがまずはキモとなるだろう。

刺突の構えをみせたり、棍を自由自在にぐるぐると回すセロ。
手に触れているのは棍の中央部のみ。
おそらく魔法塗料は棍の両先端部周辺にしかつけられていないのだろう。


「準決勝アレク君対セロニアス君、始め!」

ピーーー!

棍を天に掲げぐるぐると回しながら接近してくるセロ。
正眼に構え、これを迎撃にかかる俺。
一歩も引かず、じりじりとにじり寄る。
鋒は正中、セロの首筋。
ゆっくりと上段に構え直す。
セロもまた、棍を回すことを止め、やや斜め前に半身に構え、棍を持ち直す。
刺突の構えからにじり寄るセロ。
瞬きをせず、俺もまたじりじりとにじり寄る。
ある種のチキンレース。先に動いた方が負け。
かといって剣の間合いは棍の間合いには届かない。
それでも。
ここにあるのはチキンレースと同じ、刹那のスピード勝負だ。
俺自身のスピードプラス風の精霊魔法シルフィの加護。
俺とシルフィ、2人で1体のスピードの発現。

「キエェェーー」

気迫の籠ったかけ声と同時。セロの刺突が迫る。

「オォーーー」

応じる俺の魂魄からの叫び。
真っ直ぐに向かってくる棍の刺突を上から振り下ろす一筋の剣線。

パーーンッ

地に落ちると同時。セロの棍が半ばで折れた。

残心のまま、構えをゆっくりと解く俺。

「参った。アレク、お前は強いな」

セロがゆっくりと言葉を紡いだ。

「止め!アレク君の勝ち」

うおーーー

すげぇーー

セロに勝った。
いよいよ決勝だ。

棍使いのセロニアス(セロ)。
後に10傑となり、ダンジョンにも欠かせない仲間となる男子だ。





いよいよ次は決勝だ。
今度は武器でハンスと闘れると思ったのだが、、。

第1訓練場の準決勝戦では。
こちらも僅かな時間で勝敗が決したようだ。
決勝の相手はハンスに勝ったモーリス・ヴィヨルドだった。
これまで無傷、顔色も変わらなかったモーリスの顔色はピンク色だった。



【  ハンスside  】

アレクが勝った。あのモンク僧に真正面から立ち向かい、しかも棍をたたき折る。やっぱりアレクは強い。

ウルがよくアレクを語るとき、とても嬉しそうだった。当時俺は嬉しそうにアレクを語るウルが何故か嫌だったんだ。
が、今ならわかる。ウルが強いのはもちろんだが、アレクも間違いなく強い。そんな強い奴に認められて、そいつを語ることができる自分。友だちでいられる自分。
そんな自分が、誇らしくも好きなんだってことに気付いたんだ。
だから俺も今度はモーリス・ヴィヨルドに勝たなくちゃな。同世代の剣の天才、モーリス・ヴィヨルド。
今まで何度も闘っては負け続けた相手。
今回も負けたが、初めて一矢報いた。
これからの6年、目標はモーリスに勝つこと、そしてアレクに勝つことだ。

それにしても・・・アレクにモーリスのことを言うべきなんだろうか‥。
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