アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

117 剣術予選

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格闘(体術)は3位だった。
次はいよいよ剣術だ。
参加者も300人中最大の290人。
出場しないのは、座学のみ、聖魔法のみ、魔法術のみ等の「一芸に秀でた子」だ。
もちろんこの剣術にも「剣術のみに秀でた子」がいるであろう。
試験補助の先輩達から声がかかる。

「好きな武器を手にしてくれ。魔法塗料が付いてるから絶対に刀身に触ったりいたずらで周りの子に触れないでくれ。絶対に、絶対に触るなよー」

「絶対触るなー」

「触るなよー」

手にするのは長さ、重さもいろいろの刀、棍棒、レイピア等。すべて木製。木製の爪を装着する獣人の生徒もいる。
格闘術では獣人を含めてお互いが素手で組み合った。が、この剣術の部門では獣人の爪が「剣」として認められている。(もちろん噛みつきは認められていない)

俺は使い慣れた木刀を選んだ。刃に特殊塗料が塗られているそうだけど見てもわからないな。
ついつい癖で知らないものは、くんかくんか匂いを嗅ぎたくなるんだけど自制したよ。
この特殊魔法塗料は付着した対戦相手の服を透過、身体の箇所に応じて反応するそうだ。
頭部から首、肩、臀部までの胴体に付着すれば即座に全身がピンクに変色なる。手足に付着すれば2回で全身がピンクに変色するのだ。
つまりは本物の剣を想定して、頭部から胴体までの攻撃には1回で染色(1本)、手足は2回で染色(1本)して勝敗が決するのだ。
この魔法特殊塗料がおもしろいのは、1回めはピンク色、2回めは赤色、3回めは紫色に変わることだ。
連続での模擬戦や集団模擬戦でわかりやすく審査時間も短くできるというものだ。
どおりで木刀を持たされた時、「絶対に身体に触れるな」と言われるわけだ。
(くんかくんかしなくてよかった)

審査員の先生が拡声魔法でアナウンスする。

「ルールを説明するわね。今みんなの持っている刀やレイピアには特殊な魔法塗料が塗られています。身体に触れたらすぐに皮膚まで色が付きます。服も関係ないからね。これから模擬戦をやってもらうけど、対戦相手の頭、首、胴体に剣が触れたら1本勝ちよ。手足は2回触れたら勝ちね。1本取れば勝ちで1本もらえば負け。すべて色で判るわよ。わかりやすいでしょ。じゃあ一気にいくわよ。
受験者番号1から10の子は1番訓練場へ。11から20の子は2番訓練場に移動して」

1次予選は、10人の集団模擬戦のようだ。訓練場がテニスコート1面ほどの広さの土塀で囲われている。

「始めるわよ。色が赤くなったら退場ね。はい、始め」

ピーーー!

これはおもしろいなあ。訓練場は10人では案外広さもある。なので闘わず逃げ回ったり、あるいは共闘もあるのかもしれない。

そんな中、目についたのは、レイピアの男の子と獣人の女子だ。

シュシュッ

レイピアの子は、瞬時に他の子の胴体を連続突き。3人の子がその突きで顔色が一気に赤色や紫色になった。
獣人の女子は飛ぶように跳ねながら、木の爪で戦っている。この子も速い動きで何人も引っ掻いている。
猫科のかわいい女の子でもある。

パパパパーンッ

あっ、右手左手と連続して引っ掻いた。猫パンチみたい。引っ掻かれた子は一気に紫色になったよ!
でも掌だけじゃなくて顔まで色が変わるんだ。
ピンクの顔も嫌だけど、紫色の顔はさらに嫌だな。まるでゾンビみたいで恥ずかしいわ。
でもこれは勝敗がつくのがとても早い。
実力通りに進みそうだ。

ピーーー!

「はいやめ!」

1番2番どちらの訓練場からも2人が残った。
顔色の変わらない子も、顔がピンク色をした子もいる。
こんな感じで290人が一気に60人ほどに絞られた。
俺もまったく問題なく1次抜けしたよ。

「はい、1次抜けの子は全部で60人くらいになったね。じゃあこのまま2次試験にいくよー。1次合格の最初から30人、えーと君までね。あと君から最後の君までが30人。今度は30人で同じ模擬戦やってもらうよ」

1次試験と同じようにテニスコート1面ほどの訓練場に30人が入った。入ったというよりかこの人数では押し込まれた感じ。今度はかなり狭いな。
俺は2番訓練場だ。

「紫色になった子から退場ね。各訓練場とも5、6人に残るまで模擬戦は続くからね」

休む間も無く、いきなり2次試験が始まる。
俺はスッと角にいる男の子に向かって刀を構える。
スペースが決まっている以上、角地に入るのが定石だろうと考えたからだ。
男の子も俺に向かって刀を構える。

「始めー」

ピーーー!

開始の合図と共に、大剣を佩く長身の男の子が俺に向けて上段から刀を下ろす。対して俺は一気に間合いに入って連続で突く。

「えっ?うそ?やられた‥」

一気に、手が紫色になる男の子。もちろん顔も紫色に変わっているのだが、幸い自分では見ることができない。

男の子に代わって角地を陣取る俺。これで背後から攻撃を受けることはない。
正面を向き構える。
1番訓練場、2番訓練場ともに四隅に立って敵に立ち向かう子はたぶん俺と同じことを考えてる子だ。

「うおおおー」

すると、前方から3人の子が迫り来た。3人がかりだ。
共闘もあるだろうなとは思ったが、やっぱりあった。
俺は落ち着いて迫り来る子を1人2人と刀を飛ばし、そのまま3人を横薙ぎ。さらに真ん中の太っちょの子に連続刺突を加える。動線の邪魔になるのを避けたかったからだ。

「うわぁー」

太っちょの子の顔が一気に紫色になる。

「そこの君退場だよー」

「君と君も退場ー」

訓練場随所に配された試験官補助の先輩達が変色した子を即座に退場させている。

おー、獣人の子は毛まで色が変わってるよ。獣人の女子がピンク色になったのはけっこう可愛いいかも。
乱戦気味。さすがに隣の1番訓練場を見ている余裕はない。
あっという間に俺の2番訓練場の数も減ってきた。
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