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第2章 幼年編
116 ハンス
しおりを挟む第1試合、おれの相手は山猫獣人だ。
ニャンタおじさんやアンナ、シルカさんと同じ山猫獣人だ。
しなやかな山猫獣人は身体も柔らかくスピードも速い。
が、俺も狼獣人のウルを相手に(1回も勝てなかったけど)毎日訓練場で努力をしてきた。なので、どう戦えばいいのかは身体が覚えている。
試合はレスリングと同じ、身体全体を対象としたフリースタイルのポイント制だ。
刀の使用と同じく獣人は爪や噛みつきの攻撃は禁止である。
「3と4、前に来て」
「「お願いします」」
軽く手を合わせ笛の合図を待つ。
「ヒューマンが獣人に勝てるかよ」
上から目線で山猫獣人の子が俺を挑発する。
(おおっ、この子油断してくれてるよ)
「始め!」
ピーーー!
お互い睨み合いから低い姿勢となる。油断からか、様子を窺う彼に対して俺はより低い姿勢から一気に接近、タックルを狙う。そんな一瞬の攻防。俺のスピードが勝った。
高速タックルから相手の子の首を回し取り首投げから一気に袈裟固めを決める。
「やめ!3の勝ち!」
「ヒューマンなんかに、うそだろ‥」
山猫獣人の子が肩を落とす。
(油断してくれてよかったー)
ホッとする俺。
「次3番と5番」
わずかばかりの休憩のあと不戦勝の5と対戦となった。
次の相手は筋肉質ながらスラリとした狼獣人の男の子だ。
「アレク、お前と戦うのを楽しみにしてたよ」
「えっ?俺、初対面だよ?」
「俺はハンス。ウルの親友なんだ」
ニッコリとハンスが笑う。
「あーそうなんだ!」
「ウルのライバルだった俺にかなうかな?」
挑発気味にハンスが言う。
「闘ってみなきゃわかんねーよ」
「たしかにそうだ」
お互い笑顔になる。
なるほど、ウルに似た精悍な顔つき。それでいて人当たりの良い優しい顔つきのハンス。
(くそー、ウルと同じイケメン系かよ!)
ウルと同じ狼獣人の親友でライバル。
おそらくは圧倒的なスピードに瞬発力、パワーを有しているんだろう。
ウルとよく訓練場で闘っていたのを思い出す。
スピードではなんとか負けなかったんだけど、パワーと技術では最後まで勝てなかったもんな、俺。
でも毎日の努力で俺も少しは強くなったと思う。
よし、がんばるぞ!
「では、3と5の準決勝を始める。始め!」
ピーーー!
ダッ!
ダッ!
合図と同時、俺もハンスも一気にタックルを取るべくお互いに飛び込んだ。スピードはほぼ互角からほんの僅か俺が優勢。力はやはりハンスの方が強い。
タックルから片足を取るがハンスの低い重心は崩れることはない。
しかも優勢になりそうな俺が首から回り込もうとするのに対し、防御にくるかと思いきやハンスはハンスで攻めることを止めないのだ。
お互い細かな手足の動き。
巡り巡っての激しい攻防となった。
互角に闘い、互いに譲らず、時間いっぱい。
「そこまで!やめ!」
ピーーー!
(あーこれは負けたな)
審査員の先生たちが集まり協議となった。
「勝者5!」
最後は僅差の判定差で俺の負けとなった。
うん、仕方ない。攻めきれなかった俺は自分でも負けたと思うから。
ハーハー
ハーハー
全力を出した感がある。ハンスもそうみたいだ。
俺はこれが試合でなけれはまだまだやり続けたいと思った。それくらい楽しかった。
「ハーハー。アレク、もっと闘りたいな」
「ハーハー。ハンス、今俺も同じことを言おうとしたよ」
「ははは。ウルが言ってたよ。『必ずアレクはお前と決勝であたる』って」
「そうか。ウルにそんなふうに言ってもらえるなんて嬉しいな」
「ハンス、お前もウルと同じだよ。めちゃくちゃ強いよ」
「あのなアレク。本当言うとな、ライバルじゃないんだ。俺もウルにはほとんど勝てなかったんだよ」
「お前はほとんどだろ?俺なんか1度も勝てなかったよ!」
ワハハ
ワハハ
お互いが肩を抱き合い、健闘を讃えあった。
ウルの親友ハンス。コイツとは友だちになれる、そんな気がした。
その後の決勝。
ハンスと、熊獣人の子があたったが、あっという間にハンスが決めた。
ハンスは強かった。
「ハンス、おめでとう。クラスも一緒だからこれからいつでも闘れるな」
「ああ」
固く握手を交わした。
魔法1位
格闘(体術)は審査により3位となった。
今日のクラス分け試験はここまでだ。
明日はいよいよ剣術だ。
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