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第2章 幼年編
114 ワニガメ
しおりを挟む「おい、さっきの魔法使いだ」
「アイツ格闘も出るのか」
俺、なんか注目されてます。
次は格闘術(体術)だ。
参加者は300人中100人ほどいる。純粋な剣士と魔法使い以外の生徒はこの格闘にも多くエントリーしている。
「おーい、アレク」
俺の横にハイルが来た。
「アレク、さっきはすごかったぞ。でも身体は大丈夫か?」
「ああ、問題ないよ」
「そうか、よかったよ。2人で決勝で闘(や)らなきゃな!」
「ああ、頑張ろうな」
「では上位の5人から10人くらいまでで足切りするよ。ルールは簡単だ。試験官の先生や先輩が相手をするので、時間内にその寝技を防ぐことができた生徒を1次合格とするからね」
試験官の先生や5、6年生の先輩が総勢20数人人ほど並んだ。
なぜかそこにはレベッカ寮長もいた。裸エプロンではなかったけど。
「レベッカさんかー、あそこに当たった子は運が悪いよな‥」
補助の先輩達がひそひそ話している。
(えっ?そうなの?)
まずは1次試験を抜けなきゃな。
なんでレベッカ寮長がいるんだろう。
でもあの筋肉にあの握力だもんな。実は格闘もすごいんだろうな。闘(や)りたいような、闘りたくないような‥。
「はい。この列の子はあそこに並んで‥」
1人の試験官に生徒が4、5人。
俺とハイルはなぜかレベッカ寮長が相手となった‥。
試験内容は試験官を下に、自分が上のマウントポジションから下の相手の攻撃を防ぐというものだ。
格闘術(体術)の訓練はウルとしっかりやってきた。
今回の試験の場合は、下の相手に体重移動をさせず、且つ両腕の動きを封じることがセオリーだ。
セオリー通りにやれば問題ないはず。
「1人め、始め!」
ピーーー!
さっそく始まった格闘(体術)の予選。試験官を下にした、いわゆるマウントポジションだから、基本的には上の生徒が有利には違いないはずなんだけど。
なんたってレベッカ寮長だよ。
だからぜったいに普通では済まないとは思っていたけど‥
「どっせーい!」
下にいるレベッカさんのかけ声。
迫り上がる腹筋。
「うわぁー」
一瞬にしてバウンドして宙に飛び上がる子。
何なのいったい‥。
「どっせーい!」
「うわぁー」
レベッカさんは両手を頭の後ろで組んで、腹筋だけで戦ってるよ。
そんなレベッカさんに、最初の子も2人めの子もなすすべもなく吹き飛ばされた‥。
さあいよいよ俺たちの番だ。
「3人め、用意して」
「ハイルがんばれよ!」
「お、おう‥」
顔色も青くなったハイルだ。
(だめだ。ハイルの奴、雰囲気に飲まれてる)
しかもハイルはしきりに頭をさすりだした。
(UFOキャッチャーのトラウマも思い出したみたいだよ‥)
レベッカさんの腹の上に乗って合図を待つハイル。
はーはーはーはー
はーはーはーはー
ハイルだけじゃない。
気のせいかレベッカさんの呼吸も荒い‥。
「3人め、始め!」
ピーーー!
「どっせーい!」
シュタッ!
おっ!ハイルが目を覚ましたよ。
即座にレベッカさんの腹筋を両手両足頭の5点でしっかりと封じたハイル。
(おー!がんばれ!がんばれハイル!)
「どっせーい!」
「どっせーい!」
レベッカさんの腹筋と一緒にバウンドをするハイル。
まるで暴れ牛に乗る子どもカウボーイ?ロデオ?
前へ後ろへ上へ下へ、なんとか制御しているハイルだけど‥。
ここでレベッカさんが頭の後ろで組んだ手を外した。
ついにレベッカさんのあの丸太のような両手が攻めてくるのかと思いきや‥違った。両手は最後まで使わないみたい。
代わりにレベッカさんの頭が出てきた。
にゅーっと持ち上がりハイルの頭に絡みついたのだ。
(うわーこれ、あれだよ、ワニガメかスッポンだよ‥)
レベッカさんの蒼剃りした顎と胸板の間に挟まれたハイルの頭。
「はぁーーんっ」
レベッカさんのなんとも言えない嬌声も聞こえる。
ミシミシミシミシーー
ワニガメにハイルの頭がすげぇ締められてるよ!
でもこのまま耐え忍べば1次試験は合格だ。
(がんばれ!がんばれ!がんばれハイル!)
ピーーー!
「やめ!それまで!」
やったよ、ハイル!1次試験合格だよー!
・・・
・・・・・・
「先生ー、この子落ちてまーす」
既に白目を剥いて落ちているハイルだった。
(ハイルがんばったな。お前の骨は俺がひろってやる)
「4人め、用意して」
「まっ、ハイル君に続いてアレク君ね!お姉さんとっても嬉しいわ!」
ニンマリ下から俺を見上げるレベッカ寮長だ。
大丈夫か俺?
アレク・プランタン
なんか違う百合の世界の話になってないか?
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