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第2章 幼年編
113 ざまぁカーマン
しおりを挟む話は少し戻る。
気を失ったアレクが医務室へ運ばれている間に。
魔法術模擬戦は続いた。
「魔法術模擬戦の第2戦。次は新1年生魔法2位のアリシアさんと3年生は1組のジェイ‥」
「先生ー、気分悪いのが治りましたから、俺が出ます!新1年生に先輩の正しい強さを見てもらわないといけませんから!」
そこにアレクとの模擬戦を棄権したカーマンが颯爽と現れた。
「‥そう。じゃあ3年1組カーマン君と新1年生2位のアリシアさんの魔法模擬戦を始めます」
審査員の先生に、にこやかに話した直後。
カーマンは模擬戦対戦相手のアリシアだけに聞こえる声で呟いた。
「楽しませてもらうからな。簡単に倒れんなよ。お前には偉大なる俺様のファイアボールを恵んでやるよ。平民はせいぜい俺様を楽しませてくれよな」
アリシアは横を向いて吐き捨てた。
「キモっ!」
「何ー?俺様にキモいだとー!」
憤怒に満ちた顔のカーマンだった。
【 アリシアside 】
1位になったアレク君。本当にすごい子だわ。2位の私や3位のキャロルさんより魔力量もその発現力も断然上。すごいのにぜんぜん偉ぶらない。
模擬戦の相手、6年のエルフのマリー先輩は私も入学前から知ってる超有名な先輩。歴代の領都学園生の中でも有数の魔法発現力があるという評判の先輩だ。なのにアレク君はそんなマリー先輩と互角に渡り合ってた。本当に凄かったわ。
私もあんな風に強くなりたいな。
私の模擬戦はアレク君と戦うのを回避した3年生だった。
何か背中がブルッとする嫌な感じの人。
だって私にだけ聞こえるような小声で「楽しませてもらうからな。簡単に倒れんなよ」って何なの!いったい。ストレス発散なわけ?本当に嫌な感じ。
しかも「俺様のファイアボールを食らっとけ?」って何なのあれ?意味不明だわ。しかも発現したのが子どもの頭くらいのサイズのファイアボールだったし。
小っさ!
3年なんだし、Level3ならオリジナル魔法くらい発現しなさいよ。
結局、私は彼のファイアボールをファイアウォールで防御し、彼の発現したファイアボールより大きい直径1mのファイアボールを発現させ、同時に火龍(ファイアドラゴン)を発現して見せたわ。
ちゃんと力量を推し量れる人なら私の火龍が魔力不足のフェイクだということくらいすぐに判るはずなんだけど。
結局尻餅をついて逃げた3年生のお尻を小さなファイアボールで燃やして終わり。カッコ悪過ぎよ!
でも、魔力不足になった私もカッコ悪いけど。
アレク君とはこれから同じクラスになるからいろいろ聞かなきゃ!
それから‥アレク君はハイポーション、そんなに飲みたかったのかな?めちゃくちゃ食いつきよかったんだもん。私のを半分くらいあげればよかったかな?
キャー私、間接キスかもー!
【 セーラ・ヴィクトルside 】
密かに国を離れ、名前もヴィクトリアからヴィクトルに替えた。ヴィヨルド領に来て6年が経った。友だちもないままに教会学校を卒業してこれからは領都学園に入学する私。
ヴィヨルドの教会学校では、聖魔法を発現できることを隠しなさいって言われてたけど今度の学園では力を隠さなくていいみたい。それだけでも少し気が楽になったわ。少しずつでも成長してるのかな。
でもさっきはびっくりしたわ。
エルフの先輩の魔法がすごいのは分かるけど、アレクさん、あの人の魔力量は本当に凄かった。
私を気遣って何度も謝ってくれる優しさにも感謝している。
誰にも言ってないけど、私はエルフと同じで触った相手の魔力量がわかるの。
アレクさんの魔力量は私が出会った人の中でも飛び抜けて多かった。まるでエルフみたいに。
家族と離れて友だちも居なくて心細かった生活。
明日からは楽しくなるかな。
アレクさんが友だちになってくれるかな。明日また話をしたいな。
▼
3位のアリシアさんの模擬戦も先輩たちも驚くくらい発現力が高い風魔法だったらしい。
「魔法では以下の3名が1組入とする」
1位 アレク(土、風)
2位 キャロル(火)
3位 アリシア(風)
訓練場脇の掲示板に羊皮紙が貼られた。
通常は魔法1位のみが1組入の特典となるらしいが、今年は俺を含めて3人が1組入が決まった。
そのくらい3人の魔法発現力が抜き出ていたらしい。
次は格闘(体術)だ。
「格闘術の審査に出る生徒は前に」
「「「「はい!」」」」
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