アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

110 代打マリー

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(えっ?同じヴィンサンダー出身?カーマン?
まさか‥あのカーマン??)

あらら、ついにテンプレがものの見事にはまったよ!しかもあのカーマンだよ!

観客席からカーマンが降りてくる。背は高く なっていたが、顔は記憶のまんま、あのカーマンだ。
ヴィンサンダー領領都学校で下級生をイジメて俺の背中にファイアボールを放ったあのカーマンだ。

でもカーマンも俺と同じく武技を高めるためにヴィヨルドへ留学をしたんだろうな。
3年1組っていうから、学年300人中でも上位30人。カーマンも努力したんだろうな。ちょっぴり見直したよ。

訓練場の広い敷地に俺、カーマンと審査員の先生。先生がマイク越しに声を出す。

「はい、じゃあ1年魔法1位のアレク君対3年1組のカーマン君の模擬戦を始めます。ルールは簡単です。1年のアレク君は全力で挑んでいいからね。上級生のカーマン君は上位1組の先輩なんだから、意図的に下級生を傷つけたり、間違っても骨折や四肢欠損などやり過ぎないこと。
新1年生は心配しなくてもいいからね。聖魔法師の先生も控えてるから怪我するようなことがあっても心配しなくて大丈夫よ」

(そうなんだ。俺は全力OKなんだね。よし!)

「傷つける?」

「骨折?」

「四肢欠損?」

「まじか?」

ザワザワ ざわざわ

これには多くの新1年生がビビっていた。

そんな新1年生の沈んだ雰囲気の中。
たぶん俺、笑ってたんだと思う。きっと。


「はい、じゃあ模擬戦始めます。3年カーマン君対新1年アレク君」

「それじゃあ始め・」

「先生!」

ここで急にカーマンが発言した。

「俺、体調が悪いので残念ですが棄権します!」

「へっ?」

カーマンは俺の顔すら見ずにブルブルと震えていた。
えっ‥なんで?

ちなみにこの模擬戦以降、上級生の間で俺は「ヴィンサンダーの狂犬」と言われるようになった‥。

俺と対戦するはずだったカーマンのまさかの直前棄権。
訓練場では俺の顔を一切見なかったカーマン。ところが棄権して訓練場を出た瞬間、ニヤリと笑いやがった。
(なんだよ、やっぱりコイツは嫌な奴だな)
でも俺誰とやるの?
すると、ふわっと1人の女性が訓練場に舞い降りた。

「先生!代わりに私が模擬戦に出場してもよろしいでしょうか?」

「いいけど‥どうしてあなたが?」

怪訝そうな顔で審査をする女性教師が尋ねる。

「だって先生、このアレク君の魔法、たぶん私と同じか私より強いですよ」

「えっ?本当に?」

「はい。嘘偽りなく」

ザワザワ ざわざわ

これには教師陣も騒めいた。精霊魔法を発現できる彼女には魔法担当の教師でさえ敵わなかったからである。
ゆえに彼女の魔法に関しての発言は、魔法担当の教師でさえ、頷かざるをえなかった。

ふわっと訓練場に降り立った女性は、昨夜会ったエルフのマリー先輩だった。

(おい、1席のマリー先輩だぞ!)

(1年の模擬戦なんかになぜ?)

ザワザワ ざわざわ

「マリー先輩!」

マリー先輩に駆け寄る俺。
たぶん俺、尻尾をちぎれるくらいに振る仔犬と同じだったんだろう。
綺麗だよなー、なんかいい匂いもするし。
あーダメだ。今が審査中であることを忘れていた‥。

「アレク君、さすがねー。魔法は1位になったわね」

「あはは‥」

「でね、せっかくの機会だから私と模擬戦を闘(や)りましょうよ」

「はい!ぜひぜひ!」

これはワクワクしてきたぞー!
俺、戦闘狂じゃないけど、やっぱり強い人とは闘ってみたいんだよね。


「えーっと、では6年マリー・エランドルさん対新1年生アレク君の魔法術模擬戦を開始します」

審査担当の女性の先生がアナウンスする。

他の新1年生は訓練場から階上の観客席に移った。訓練場はマリー先輩と俺、審査担当の女性教師だけだ。
(聖魔法の女の子は1人だけ隅にいたけど)

「じゃあさっそく闘(や)りましょ!」

「はい!」

ヴィヨルド領領都学園第1席マリー先輩との模擬戦が始まった。
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