アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

109 カーマン再び

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ざわざわ がやがや

訓練場の観客席にはいつのまにか多くの生徒が座っていた。
雰囲気は、まさにドーム球場とその観客だ。
上級生はたぶん授業見学じゃないかな。

魔法審査が続く。

「上位10名はこちらへ」

白衣を着た若い女性の先生が言う。

「次から的が遠くなるるよ。次の点数で順位をつけていくからね」

「えーとアレク君、君は最後にやってね」

なぜか俺は最後にやることになった。
今度は40メル(m)までに距離が延びた。
順番に的を撃ち抜いていく生徒。
上位10人とあってどの子も20メル(m)から30メル(m)くらいの的を打ち抜いている。
ただやはり1回めの疲労もあり、30メル(m)くらいからは魔力が欠乏したのか皆んなが失速していった。
そんな中、2人の女の子が抜けてたかな。
銀髪の子は風魔法の連続発現で20メルから40メルまでの的を撃ち抜いていた。エアカッター(風刃)だね。ただ、たくさん発現し過ぎていたから最後は疲れていたみたいだけど。
俺の前、真っ赤な髪の子が1番かな。髪と同じような真っ赤な火魔法を発現するこの子は、Level3のオリジナル火魔法を駆使していた。炎龍?まるでドラゴンが飛ぶみたいな火魔法の発現だ。20メルから30メルまでの的を一撃で粉砕していた。その後、炎龍は35メル、37メルと連続で的を焼いたけど40メルで的は焼けず消滅。魔力が尽きてしまったみたいだ。
うん、この子シャーリー並にやるなー。

「最後はアレク君。やろうか」

「はい」

「先生、俺風と土のダブルなんですけど、土の発現の場合は、的を付けた木を倒してもいいんですよね?」

「もちろんいいわよ。柱ごと倒してもらってもOKだよ」

「わかりました。ではいきます!」

俺の足下にはノームがニコニコとワクワクした顔でこっちを見ている。

あーでもダメだわ、これは。

(みんなが驚くからノームはぜったいに手を出しちゃダメだよ!)

こっそりノームにお願いした。
やれやれと肩をすくめて残念そうにノームが引っ込んだ。

よーし。
俺は地面に手をついて敢えて詠唱した。

「ドトン!土竜叩きの術!」

はい‥すいません。
調子に乗っただけの発現でした。

ズズズーーー
ドーン ドーン ドーン

「おおーすげぇー」

「さっきの奴だ!」

観客席からざわめきが起こる。

2M弱の高さの土塀が真っ直ぐに的の下から隆起する。
柱の隆起に合わせて、的を付けた柱が順番に倒れていく。
ただ、最後の2、3mがズレた。あーやっぱり距離があるとまだ正確に発現できないんだよな。なんか真っ直ぐいかずカーブしてる感じ。
広い範囲で40m付近を全部土柱を立ててしまえばいいんだろうけど、見た目も悪いよな。
そこで俺は、最後の37mから40mの的は石礫を発現させて撃ち抜いた。

ガッ!
ガッ!
ガッ!
ガッ!

一応、コンプリートだ(のはず?)

「マ、マジか‥」

先生に付き添う年長の記録係の生徒が呟いた。

「よし。アレク君は魔法で首位だ」

(よかったー。ここでノームに頼んでたらパニックになったわ‥)

「よしアレク君と2位のアリシアさん、3位のキャロルさんは先輩の生徒と模擬戦をしてもらうから、ちょっと待っててね」

模擬戦の準備があるのか、白衣の先生はどこかへ行ってしまった。
するとさっきまで記録をとっていた記録係のメガネの先輩が俺に話しかけてきた。

「アレク君だったな。さっきは驚いたぞ。やるなー君」

「あはは‥ありがとうございます」

と。
俺たちと同じ魔法組の生徒側に1人だけ離れて立っている女の子が目に入った。どう見ても格闘組には見えないよな。
思わず、記録係の先輩に聞いてみた。

「先輩、あそこに立ってる子は何なんですか?」

その子はシスターと同じ教会の装束で1人だけ少し離れた場所に立っていた。

「ああ、あの子は聖魔法の子だよ。ヒールや癒しが使える子だよ」

「えー!そうなんですか。聖魔法か、すげぇなぁー」

「だよな。いても4、5年に1人。聖魔法は発現できるだけで希少な魔法だよ」

(そうだよな。モンデール神父様もすごいし。うーん。聖魔法、いつかは俺も覚えたいな)





白衣の先生が戻ってきた。

「はい、じゃあ最後に上位の3人に上級生との模擬戦をやってもらいます。アレク君、アリシアさん、キャロルさんの3人はこっちにきて」

「はい」

「「はーい‥」」

「あら、女の子2人は魔力欠乏だね。薬を飲んで魔力戻しておこうか」

(えっ!?これってまさかのハイポーション!?俺が採ってきた薬草を何10倍にも煮詰めて作るやつだよ!現物、初めて見るなー)

体力を回復するポーションは栄養ドリンク的に普通にあった。なので村のサンデー商会でも普通に売っていたし、疲れて体調が思わしくないときは大人たちが飲んだりしていた。だけど体力プラス魔力を回復させるハイポーションは村のサンデー商会にも売ってなかったのだ。だって村にハイポーションを使って潜るようなダンジョンは無かったし、もちろん魔力欠乏になる人なんて誰もいないし。しかもこのハイポーション、たしか1本50,000G(50,000円)はするはず。めちゃくちゃ高いやつだよ。
そんな高価なハイポーションだから飲んだらすぐに体力も魔力も回復するんだって!

銀髪の女の子(キャロルさん)と赤髪の女の子(アリシアさん)は記録係の先輩から渡された青い液体・ハイポーションを飲んでいる。
真っ青な絵の具みたいな色の液体だ。
興味津々の俺は、思わず女の子たちに聞いてみた。

「ねーどんな味?」

「うーん、あんまり味はないかな」

銀髪の女の子キャロルさんが言う。

「そうね、味はないわね」

赤髪の女の子アリシアさんも言った。

「へー。で、どう?どう?効いてきた?」

これには2人がほぼ同時に応えた。

「「効くわー!」」

見てる内に薄ら身体が光る‥なんてことはなかったけど、飲んだら直ぐに効くみたいだ。やっぱりすげぇな、ハイポーション!


「じゃあ悪いけど、男の子、えーとアレク君から先に模擬戦やってくれるかな?アレクは魔力大丈夫?」

「はい、ぜんぜん大丈夫です!」

「「アレク君、頑張ってね!!」」

「ありがとう!」

アリシアさんとキャロルさんの女子2人も応援してくれた。


(さあいよいよ入学試験の模擬戦!テンプレだよ、テンプレ!
出てくる先輩はいじわるなヤツだよな。貴族かなんかの出来の悪い息子なんだよね。で、余裕たっぷりのソイツから暴言や意地悪をされてから模擬戦へ突入。結局そいつを俺がギッタンギタンにするんだよね、たしかそんなストーリーになるはずだよ。ワクワク、ワクワク)


訓練場全体に聴こえるように拡声魔法のアナウンスが入る。

「はい、じゃあ3年生と新1年生上位3人の魔法術模擬戦をやってもらいます。3年生は1組だから新1年生は先輩の胸を借りる感じでね。その実力を今後の参考にしてくださいね。えーと最初は新1年生魔法1位のアレク君と誰にやってもらおうかな‥‥ああー同じヴィンサンダー出身のカーマン君。うん、カーマン君にやってもらおう」

「えっ!?カーマンってあのカーマン!?」
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