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第2章 幼年編
108 クラス分け試験
しおりを挟むヴィヨルド領領都学園は各学年の定員は300人。男女凡そ1800人の生徒が学んでいる。クラス数は30人×10組。成績順の席次イコールのクラス分けとなる。
最終学年の上位2クラスはその後の進路も大きく違うという。
上位2クラスからは最終学歴になる王都学園への進学、王都騎士団・領内騎士団への入団と卒業後の進路希望も通りやすくなるからだ。
席次は入学時の試験、年度末試験、秋期に1度の武闘祭によって決まる。よって同じクラスのまま1年を過ごすことなく、半年毎に上下する可能性もあるわけだ。
秋の武闘祭。
ここでは学年を越え全学生から上位10傑が決まる。そしてその10傑から成る最強選抜生徒からダンジョン攻略も行われる。
もちろん、授業後や休日に個人としてダンジョンに潜るのは自由だ。(但し入学時にダンジョン探索に際しての膨大且つ詳細な契約書を生徒本人及びその父兄と交わす。学生であるため、規約に違約した場合の違約金たるや‥天文学的数字の大金だそうだ)
この選抜チームのダンジョン攻略だけは、授業単位として認可されている。つまりは授業に出席せずダンジョン攻略ができてしまうという俺にとっては夢のような制度なのだ。
俺は6年生までに上位10傑入を果たしたい。
「みんながんばってね!」
「「「はい!」」」
ばちこーんとウィンクをされて男子寮を出た俺たち。
新1年生はハイルと俺を含めて20人だ。
クラス分け試験当日の朝。
学園前の広場には300人の新入生が集まっていた。
俺は推薦入学なので、通常の入学試験がないだけでもありがたい。
モンデール神父様にもヴィンサンダー領都学校にも恥をかけないようにがんばらないとな。
▼
午前中の座学試験は問題なく解けた。
俺は中原の歴史からヴィヨルド領の歴史まで、シスターナターシャの厳しい指導の下、座学もしっかりとやっていたのだ。
だから座学試験はたぶん大丈夫だろう?うん大丈夫だ。大丈夫であってほしい‥。
午後の実技試験は訓練所に移動した。
訓練場は観客席には屋根があり、ドーム球場くらい広かった。
300人の生徒が各実技試験を通し、その合計得点で順位をつけられていく。
審査は剣術、魔法術、格闘術(体術)とそれぞれのタイプに分かれての審査だ。複数を使える者はそれぞれに参加できる。
学校では「一芸」よりも「多芸」且つ「何より強い」が推奨されている。
もちろん「一芸」に秀でた者も座学、剣、魔法、格闘の各上位3位までに入ると、上位2クラス入が約束されている。
いずれにせよ各タイプのポイント合算査定でクラスが決まる。
もちろん俺は全タイプの審査に出る。
まずは魔法術戦だ。
「魔法の審査に出る者は集まれー!」
担当の試験官が言う。
「「「はい!!」」」
100人ほどの生徒が集まった。過半数は女の子だ。魔法を発現する生徒は新入生300人中100人。少なく感じるのは武闘派優位たる学園だからなんだろう。
「アレク、アンタより魔力のある子はいないわ」
そう言ったきり俺の肩に乗っていたシルフィは頭に移って爆睡をし始めた‥。
(シルフィ、最近よく寝てるよね)
みんなが集まったところで試験官の先生が言った。
「笛の合図と同時に前方の的を撃ち抜いてもらう。的は5m先の1番から1mごと、20m先の20番まである。時間内にどの属性の魔法を何発撃っても良い。的を外しても的を付けた木が倒ればヨシとする。尚、途中撃ち漏らしがあった場合は1番近い的を最終得点とする。制限時間に倒した的の最長点を得点とする。上位3人は上級生との模擬戦に移る」
「では並んてくれ」
「「「はい!!」」」
10人が10組まで並ぶ。俺は最後の10組となった。
「では1組めから魔法術試験を開始する。始め!」
ピーー!
試験官の笛が鳴った。
横に並んだ10人の生徒が5m先の的に向けて、魔法を発現する。
シュッ シュッ
水魔法を発現する生徒は指先から水弾を。
ゴーー
火魔法を発現する生徒はファイアボールを。
ヒュン ヒュン
風魔法を発現する生徒はエアカッター(風刃)を。
ガッ ガッ
土魔法(金魔法)を発現する生徒は石礫を。
Level3を発現する生徒はオリジナルの攻撃魔法を発現させている。
ピーー!
「やめ!」
制限時間は凡そ1分。
5m先の的とその1m、2m先までをなんとか撃ち放った生徒が大半の中、15m(番)の的までを撃った生徒が1組めの1位となった。
「次、2組め。始め!」
2組めには最長の20m(番)までを撃ち抜いた生徒が2名いた。
3組め以降は各組に1名から2名の生徒が20m(番)までを撃ち抜いた。
「最後10組め。始め!」
いよいよ俺の番だ。張り切っていこう!
「アレク、こんなのはアンタ1人で充分よね。アタシ寝てるわ」
(この人寝てばっかりかも‥)
そんなわけで、俺1人で風魔法を発現、的を撃ち抜くことにする。
的は5m先から。その先は一直線に20番までの的が立てられている。的のサイズは小皿程度。
よし、いくぞ!
体内の魔力を右手掌に集め、少しずつ親指と人差し指の間に尖った金属をイメージしながら均等に圧を加える。
そしてイメージしたものを親指と人差し指で掴んでいく。
よーし。硬くなった。
イメージどおりだ。
エアカッター(風刃)じゃないよ。
何のイメージかって?もちろん苦無(クナイ)だよ。
ゆっくり狙って的の1番から20番までを一直線に・・・解き放つ!
シュッ!
バババババババーン!
よーし、コンプリートだぜー。
ざわざわ。
「今の見たか?」
「エアカッターじゃないよな」
「何にせよすげぇな。ちょっと次元が違うぞ!」
訓練場の入口から中の様子をみていた学園長が隣の副学園長に呟いた。
「ほーあの子がモンデール先生が推薦してきた子ですな。魔法、剣、格闘のすべてにエントリーですか」
(井の中の蛙大海を知らずかどうか楽しみだな)
副学長も応える。
「楽しみですな学園長。ん、イノナカノ‥なんですか、それは?」
「いやーすいません、昔のことわざですよ。ハハハ」
魔法審査の上位10位までに入った俺は、さらに順位をつける試験に移った。
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