アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
106 / 722
第2章 幼年編

107 マリー先輩

しおりを挟む

同室となったハイル。関西弁っぽい言葉遣いをする小柄な男の子だ(ヴィヨルド領南部の方言だという)
突貫のスキルを持つ彼は冒険者の斥候になるのが夢だそうだ。
足の速さには自信があるという。
領都学園へもその足の速さから地元の教会学校からの推薦で入学したという。
精霊魔法を発現する前の俺が、突貫にブーストの併用で速く走れたように、今のハイドはまさにそんな感じの速さなんだろう。

「アレクは何のスキルがあるんや?」

「俺か。俺は風魔法と土魔法だ」

「ダブルか!すげぇな」

違う系統の魔法を発現できるダブル、さらに希少なトリプルは学園でも注目の的だった。
(全属性を発現できる者は中原中にほぼいないと言われている)

「どこまで発現できるんや?」

「どっちもLevel3かな」

「すげぇなー。さすが他所の領から推薦で来るわけや。わしは突貫以外使えへんから、羨ましいわ」

「まぁ、わし足の速さだけは自信あるけどな」

トントンと足を叩いたハイドである。


ここヴィヨルドで俺は風魔法と土魔法が発現できるダブルにしてある。
その他はもちろんだが、精霊魔法を発現できることも言うつもりはない(もし肩にいるシルフィが見える人がいたら別だけどね)
ただ剣と格闘術(体術)に関しては隠す気はない。

「アレクはええ剣持ってるけどお金持ちなんか?」

「いや、俺は農民の子だぞ」

「じゃーなんでそないにええ剣持ってるんや?」

「これか。これは自分で打ったからな」

「打った?鍛治屋でか?」

「そうだよ」

「へー。ダブルで剣使いで鍛冶屋。アレクはなんやオモロい奴やのー」

「褒めるなよい!」

「褒めてへんわい!」

わはは
わはは

「ところでハイドはここでの目標はあるのか?」

「ああ」

「やっぱり10傑入してダンジョンに潜りたいよなー」

ヴィヨルド領領都学園の大きな特徴の一つが学園内にダンジョンを有することだ。
しかも年に1度開催される武闘祭で10傑入をすれば、ダンジョンを授業単位で潜れるという破格の特典がある。

「アレクは?騎士志望なんか?」

「いや、俺は冒険者になりたいんだ。だから剣も必要だろ」

「たしかにな。俺も斥候としてダンジョンに行きたいしな。じゃあ仲間でライバルだな」

「そうだな」

「アレク、明日のクラス分け試験、お互い頑張ろうや」

「ああ、お互い頑張ろう」


クラス分け。
ヴィヨルド領の領都学園は試験の成績順にそのままクラス編成になるのだという。
クラスは定員30人が10クラスある。
俺はモンデール神父様(領都学校長)からの推薦でここに入学した。神父様に恥をかかせないよう、頑張らなきゃな。
さっそく明日は領都学園の座学試験と実技試験がある。
頑張るぞ!


寮生活での新しいルーティン。
座学ではシスターナターシャから渡された課題に取り組み、剣の素振りをしてからランニングに出よう。
寝る前はドラゴンの欠けらに魔力を注ぎ込むこと、鉄の塊をニギニギすることは変わらない。

「じゃあハイル、俺は外を走ってくるわ。先に寝ててくれ」

「ああアレク。悪いが先に寝てるわ」

ハイルは明日に備えて早めに寝るそうだ。


寮周りをジョギングする。
寮周りといってもかなり広い。ヴィンサンダー領都学校の訓練場くらいはあるな。
と、前方からランニングをする先輩らしき女性が走ってきた。
精霊を連れたエルフだ。
エルフの先輩もその精霊もしっかりと俺とシルフィを見つめている‥。

(これは素通りはムリだな)

立ち止まって一礼をする俺。

「先輩、こんばんは」

「あら、あなたヒューマンなの?珍しいわね」

「はい。ヴィンサンダー領から来た新入生のアレクです」

「私は風の精霊シルフィ」

シルフィから声がかかる。

(アレク、あの子‥かなり強いわ。まだアレクでも勝てないわね‥)

「こんばんは。私は6年のマリー・エランドルよ」

「私はシンディよ」

銀髪サラサラのストレートヘア。
均整のとれた、いかにもというエルフのすごい美人さんだ。クールな目元は‥ホーク師匠にも似てるなあー。
精霊のシンディはシルフィと同じ風の精霊だ。ちょっぴり勝ち気な雰囲気もシルフィに似ている。

「エランドル‥先輩はホーク師匠の血縁の方ですか?」

「えっ?」

「あなた、ホーク叔父さんを知ってるの?」

「あーやっぱり!俺、ヴィンサンダー領領都学校出身なんですが、春休み中はホーク師匠から魔法を指導してもらってます。もう3年になります」

「へー、知らなかったわ。ホーク叔父さん、もう何年も里には帰ってないと思ったらヒューマンの子を弟子に持ってたのね」

「えーっとアレク君、ちょっと座りましょうか」

「はい、マリー先輩」

(うん、マリー先輩からいい匂いがするよ‥)

マリー先輩によれば、ホーク師匠はマリー先輩のお母さんの弟らしい。
(ホーク師匠、自分のことあんまり喋らなかったもんな)

「アレク君、今の在校生にエルフはもちろん、精霊を見える子は1人もいないわ。だから安心していいわよ」

ウインクをしてニッコリと笑うマリー先輩。

(うぉー、美人エルフのウインクだよー!ズキュンズキュンだよ!)

「えーっとアレク君?‥どうしたのアレク君?」

マリー先輩が不思議な顔をした。

(やばっ!また俺どっかにトリップしてたのか!)

「す、す、す、すいません先輩。俺、精霊魔法はもちろんなんですが、風と土しか使えないことにしてますから。黙っててくれると助かります」

ウフフ

ニッコリ笑ったマリー先輩が頷いた。

(あー本当に綺麗だよ‥)

早くも会ったばかりののマリー先輩の笑顔にやられてしまった俺。

「さてと。じゃあアレク君、明日からよろしくね!」

「はいマリー先輩!よろしくお願いします!」

「まずは明日のクラス分け、頑張るんだよ!」

「はい!」

颯爽と走り去るマリー先輩を俺はぼーっと見送っていた。


「マリー、良かったわね。これで今年のダンジョンは期待できるわ!」

「ええ。シンディも友だちができたわね!」

「ホントよ。ここの学園、友だちがいなかったから寂しかったのよねー。アレクに憑いてる子、同じ風の精霊だからうれしいわ」



寮に戻った。
初日から美人エルフの先輩に出会えたぞ!
マリー先輩、いいなぁ。
学園生活も楽しくなりそうだ。
明日の試験も頑張らなきゃな。
さて、寝るか。


ウゴーウゴーウゴー

ハイルのいびきがすごい‥
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...