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第2章 幼年編
105 ヴィヨルドへ
しおりを挟む「はーはーぜーぜー師匠ー今年もありがとうござましたー」
卒業式のあと。
春休みという名の修行も終わった。
ホーク師匠との20日間の修行は今年もあっという間だった。
3年めともなると少しは楽に・・・ならない!
今年も地獄の特訓だった。
魔獣との戦い方、精霊魔法の効果的な発現の仕方を学んだ。
傀儡(くぐつ)魔法の解除のしかたも新たに習った。
傀儡魔法とは精霊を禁忌の呪法であやつり人形のように縛る魔法でかる。
とっても疲れたが、今年も確かに力はついたと思う。
「師匠、ありがとうございました」
「ああ。アレクまた来年会おう」
「はい、師匠。また来年もよろしくお願いします」
「アレクまたねー」
シルキーも手を振ってくれる。
「シルキーお姉さんもまたねー」
「シルフィあんたもねー」
シルフィも手を振りかえしている。
精霊魔法を扱えるようになってから、俺の魔法の発現力は目に見えて強くなった。
自身の力だけではない。精霊の力を貸してもらっているからだ。
初めてこの精霊魔法をホーク師匠から聞くまでは、俺もまったくわからなかった。信じてなかったとも言える。それこそ、以前師匠が言ったように、見えないヒューマンはこの精霊を信じないんだと思う。
見えないものを信じないヒューマン種はたくさんいるんだよな。
▼
ヴィヨルド領に行く直前。
1週間余りを家で過ごした。
一日家の畠で農作業を手伝った。わが家の畠はいいなあー。
と、目を凝らすと土の精霊ノームが見えた。
「ノーム、畠をよろしくな」
ノームはニコッと笑って手を振ってくれた。
▼
ヴィヨルドの領都は遠い。ヴィヨルドの西の果て、黒の森へは半日ほどで駆けられるようにはなったが、流石に領都までは遠いから2日かけて向かう。
ホーク師匠との修行で野営も慣れたものだ。
明後日から、俺はヴィヨルド領の領都学園に入学だ。
6年間、ヴィヨルド領の学生寮にお世話になる。
家に帰れるのは夏休みと冬休み、春休みぐらいだろう。
出発前、そんなことを話したら妹のスザンヌがまたしてもギャン泣きした。
弟のヨハンも最近は理解してギャン泣きする。
ギャーギャー
嫌だー嫌だー
「スザンヌもヨハンも泣かないでくれよ。お前らに泣かれるとお兄ちゃん、勉強しにヴィヨルドに行けないじゃないか」
「ううっ、ぐすん。わがっだ。がまんする。だからお兄ちゃん早く帰って来てね」
「ああ、わかったよ。夏には帰ってくるな。ヴィヨルドのおいしいものをお土産に持ってくるな」
「アレク、言うまでもないが身体に気をつけろよ」
「うん、父さん」
「アレクちゃん‥スザンヌやヨゼフがまた泣くからね‥気をつけるんだよ」
「うん、母さん。手紙送るよ」
「それから、アレクちゃんお腹出して寝ちゃダメよ」
ん?
翌朝。
いよいよ出発だ。
「じゃ、行ってきます」
「妖精さん、お兄ちゃんをよろしくね!」
スザンヌが見えないシルフィに向けて話す。
「シルフィさんお兄ちゃんをよろしく」
シルフィが見えるヨゼフはシルフィに何か言っていた。
行くぞ。
「ブースト!」
俺はヴィヨルドに向けて駆け出した。
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