アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
104 / 722
第2章 幼年編

105 ヴィヨルドへ

しおりを挟む


「はーはーぜーぜー師匠ー今年もありがとうござましたー」

卒業式のあと。
春休みという名の修行も終わった。
ホーク師匠との20日間の修行は今年もあっという間だった。
3年めともなると少しは楽に・・・ならない!
今年も地獄の特訓だった。
魔獣との戦い方、精霊魔法の効果的な発現の仕方を学んだ。
傀儡(くぐつ)魔法の解除のしかたも新たに習った。
傀儡魔法とは精霊を禁忌の呪法であやつり人形のように縛る魔法でかる。
とっても疲れたが、今年も確かに力はついたと思う。

「師匠、ありがとうございました」

「ああ。アレクまた来年会おう」

「はい、師匠。また来年もよろしくお願いします」

「アレクまたねー」

シルキーも手を振ってくれる。

「シルキーお姉さんもまたねー」

「シルフィあんたもねー」

シルフィも手を振りかえしている。

精霊魔法を扱えるようになってから、俺の魔法の発現力は目に見えて強くなった。
自身の力だけではない。精霊の力を貸してもらっているからだ。
初めてこの精霊魔法をホーク師匠から聞くまでは、俺もまったくわからなかった。信じてなかったとも言える。それこそ、以前師匠が言ったように、見えないヒューマンはこの精霊を信じないんだと思う。
見えないものを信じないヒューマン種はたくさんいるんだよな。





ヴィヨルド領に行く直前。
1週間余りを家で過ごした。
一日家の畠で農作業を手伝った。わが家の畠はいいなあー。
と、目を凝らすと土の精霊ノームが見えた。

「ノーム、畠をよろしくな」

ノームはニコッと笑って手を振ってくれた。






ヴィヨルドの領都は遠い。ヴィヨルドの西の果て、黒の森へは半日ほどで駆けられるようにはなったが、流石に領都までは遠いから2日かけて向かう。
ホーク師匠との修行で野営も慣れたものだ。

明後日から、俺はヴィヨルド領の領都学園に入学だ。
6年間、ヴィヨルド領の学生寮にお世話になる。
家に帰れるのは夏休みと冬休み、春休みぐらいだろう。
出発前、そんなことを話したら妹のスザンヌがまたしてもギャン泣きした。
弟のヨハンも最近は理解してギャン泣きする。

ギャーギャー
嫌だー嫌だー

「スザンヌもヨハンも泣かないでくれよ。お前らに泣かれるとお兄ちゃん、勉強しにヴィヨルドに行けないじゃないか」

「ううっ、ぐすん。わがっだ。がまんする。だからお兄ちゃん早く帰って来てね」

「ああ、わかったよ。夏には帰ってくるな。ヴィヨルドのおいしいものをお土産に持ってくるな」

「アレク、言うまでもないが身体に気をつけろよ」

「うん、父さん」

「アレクちゃん‥スザンヌやヨゼフがまた泣くからね‥気をつけるんだよ」

「うん、母さん。手紙送るよ」

「それから、アレクちゃんお腹出して寝ちゃダメよ」

ん?

翌朝。
いよいよ出発だ。

「じゃ、行ってきます」

「妖精さん、お兄ちゃんをよろしくね!」

スザンヌが見えないシルフィに向けて話す。

「シルフィさんお兄ちゃんをよろしく」

シルフィが見えるヨゼフはシルフィに何か言っていた。


行くぞ。

「ブースト!」

俺はヴィヨルドに向けて駆け出した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...