アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

095 祝 初のテンプレ

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冒険者ギルドに行った。
入口近くの円卓には珍しく昼から酒を飲んでいる若い冒険者数人がいた。初めて見る顔の人たちだな。
その横を通ろうとした時だ。スッと伸びてきた足に、俺は足を引っ掛けられた。

「邪魔だガキ!」

(おっ、テンプレだよ!やっと来たよー!)

思わず小躍りした。

「プッ。すいません」

ギルドテンプレに遭遇したあまりの嬉しさについついニヤついたのが顔に出ていたらしい。

「何笑ってるんだよ!このガキが!」

酒に酔った若い冒険者3人のうち、足をかけてきた男が赤ら顔で叫んだ。

「すいません、つい‥」

「足ひっかけられて何が嬉しい」

「あはは。俺、生意気ですよね。だからこのあとは訓練場で指導されるのかなーって」

「なめ腐ったガキだな。そんなに指導してほしいか?じゃあお望み通り、鉄級の俺様がお前を可愛がってやるよ。闘(や)るかガキ?」

「はい、やりましょう、やりましょう!」

「ちょっとアレク君!早く謝んなさい!怪我するわよ!」

受付嬢のマリナさんが心配して声をかけてくれる。

「マリナさん。大丈夫です」

そこへたまたま解体場から顔を出したグレンフラーさんが。

「かーアレク!お前そんなに血の気が多かったっけか?
おい若いの、やめとけ。アレクはガキだけどお前らより強いクソガキだぞ!」

(グレンさん、クソガキって‥)

ムキーーー!

その言葉にますますヒートアップした若い冒険者3人組。

(グレンさんは煽ったんだろうか)

そのままギルド裏の訓練場に行く。
俺、対人の戦闘訓練はもっとしたかったんだ。ある意味、願ったり叶ったりだ。

「仕方ねーな。お前らどっちもやる気満々だし。俺ぁ解体場のグレンフラーだ。俺が見届けてやるよ。使うのは木刀にしとけ。どっちかが降参するまでだぞ!」

「クソガキ。生命は取らねーが、骨の2、3本は覚悟しとけよ!」

ワハハー
やったれーやったれー

仲間の2人も囃し立てる。

「おいおい、何か面白そうなことが始まるぞ」

「いーぞー!ぼく、がんばれー」

「「がんばれー!!」」

なぜか3人組の若い女性から声援を受ける。
いつのまにか何人かの冒険者の見せ物になったみたい。

お互い木刀を手にする。

「もーアレクが動いたらアタシが寝れないじゃないの!」

シルフィがお怒りモードだ。

「ごめんよ、シルフィ。すぐに終わらせるから」

「はやくしてよね!」

シルフィは陽の当たる訓練場の柱の上に寝所を移した。
そんな一幕に誰も気づくことなく。

「始め!」

グレンさんの開始の合図とともに前に出る若者。
酔ってはいるがさすがは鉄級冒険者というべきか。腰を落として突進する若者。盗賊よりもぜんぜん強いよ。
俺は腰を落とし、その場で迎え撃つ。若者の突きを木刀で払う。勢いあまってよろけたものの、すかさず反転して連続して打ちかかってくる若者。俺は冷静にそれを右、左と払う。
攻める若者に受ける俺。

「やるな、ガキンチョ」

酒が覚めてきたのかニヤリと笑った若者は2、3歩下がってから改めて打ち込んできた。
よーし。
俺も両足に土魔法で金剛を発動、不退転の位置で迎え撃つ構えをとる。
高い姿勢から、振り下ろされる若者の木刀を腰から起き上がりつつ下段から迎え撃つ。
カキーン。
砕け散る若者の木刀。

「くそガキがー!」

木刀を捨て、すかさず殴りかかる男。
さすがは冒険者だ。
弛緩がない。
戦闘そのものに慣れている。
俺も木刀を後ろに放り投げ、素手で立ち向かう。
素手で闘う体術は、ウルとの訓練が身体で覚えている。
殴りかかる男の伸びてきた拳を首ひとつで避ける。
相手の踏み込んできた勢いをそのままに利用。腕に両手を添えながら倒す。
そして伸ばした男の腕をキメる。
関節技、腕挫き十字固めだ。

「いたたたた!悪い、悪かった、俺の負けだ」

悲鳴を上げる若い男。

「うそ?」

「マジか?」

仲間の2人も呆然としている。

「そこまで!アレクの勝ち!」

「お前ら、これに懲りてちゃんと練習しろよ」

「はい‥」

(なんか素直そうな若者たちだね)

3人組はシュンとしている。

「アレクも貸しだからな。今度手伝えよ!」

「はい、グレンさん」

グレンさんが去っていった。


「鉤爪」と名乗った相手の冒険者たちとは、なぜかこのあと仲良くなった。ギルドで会っても、町で会ってもハイタッチをする仲となった。
そして、なぜか「俺たちゃアレクの兄貴分だ」となった‥。



「へー、キミ強いんだねー」

「あ、ありがとうごさいます?」

応援してくれていた3人組の女性冒険者が声をかけてきた。
手には魔石を装着した杖。大きな尖り帽子にふわっと広がる長いスカート。パープルのローブという同じ服装の3人組だ。
長い髪もきれいな美人のお姉さんたちだ。
魔法使い?珍しいな。

「アイツら本当にウザかったんだよね。弱いくせに声かけてきて。キミのおかげでスッとしたわ」

「えーっと‥よかったです。はい‥」

はい。ごめんなさい。
俺、内弁慶って言うの?口下手なんです。とくに初対面の女の人は緊張して話が弾みません‥。本当にごめんなさい‥。

「強いボク、またどっかで会おうねーばいばーい」

王都ギルドから来たという魔法使いチームのお姉さんたちだった。



この後、シャーリーの叔父さんの食堂に行く。何たって俺、シャーリーの友だちだし、店の名物料理コロッケの開発者だもんね。
おばさんなんか、「シャーリーとデート?」ってうれしい冗談も毎回言ってくれるし。

「こんにちはー」

「あっ、格闘場の子よ」

「「あー本当だー!!」」

「あっ、お姉さんたち!さっきはどうも」

「キミ、こっちにきなさい。ご飯食べてきなさい。いいものを見せてもらったお礼よ。ここのツクネやコロッケ、めっちゃ美味しいんだよ。このコロッケはまだ王都でも出してる店も少ないけど大人気なのよ」

(うんうん、ご愛顧ありがとうございます)

「この店の肉料理もおいしいし、横についてくる粉芋もおいしいんだよ。王都のミカサ商会やサンデー商会でも買えるけど、アレク袋と粉芋は冒険者の食事にはもはやマストよ。ねー、おばさん」

アレク袋と粉芋はこの店でも置いてもらっている。食事のついでにみんな買ってくれるそうだ。
魔法使いのお姉さんたち、どうやら食堂の常連さんでおばさんとも顔見知りのようだ。

「アリスちゃん、それ作ったのこのアレク君よ」

「えー?アレク袋のアレクってキミなのー?」

「はい。あはは‥」

中からおじさんの声もする。
「あと、このコロッケの発案者もツクネもアレク君だよー」

「「「えーっ!!!」」」

お姉さん3人組は、大切な顧客さんだった。

冒険者マジックラブのお姉さんアリスさん、フローラさん、タマラさん。売り出し中の魔術師3人組の冒険者だ。





マジックラブのお姉さんたちに食事をごちそうになりながら、俺はいろいろ聞いた。
(なんかシャーリー、チラチラとこっちを見ながら睨んでるし‥)

「最近はどんな魔法が新しくあるのか教えてください」

level3以上の魔法には、発現者のオリジナル魔法もあり、今も進化をし続けている。
アリスさんが言う。

「そうねー今はやっぱり誘導魔法かしら」

「誘導魔法?」

「そう誘導魔法よ」

アリスお姉さん曰く、対象者の自白を誘導する魔法だそうだ。

「犯罪者対策に有能な魔法ね。有効性が高いから、法廷での尋問でも認可されるみたいよ。これで悪事をして言い逃れてきた貴族も減るわ」

俺は刹那、家宰と継母が浮かんだ。

(これは、突破口になるかもしれない・・・)

その後も王都の様子やいろんな話をきかせてもらった。

「これ、俺が作った香草入のアレク塩です。肉を焼くときこれをつけると肉がさらに旨くなります。よかったら使ってみてください」

「ありがとう!でもアレク君って‥何なの?」

「あはは。俺は俺です」

(そういや俺、このアレク塩配り歩いてるよな‥)

「アリスお姉さん、俺もっと強くなりたいんだ。今は領都学園にいるけど、来年はまだ決まってないんだ。どこへ行くといいと思う?」

「王都学園もいいけど、あそこは貴族からの差別も煩いしね‥」

「「うんうん」」

フローラさんとタマラさんが同意している。

「強くなるんだったらヴィヨルドかしら。あそこは人種差別もないからヒューマンも獣人もドワーフも誰でも、強ければ認められるわ。ヴィヨルドには、学園だけのダンジョンもあるしね」

「学園だけのダンジョン?」

「ええ、学園生しか入れないダンジョンらしいわよ」

「へー(ホーク師匠が言ってたやつだ)」


マジックラブのお姉さんの話から。
ヴィヨルドへの興味関心が高まってきた俺だった。
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