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第2章 幼年編
091 バザー(中)
しおりを挟むデニーホッパー村、1年に1度の最大の行事、
デニーホッパー村教会バザーが始まった。
土壌改良等による開拓村の「成功」は周囲の村々どころか王国内でも話題となった。それ故、開村以来最大の人々が集まった。
東西にある入場門に列をなす人々。
ここ、開拓村ですよ、村。
もうね、びっくりだよ本当。
さてバザーといえばその本来は、この日限り出店する商会が豊富な商品を並べて住民が興味いっぱいにそれを眺め、教会バザー限定の女神様グッズを求めるのが通例だった。が、今年は違った。
話題のデニーホッパー村を見に興味津々にやって来た近隣の村人と商人が大挙訪れた。
何より豊作により現金収入を得るようになった農民自身が楽しみにしていたお祭りが今年のバザーだった。
デニーホッパー村発のものが子どもたちの屋台で売られている。
朝から押すな押すなの大賑わい。
畠を荒らす迷惑魔獣のチューラットやアルマジロー。これまでは捕獲(駆除)しても肉質の硬さから敬遠されていたその肉も、専用のミートチョッパーでひき肉となり肉団子で串焼きにすれば劇的に美味しくなった。
お父さん世代の男性からの支持は絶大だ。
石を裏返せばすぐに見つかる、グロテスクな見た目から川の悪魔と呼ばれたデビル(タコ)も刻んで溶いた小麦粉等と混ぜて型で焼けばたこ焼き(デビル焼き)なるものに変わる。カリッとして中はトロトロ熱々の美味しさのたこ焼きだ。
これは男女年齢問わずに人気がある。
これまでは茹でて塩をつけるか塩煮にするしかなかった困窮農民の主食の芋。お世辞にも美味しいとは言えなかったその芋も劇的に美味しく変わった。さらには芋から作られたパリパリのポテトチップ、食べる手が止まらないポテトフライはエールや酒がすすむ美味しさだ。
これも老若男女に人気がある。
カリッとした衣の中はホクホクの芋が後を引くコロッケもたまらなく美味しい。
チューラットやアルマジローの細かな肉片も旨さ倍増だ。
この世界、油は高価なものと認知され、多くの人が揚げた料理など食べたことがなかった故、ポテトチップやポテトフライ、コロッケの美味しさが圧倒的な支持を得るのも至極当然だった。
もちろん魔獣やブッヒーの脂はラード、木の実の油は植物油脂と用途も変えているよ。
森の恵みの果実も乾燥すれば糖度も上がる。これに雑穀を混ぜて固めれば、ほのかな甘みとカリッとした食感も小気味よいシリアルバーになる。小腹が空いたときのおやつだね。これは、女性や子どもに受けた。
そして今年のバザーで最大のヒットはジェラートだった。これは村のカウカウ農場のカウカウの乳に蜂蜜を加えて凍らせたもの。
ほとんどの人が初めて食べる氷菓にびっくりして、即夢中となった。いかついおじさんがジェラートを嬉しそうにぺろぺろやってる絵図はちょっぴりシュールだったけど。
販売目的でやってきた商人は商人で、これらのメニューに皆目を見張った。
やはりデニーホッパー村のバザーに来てよかったと、何かと算段した。いつのまにかデニーホッパー村のビジネス担当窓口となったシリカさんはバザーの後も忙しくなるだろう。
サンデー商会は、村の物産品をまとめて販売する特設ブースも作ってくれた。あまりに多くの人が来たので、子どもたちの屋台だけでは到底捌ききれなかったからだ。販売スタッフにはミカサ商会からの応援も幾人か。
皆が協力してこの日を盛り上げてくれた。
味の良さから村の特産品となった芋は、芋単体でも飛ぶように売れた。
スライム袋(アレク袋)に入った粉芋も売れに売れた。もちろんスライム袋単体も売れまくった。
この後、スライム袋は数年を経たずして中原中を席巻していくのだが、粗悪なコピー品を駆逐するのもアレク袋並びにその発売元となるミカサ商会とサンデー商会であった。優良品イコールアレク製とミカサ商会(サンデー商会)だとするイメージの高揚にも役立つ契機にもなった。
サンデー商会の居酒屋部門も大賑わいだ。
この日用に準備したエールなどのお酒はもちろん、ポテトチップ、ポテトフライ、茹で芋、TUKUNEもどんどん売れていく。
たくさん用意したコロッケは用意した分が早々に完売した。
バザーの大成功。
デニーホッパー村の名前はますます広がることになった。
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