アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

090 バザー(前)

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「お兄ちゃんも手伝ってね!」

「ああ、もちろんだよ」

デニーホッパー村の教会が1年で1番盛り上がるバザーの日が近づいた。
バザーの主役は在校生である。物品の販売を通して貨幣経済を知る、生きた授業になるからだ。
俺自身もめちゃくちゃ楽しみだ。
ただ在校生が主役のバザーだから、俺は裏方に徹しないとね。

バザーで売るものは、俺たちのときと同じチューラットの肉団子(TUKUNE)とたこ焼き(デビル焼き)、雑穀のシリアルバー、それにコロッケとポテトフライ、ポテトチップだ。
芋は村のいちばんの特産品にしていきたいから、芋メニューのあれこれを広げてみた。
そして今年のイチオシ新製品はなんとジェラートなのだ。これはカウカウのミルクに蜂蜜をミックスして凍らせて作ったもの。
ジェラートには水分を凍らせる生活魔法を発現しなければならない。今年の在校生には水魔法を発現できる子が2人いる。
前の休養日に領都から戻ったシャーリーがこの2人にしっかりと指導してくれているのだ。
もちろんシャーリーは当日も俺と同じように裏方として手伝ってくれる。

肉団子作りのミートチョッパーとたこ焼き金型は学校備付の備品として既に寄贈してある。
あとは当日、腕が痛くなるまで焼きまくることになりそうなので、体力のある男の子をローテーションできるようにとスザンヌにも言っておいた。

「お兄ちゃん、みんなお兄ちゃんのために頑張るって!」

「えっ?なんで俺のため??」

意味が分からないけど、みんな頑張るのはいいことなんだよ。

ただね‥
前日、俺が顔を見せたら、その子たちがね‥直立不動で、

「おつかれさまです兄貴!俺たち舎弟、頑張ります!」

だって。
俺、露天商を取り仕切る危ない人じゃないっつーの!

「領都の狂犬伝説がここまで流れているのよ」

シャーリーとアンナが涙を流しながら腹抱えて笑って言ってたよ。
ちなみにたこ焼きも肉団子(TUKUNE)も、子どもたちが何度も試食をして味もバッチリになったんだそうだ。
舎弟(?)の子たちも倒れるまで焼き続けるって謎の闘志をたぎらせていた‥。


「アレク君、今年のバザーはすごいことになりそうよ。隣のニールセン村からも、のんのん村からもみんなが遊びに来るって。のんのん村の人たちなんか夜明けに村を出てやってきてくれるそうよ。サンデー商会さんもミカサ商会さんも張り切ってるって」

シスターナターシャがそう言った。
楽しみだなぁ。



バザー当日。
雲一つない快晴の青空となった。
俺は開催をみんなに知らせる花火(ファイアボール)を盛大に打ち上げた。
自分の村だから、魔法を隠すこともないからね。

ど~~ん ど~~ん

さあ、教会バザーの始まりだ。
張り切っていこう!


「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、ヨハン行ってきまーす!」

「「「スザンヌいってらっしゃい」」」

「あー」

打ち合わせもあるスザンヌが先に家を出る。
3年前の俺自身を思い出すなあ。
スザンヌ、仲間といい思い出を作ってくれよ!
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