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第2章 幼年編
075 見えない力
しおりを挟むあー寝た、めちゃくちゃ寝たわー。
目覚めは爽やかだった。
翌朝、簡単な朝食を済ませた後、師匠が言った。
「いいかアレク、この世の中には、目に見えるもの、目に見えないものがある。それはわかるな?」
「はい」
(あっ、昨日の続きだ)
「では見えないものでもあるといったらどう思う?見えないからといって無いとは言えまい」
「はい‥」
うーん。いわゆる禅問答なんだろうか?
ポクポクポクポクちーん。♪好き好き好き好き‥‥閃くわけないわ。
「アレク・・・」
ホーク師匠がじっとかわいそうな子を見る顔で俺を見つめる。
(ときどき大人が俺を見る時の顔だよ!)
「‥昨日の答え、それはな‥」
ホーク師匠が話してくれたことには、見える者には在って、見えない者にには無い。これが精霊と呼ばれるものだと言う。
エルフにとって精霊は普通に見えるので在ることは当然という。
ドワーフもそうだという。
ところがヒューマンは‥うん、俺精霊なんて見たことがないし、精霊を見たなんて人の話も聞いたことがない。
師匠は言う。それがヒューマンとエルフの種族の違いだと。
精霊が見えるエルフには当然それらの精霊は集まるが見えないヒューマンには精霊は集まらない。
自然界に在って、自然の力を揮える者が精霊。
依ってその力を誰に貸してくれるのか、誰に貸してくれないのかも明らかだと。
これが精霊魔法と呼ばれるものの原点だと。
昨日師匠が見せた火属性の魔法や、土属性の魔法は精霊の力を借りたもの。つまりは精霊魔法だ。師匠が風魔法以外使えないというのはそういうことらしい。
俺より遥かに凄い魔力の発現。これが精霊の力らしい。精霊の力って凄いんだなあ。
「アレク、では精霊の力を貸りるにはどうする?」
「え~っと‥精霊さんにお願いするとか?」
「あながち間違いではない。逆に考えろ。お前が精霊だとする。ならば見えない者に力を貸すか?」
「貸しません」
「見えるもの、見えない者。どちらに力を貸す?」
「それは見える者です」
「そういうことだ。昨日俺が見せた火も土も俺自身の魔法ではない。俺を媒介にした精霊魔法の発現だ」
精霊魔法。自然界にいる精霊の力を貸してもらう魔法だ。
うん、だんだんと核心に入ってきたよ。
てか俺が鈍いから、ホーク師匠が言葉を替えて噛み砕いて教えてくれてるんだよなー。
精霊は、以下に分かれている。
水の精霊はウンディーネ。
土の精霊はピグミー又はノーム。
風の精霊はシルフ又はシルフィード。
火の精霊はサラマンダー。
金の精霊はノーム。
ヒューマンは土と金を別のものとしているが、エルフやドワーフはそれらは同一のものとして扱うらしい。
土と金。親和性が高いというのはそういうことなんだとか。
そして、種族として土や金に慣れ親しむドワーフがノームやサラマンダーに愛されて鍛冶に優れるのも当たり前のことらしい。
森の民とも呼ばれるエルフが風の精霊シルフィードに愛された結果、弓を得意とするのもまた当然のことだと。
「アレク、お前はこの僅かな期間、少しでも自然と自分を融和することを考えろ」
「はい」
「今日からの修行の内容。まずはこの世界を、自然を感じて呼吸をしてみろ。強力な魔獣の多い黒の森だが、お前の持つドラゴンの魔石があるから魔獣は近づてくることはない」
(そういや、本当にこの魔石のかけらをもらってから魔獣にはほとんど会ってないや)
「いいか。まず今日から10日間、動かずここにいろ。飯は用意してやる。水は自分で用意できるな」
「はい、師匠。でも何をやるんですか?」
「それも考えろ」
「え~っと‥?」
(あれかな?ポクポクポクチーンってやつ。好き好き♪◯◯さーんっていう小坊主の座禅‥あっ!また痛い顔してるよ、師匠!)
「考えてみます‥」
「じゃあな」
そんなあっさりとした言葉で師匠は去っていった。
えーどうなる俺?
小坊主になるのか俺?
チーン。
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