75 / 722
第2章 幼年編
075 見えない力
しおりを挟むあー寝た、めちゃくちゃ寝たわー。
目覚めは爽やかだった。
翌朝、簡単な朝食を済ませた後、師匠が言った。
「いいかアレク、この世の中には、目に見えるもの、目に見えないものがある。それはわかるな?」
「はい」
(あっ、昨日の続きだ)
「では見えないものでもあるといったらどう思う?見えないからといって無いとは言えまい」
「はい‥」
うーん。いわゆる禅問答なんだろうか?
ポクポクポクポクちーん。♪好き好き好き好き‥‥閃くわけないわ。
「アレク・・・」
ホーク師匠がじっとかわいそうな子を見る顔で俺を見つめる。
(ときどき大人が俺を見る時の顔だよ!)
「‥昨日の答え、それはな‥」
ホーク師匠が話してくれたことには、見える者には在って、見えない者にには無い。これが精霊と呼ばれるものだと言う。
エルフにとって精霊は普通に見えるので在ることは当然という。
ドワーフもそうだという。
ところがヒューマンは‥うん、俺精霊なんて見たことがないし、精霊を見たなんて人の話も聞いたことがない。
師匠は言う。それがヒューマンとエルフの種族の違いだと。
精霊が見えるエルフには当然それらの精霊は集まるが見えないヒューマンには精霊は集まらない。
自然界に在って、自然の力を揮える者が精霊。
依ってその力を誰に貸してくれるのか、誰に貸してくれないのかも明らかだと。
これが精霊魔法と呼ばれるものの原点だと。
昨日師匠が見せた火属性の魔法や、土属性の魔法は精霊の力を借りたもの。つまりは精霊魔法だ。師匠が風魔法以外使えないというのはそういうことらしい。
俺より遥かに凄い魔力の発現。これが精霊の力らしい。精霊の力って凄いんだなあ。
「アレク、では精霊の力を貸りるにはどうする?」
「え~っと‥精霊さんにお願いするとか?」
「あながち間違いではない。逆に考えろ。お前が精霊だとする。ならば見えない者に力を貸すか?」
「貸しません」
「見えるもの、見えない者。どちらに力を貸す?」
「それは見える者です」
「そういうことだ。昨日俺が見せた火も土も俺自身の魔法ではない。俺を媒介にした精霊魔法の発現だ」
精霊魔法。自然界にいる精霊の力を貸してもらう魔法だ。
うん、だんだんと核心に入ってきたよ。
てか俺が鈍いから、ホーク師匠が言葉を替えて噛み砕いて教えてくれてるんだよなー。
精霊は、以下に分かれている。
水の精霊はウンディーネ。
土の精霊はピグミー又はノーム。
風の精霊はシルフ又はシルフィード。
火の精霊はサラマンダー。
金の精霊はノーム。
ヒューマンは土と金を別のものとしているが、エルフやドワーフはそれらは同一のものとして扱うらしい。
土と金。親和性が高いというのはそういうことなんだとか。
そして、種族として土や金に慣れ親しむドワーフがノームやサラマンダーに愛されて鍛冶に優れるのも当たり前のことらしい。
森の民とも呼ばれるエルフが風の精霊シルフィードに愛された結果、弓を得意とするのもまた当然のことだと。
「アレク、お前はこの僅かな期間、少しでも自然と自分を融和することを考えろ」
「はい」
「今日からの修行の内容。まずはこの世界を、自然を感じて呼吸をしてみろ。強力な魔獣の多い黒の森だが、お前の持つドラゴンの魔石があるから魔獣は近づてくることはない」
(そういや、本当にこの魔石のかけらをもらってから魔獣にはほとんど会ってないや)
「いいか。まず今日から10日間、動かずここにいろ。飯は用意してやる。水は自分で用意できるな」
「はい、師匠。でも何をやるんですか?」
「それも考えろ」
「え~っと‥?」
(あれかな?ポクポクポクチーンってやつ。好き好き♪◯◯さーんっていう小坊主の座禅‥あっ!また痛い顔してるよ、師匠!)
「考えてみます‥」
「じゃあな」
そんなあっさりとした言葉で師匠は去っていった。
えーどうなる俺?
小坊主になるのか俺?
チーン。
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる