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第2章 幼年編
074 発想の転換
しおりを挟む師匠は自身を凡人だと言った。
が、俺にはどうみても師匠が凡人には見えなかった。
「俺からみれば、師匠はやっぱり天才でしょう‥」
ちょっぴり僻みに近い思いだったのかもしれない。
ホーク師匠は俺を見てフッと笑った。
「天才?俺は違うぞ。ただなアレク、俺はただのエルフだ。そしてアレク、お前はただのヒューマンだ。
ここにあるのは種族としての違いだけだ」
俺の魔法の師匠になってくれたホークさんが気になるワードを言った。
「種族としての違い?」
「ああ」
ホーク師匠は俺の問いには応えず、こんなことを話しながら説明してくれる。
「アレク、ファイアを真っ直ぐ上に、どこまで上がる?」
焚き火にあたりながら、ホーク師匠が言う。
「はい、師匠。こんな感じです」
ゴーーー
俺が出した火は自称中華料理屋さんの火だ。少なくとも俺は生活魔法でこの高さも火力もそうそう人に負けるとは思わなかった。この中華料理屋さんの火力でしかも高さ3Mにも届こうとするもの。俺的にはどうよ!と言いたくなるものだったのだが‥
「見てろ」
ゴーーーーーーー
ホーク師匠が出した火は真っ直ぐに10mを優に超える高さになった。もちろん火力は俺と同じというか、俺以上の中華屋さんのそれ。
「す、すげぇ…」
夜空の彼方へ向けて上がる火柱を眺めながら、あんぐりと見つめるしかない俺。
続けてホーク師匠が言う。
「土塀の高さは?」
「はい」
これはちょっぴり自信があった。何せデニーホッパー村の改良で毎日のように壁を作っていたから。村を囲む土塀は堅固で且つ人の背丈よりも高い。
「いきます!」
ズズズ~~~~
高さだけなら二階建の屋根くらいまでになった。
固さも以前にシャーリーが言っていたようにそんじょそこらの魔獣でも壊せない堅さだ。
「師匠、どうでしょう」
俺はちょっぴりドヤ顔になっていたのかもしれない。
「俺は土魔法は使えんがな。見てろ」
ゴゴゴーーーーーー
瞬時に黒の森の高い木々とほぼ同じ高さの土塀が出来上がる。土塀というか円錐形だが。
「えーっ⁈凄すぎるんですけど!でも今、師匠は土魔法は使えないって言われませんでした?」
「ああ。俺が魔法としてつかえるのは風だけだぞ」
「だってコレ、土ですよ。さっきの火だって‥」
「いいかアレク、俺と過ごすのはわずか20日足らずの間だ。その間にお前はこの種族の違いの秘密を解かねばならない」
「えっ⁉︎それって‥」
「種族の違い、最初に俺が言ったのはおぼえているな」
「はい‥」
「それは決してエルフが優れていてヒューマンが劣っているというわけではない。一部の馬鹿なエルフはそう思っているがな」
ホーク師匠の話が続く。
「俺というエルフという種族やヴァルカンのようなドワーフという種族は自然界の中に在るものたちと親和性が高いと言われる種族だ。それが故、エルフは風の民や森の民と呼ばれる。
ドワーフが山の民や岩の民と呼ばれるのと同様にな。ヒューマンのほとんどはエルフやドワーフと比べて自然界との親和性が欠けている。
とはいえ、それが埋まらない格差の理由ではない。現にヒューマンの幼子は我らエルフと変わらぬからな」
「あー、えーっと師匠、話がぜんぜん見えません」
「‥いいかアレク、お前はそれを、種族の違いを超えてこい」
「ですからーあの、師匠‥答えは教えてくれないんですか?」
「自分で考えろ!そのための20日間だ」
「え~っと‥‥うん、なんかぜーんぜんわかりませんが俺、がんばります!」
「ふっ。お前ががんばればいいというわけじゃないんだがな。ククク」
師匠が笑いながら言った。
「よし、今日はこれまでだ。寝るぞ」
「師匠、魔獣の見張りはいいんですか?」
「いらん」
「えー魔獣が来たらどうしよう!?俺ぜったい負ける自信があります!」
「アレク‥お前が持ってる魔石の欠けら。何かわかるな?」
「ドラゴンだって聞きましたが‥」
「そうだ。だからそれがあるから魔獣は近づいて来んよ」
「えー!知らんかったー!」
どおりで。たしかに俺、このドラゴンの魔石の欠けらをもらってからほとんど魔獣を見なかったもんなー。
ホーク師匠との火魔法の高さと強さの違い、土魔法の高さと強さの違い。どちらも比べるのも恥ずかしいくらいの違いだった。
果たしてその違いの理由が何なのか?
そして種族の違いとは何なのか?
・・・
・・・・・・
あーぜんぜんわかんねーや‥。
意味が全くわからない俺だった。
気になって眠れないはずだったが、、。
その後の夜は‥目を閉じたらすぐに爆睡してしまうのだった。
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