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第2章 幼年編
070 完成
しおりを挟む学校帰りにドワーフのヴァルカンさんの工房に寄るのが習慣になった。教会の郵便屋さんをする時間等を考えると工房には数時間しかいられない。残念だが仕方ない。
「師匠、すいません。俺しばらく遅くなるんですが‥」
ディル師匠にもその話をして修行の時間を少し短く割いてもらうようお願いした。
師匠にはなぜか感心された。
「いいぞアレク。しかしよくヴァルカン殿と縁が結べたな」
(ヴァルカン殿は偏屈じゃからの‥)
師匠の独り言が聞こえた。偏屈って師匠が言うか‥?
「あーん?」
師匠から殺意の篭った眼差しが向けられる。
グレンさんのときと同じか!ぜったい心の声は漏らしてないのに!
師匠コワッ!
▼
俺が遣う刀を俺自身で錬成していく。土魔法と金魔法を使い、少しずつ形を整えていく。しっかり集中をしないと真っ直ぐにならない。ほんの僅か、ミリ単位のズレが破損の原因になるらしい。もし闘いの最中に刀が折れたら生命も折れる。
「アレク!少しズレとるぞ!もう一回やり直せ」
「はい」
たいしてこっちを見もせず、自分の仕事をしながらヴァルカンさんの注意が入る。
それも俺がおかしいかなと思ったときに限ってすかさずだ。なぜ分かるのだろう。叩く音が僅かに違うのだろうか。さすがはプロだ。
鍛造や金属の錬成。キツいがこの地味な作業は俺によくあっている気がする。楽しい。集中していると何も考えないし。
やってはやり直し、叩いてはやり直しを繰り返して、数ヶ月後。とうとう俺の刀ができた。
「よし、アレク。もういいぞ。最後は俺がチェックをしてやるから、10日後に取りに来い」
「はい。ヴァルカンさん今までありがとうございました!」
この半年くらいで。
俺の魔力量や魔力の操作精度はかなり上がった。なぜかそれが自分でもわかるくらいだ。たぶん今の俺なら、5つの魔法すべてに於いてLevel2以上を発現できると思う。
地味だけど集中力を高められたのは刀の鍛造を通してのヴァルカンさんの教えのおかげだろう。
▼
学校帰りに商業ギルドへ寄った。たしか俺名義のお金が少しは入っているはずだ。
でもぜったい足りないから融資してもらわなきゃな。
冒険者ギルドに入っているお金はまとまる度にマリア母さんに渡しているし。元々薬草狩りと郵便屋さんくらいだから、あっても10,000Gくらいだろうし。
ヴァルカンさんに払う刀のお金。俺が途中まで打った刀は材料代だけでいいって言ふってたよな。それでも小刀も合わせると安くても10,00,000Gはするはずだ。
百万G‥。
ヴァルカン工房作の武器は最低の品でもそのくらいはする。王国屈指の刀鍛冶だし。
「ピーナさんこんにちは」
顔見知りとなった商業ギルの受付嬢クールビューティーのピーナさんに聞いてみる。
「アレク君こんにちは。今日は何?そうそう、アレク君が考案したミートチョッパー、ミカサ商会で大流行りらしいわよ。あとスライム袋と粉芋の商権もすごく‥」
「そんなことより、ピーナさん、俺のお金って少しくらいはありますか?10日くらいあとにどうしてもまとまったお金が欲しいんです。ひゃ、100万Gくらい要るんですけど‥。も、もちろん無いのは判ってます。でも20万Gくらいはあると嬉しいかなーって言うか‥なんていうか‥その‥最悪融資って制度かなんかを‥子どもなんだけど‥その‥100万Gが‥」
「アレク君あなた‥相変わらずズレてるわね‥ミートチョッパーの商権分に、スライム袋に、粉芋の商権を合わせるとそれだけで、もう30,00,000Gを超えてるわよ!しかもこれ今月分だけだからね!」
「へっ⁉︎」
「さ、さんびゃく‥300万G~!!マジ?」
知らぬ間に大金を稼いでる俺だった。
▼
「ピーナさん、明日の昼、こないだ言ってた150万Gお願いします」
「わかったわ」
商業ギルドで刀の代金の用意をお願いした。
明日はいよいよ俺の刀が出来上がる。
わくわくしてきた。
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