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第2章 幼年編
064 のんのん村へ(後)
しおりを挟むノッカ村の害獣対策。
増え過ぎたチューラットの駆除だ。
狸獣人のポンコーさんに案内してもらった日の翌週の休養日。村民の皆さんに、礼拝の後の教会に集まってもらった。100戸500人ほどの村民。教会はほぼ満員だ。
なぜか食欲を唆る匂いもあるが、これは後のお楽しみだ。
「増え過ぎたチューラットの駆除対策について・のんのん村会議」
教会の白板にはこう書かれていた。
「ではみなさーん、議題の内容について説明を聞いてもらいますねぇ。講師は今話題のデニーホッパー村の改良を主導するアレク君でーす。ではアレク君お願いしますねぇ」
シスターサリーの発声でのんのん村会議が始まった。
(なんかめっちゃハードル上がってるんですけど…。俺ただの子どもなんですけど…)
(おい、子どもじゃないか!)
(何の冗談だ!)
ひそひそ話も聞こえる。
「みなさんこんにちは。デニーホッパー村のアレクです。俺なんかの子どもの話だから半信半疑だと思いますが少しだけ時間をください。質問や不満があれば後で聞きますからまずは説明させてください」
ぺこりと挨拶をする。
しーん・・・
ひそひそ、ひそひそ
(そりゃそうだわ、見ず知らずのガキが村の問題を解決するって言うんだから。いくら穏やかなのんのん村の人だって心穏やかではないわな)
説明に先立って。
俺はみんなが注目する目の前にいきなり巨大な石テーブルを3卓発現させた。
「えっ⁉︎なにこの子、凄い!」
「無詠唱だった⁉︎」
(ヨシ!つかみはOK牧場!)
俺は順を追って噛み砕いて説明をした。
・魔獣チューラットは危険は無くても、放っておいたら際限なく増えてしまうこと
・それにより村の作物の収穫は減るということ
・増え過ぎたチューラットが他の魔獣を呼び込む可能性もあること
・捕獲には専用の捕獲器を使えば労力も要らず誰でも簡単に捕獲できるということ
・硬くて不味いチューラットも調理法さえ覚えれば美味い肉になること
・上手く駆除をして食べていけば新たな食肉としても逆にアリだということ
などを話した。
「大まかな話は以上ですが、まずはみなさんにデニーホッパー村名物のハンバーグを食べてもらいますね。みなさんお腹も空いてますよね。俺も腹ペコなんです!」
そんな話をしながら、俺は先ほど発現させた3卓の横長石テーブルのそれぞれに、小ぶりなハンバーグを山盛り用意してもらった。配膳はシスターサリーとポンコーさんの奥さん、村長の奥さんにお願いしておいた。
もちろん事前のハンバーグの成型から焼きまでは俺の生活魔法の応用である。
教会中に肉のいい匂いが充満する。
「ではみなさん、どうぞ召し上がれ♪」
ごくんっ。
生唾を飲む音がそこら中から聞こえる。それでもなんとなく躊躇している村民の様子を見て、ポンコーさんと奥さんがえいやとばかりに1つ口にした。
「・・・うまっ!」
「なにこれ、すごくおいし~い!」
「お母さん、食べてみて!これすごく美味しいわよ!」
ポンコーさん夫妻の歓声が引き金になってくれた。
「美味い!」
「なんじゃこりゃ!」
「こんなに美味い肉、初めて食うぞ!」
「うまーっ!」
ハンバーグの山がみるみる減っていく。
ハンバーグがあっという間にノッカ村村民の胃袋を掴んだ瞬間だった。シスターサリーも蕩けるような笑顔でハンバーグを頬張っている。
「アレク君、私こんな美味しいの初めて食べたわよぉ!」
うん、シスターサリーがハンバーグを食べてるのは子リスが口いっぱいにどんぐりを頬張る図だね。
かわいいっ!
さて、後は改めてゆっくりと説明をするだけだ。
このハンバーグは害獣とされるチューラットの肉を刻んで塩をまぜ、捏ねて焼いだだけでできたということを説明する。
この世界の人は獣の解体に全く抵抗がない。転生前の世界の、釣り好きの男性が魚を捌くみたいなものだ。
チューラットの硬い肉は専用のミートチョッパー(挽肉器)に入れてハンドルを回せば誰でも簡単に柔らかな挽肉
にできるということ。ミートチョッパーは金と土の生活魔法を持つ人が協力して鋳造して作ってもらいたいこと。
ミートチョッパーの材料費の鉄は村費から捻出してくれるよう検討してほしいと伝えた。
チューラットの捕獲器の金属費用も同様だ。
土魔法から作れる簡単な罠も教えておいた。
駆除したチューラットの骨や皮も堆肥としてこれも再利用できることも伝えた。
シスターサリーにはこっそり俺調合の香草等をブランドしたチューラットハンバーグ専用塩をプレゼントしておいた。
▼
「じゃあときどき遊びに来ますねー」
「アレク君本当にありがとうねぇ」
ポンコーさんをはじめ、のんのん村の若手農家グループのみんなが見送ってくれる。
「「「ありがとー!いつでも遊びに来いよー」」」
のんのん村のみんなからも歓声が上がる。
農作物を脅かす獣害チューラットの駆除の見通しが立った。
アレクの献身が身を結んだ。
ノッカ村。
通称のんのん村。
誰もがますますのんのんする契機だった。
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