アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

050 卒業

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畠改良の成功からさらに発展することとなった俺たちのデニーホッパー村。
発展の原動力は元々やる気のあった村民だからこそだ。
畠の土壌改良に続き、魔獣などの外敵侵入に備えて村のまわりを塀で囲った。大人の背丈を超える高めの塀でだ。
この高さならば魔獣だけでなく、騎馬で来る大規模な盗賊団でさえ侵入に時間を要するだろう。
村への出入口には東西の2箇所に門を構えた。防犯のためもあり、夜間は中から閉じられる仕様だ。
治安、防犯といえば、父さんやニャンタおじさんを中心に自警団も作られるようだ。

村唯一の商店サンデー商会デニーホッパー村店(俺はこっそり百貨店と呼んでいる)は盛況だ。元々お金も無い貧しい俺たちデニーホッパー村民だったが、これまではそのお金でさえ使う場所がなかった。
何せ今まで物を買うことといえば教会バザーの魔獣肉串屋台ぐらいだったから。
サンデー商会大人気の商品は酒だ。ワインやウイスキーもある。酒といえば芋から作る自家製酒くらいしかなかったから、領都から仕入れる常温の樽詰エールでさえも大人気だ。
俺は前世を含めてお酒の味は分からない。それでもエールが美味しくないビールだということも、生温いエールよりもキンキンに冷えたビールが旨いだろうということくらいはわかる。
これはいずれ旨いビールを造って大人たちを喜ばせなきゃな。

エールの予想以上の人気の高さにサンデー商会は百貨店に隣接して食堂も始めるらしい。村民のご用達の居酒屋になるんだろうな。
店の雇われ店長のシルカさんは獣人とのハーフだ。細身で明るい美人さんだ。アンナと同じ山猫獣人だという。ニャンタおじさんと同郷で後輩だというから世の中は狭いものだ。
村に住み込みで店を営んでいるから、あっという間に村のみんなとも顔なじみになった。明るく裏表のない性格はみんなからも好かれている。

「アルス君おはよーっす。何か売るものはないっすか?」

「何かあったら持ってくるねー」

「待ってるっよー」

どこから聞いたんだか、シルカさんは俺と会うたびにこんなことを言う。何かあればシルカさんに相談してみようかとも思うけど俺ただの5歳児だからね。

村の畠は順調に改良できている。
次に俺は村の特産候補として畜産と果樹栽培を計画している。畜産はもちろん牛、豚、鶏だ。果樹はブード(葡萄)とリンゴー(林檎)の栽培。この世界では畜産も果樹栽培のどちらも比較的容易だからだ。俺はこれらをみんなの出資による村営を計画している。
これから村長のチャンおじさんに相談して、シルカさんに牛や豚、ブードとリンゴーの苗木を注文しなきゃ。 
収穫(養育)した農作物(畜産物)はサンディー商店の母体のミカサ商会が買取ってくれる。窓口はシルカさんだから安心だ。
つい昨年までは、自分たちが生きていくのに必要な食糧のみを欲していたんだけど‥。
少ないとはいえ次回の収穫シーズンからは現金収入も望める。

村の畠の土壌は年を経るごとに豊沃になっていくだろう。デニーホッパー村の未来は明るい。





年も改まった。
あとしばらくで前期幼年学校(教会学校)も卒業となる。俺の次の目標は、領都サウザニアでの後期幼年学校(教会学校)に通うことだ。
師匠とシスターナターシャに相談するとともに、領都のモンデール神父様にも手紙を書いて相談しなければならない。
あれ以来会っていないが、弟シリウス、継母オリビア、家宰アダムは元気だろうか。俺が生きていると知ったらどう思うだろうか。彼らが教会に来ることはないだろうから会うことは無さそうだが、会えばどうなるのか正直怖い。
タマは元気だろうか。
爺も元気だろうか。
タマ、爺にはとても会いたい。
薬師のルキアさんにも会ってお礼が言いたい。

前期幼年学校(教会学校)を卒業したからといってやることは変わらない。領都サウザニアの教会学校へも家から通うし。
有効な長距離移動は突貫の連続使用だけだと思っていたが、風魔法ブーストの自分自身がけが有効だとわかった。突貫とブーストの併用で家から領都の教会学校までは2時間くらいで着けるようになった(ちょっぴり疲れるけど)これから3年間通えばさらに短縮できるだろう。
村の改良で、土魔法を筆頭に多くの生活魔法を連日発現していたおかげで、生活魔法の規模も精度も当初からは格段に進化をした。これも村のおかげだ。


俺は6歳になった。

アレックス・ヴィンサンダーの長子ショーン・ヴィンサンダー改め、デニーホッパー村 農民ヨゼフとマリアの長子アレン6歳だ。
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