アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

048 縁繋ぎ

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「ディル‥お前との付き合いはもう40年を超えたな」

「ああ。なんだ藪から棒に?」

「お互い歳も歳じゃ。お前も私もいつ隠居しても不思議じゃない」

「そうじゃの」

「お前ももう自分自身の欲はなかろう。あるのは後を託す後進への道繋ぎぐらいじゃろ?」

「ああ」

「私も孫娘のサンデーに期待をかけておる。あの子は息子よりも商売の才があるからの」

「そうかい。かわいいサンデーちゃんはお主が言うほどに商才があるように成長したか」

「ああ。あの子はいずれ私を超えるよ。で、ディル、そのデニーホッパー村の4歳の子ども。何者なんじゃ?」

ディル神父がニヤッと笑って言った。

「何者も何もない、ただの4歳の子どもじゃよ。そしてわしの最後の剣の弟子でもある。ついでに言うならば、モンデール神父の愛弟子であり、シスターナターシャのかわいい教え子でもある」

「なにー!」

「王国不断の刃とまで謳われたお主の最後の弟子であり、鷹の爪不倒の盾モンデールの愛弟子且つ賢者サイラスの娘、知恵のナターシャの教え子とな!」

「そうじゃよ」

「意味がわからん!お主が見込んだというその子が最後の剣の弟子という意味は判る。よほど剣の才があるんじゃろう。モンデールがそこらの王国騎士より腕がたつのも判る。ナターシャも下手な騎士よりも上だということもな。じゃがモンデールもナターシャも武よりは魔力の才のほうがさらにあろうに」

「その通り、ミカサの言う通りじゃよ。
アレクは4歳じゃが、もう火、水、風、土、金の5つの生活魔法をすべて発現できるよ」

「ディル、私を謀るか!」

頭を振るディル神父。

「まさか‥」

「そのまさかじゃよ。ただアレクは決して神童などではない。ふつうの子どもじゃよ。ただあの子には非凡な才がある。努力という名の才がな。
あの子は決して諦めない。自身がやると決めたことはできるまで人の何倍も何十倍も努力をする。そして心根も優しい子じゃよ」

「そこまでお前が褒めるか!それほどの子か‥」

しばらくの沈黙のあと。

「アレク君といったか。その子はいったい‥」

「わしの終生の友ミカサだけには言っておく。アレクは‥‥‥」


アレクの預かり知らぬところで。
モンデール神父から発した縁(えにし)という細い糸は紡がれていく。
こうした伏線を知らず、デニーホッパー村にミカサ商会の出先商店が開業した。
サンデー商会。
ミカサ商会商会長最愛の孫サンデーの商店である。
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