アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

045 開拓村の改良(前)

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開拓村デニーホッパー村は開村からまだ4年、5年という、住民と同じく若い新興村だ。
魔獣でさえも少ない荒れた土地だ。
石だらけの痩せた土地は収穫量も乏しい。70戸足らずの村民は僅かばかりに収穫できる芋や麦、雑穀と森の木の実や野の獣を糧に生命を繋いでいる。
ただ希望はある。
開拓村に新たな人生を求める村民ばかりなので教会を中心に皆が団結しているからである。誰もが前向きに生きていることは明るい材料だ。
また開墾当初の10年間は免税という領の決まりはデニーホッパー村の救いだ。



この村の畠を改良すること。
俺が考えたその最初のモデルケースが俺の家とジャン、アンナの家の畠だ。
改良に先立って、俺はシスターナターシャから農業についての多くの本を借りて読み漁り質問しまくった。さらに農業に明るい村民にいろいろ教えてもらったり、父さんにも現在課題の問題点を聞きまくった。

こうして畠の改良案ができた。

師匠とシスターナターシャには今後の対外的な交渉や相談役をお願いした。

教会学校 子どもの頭脳とも言えるシャーリーにも協力を頼んだ。シャーリーは快く引き受けてくれた。
シャーリーは改良案全体の記録もとってくれる。成功も失敗も含めて。その数字がこれからの明らかな糧となる。

教室の仲間にも日々の報告をして必要なときの手助けもお願いした。
みんなが協力してくれる。

「バザーのときみたいで楽しい!」

アンナが言った。

「「「ああ(そうだね!)」」」

みんなの心からの賛同がうれしい。


まずは荒れた土壌の改良だ。石や岩は取り除けばよい。

「「アレク、いいかー?」」

「いいよー」

「「せーの!」」

土魔法が発現できるアールとジョエルと俺の3人で石や岩を砕いたり取り除いた。
これで畠が石だらけではなくなった。
次は土の質だ。家の畠は村の多くの畠と同じで水はけが悪く粘土質の土地だ。これをシャーリーと俺の水魔法で粘土質の土を軟らかくしつつ、アールとジョエルの土魔法で水はけのよい土に変えていった。

「アレクいくよー!」

「いいよシャーリー」

「アール、ジョエルもいいかー?」

「「いーよー」」

うん、空気も含んでやわらかい土になってきた。
肥料も大切だ。痩せた土地は堆肥を与えて豊かにすればよい。

「アレク、いくよー」

「いいよー」

ベンの風魔法の力を借りて森の枯葉を集めた。
堆肥作りには時間がかかる。
痩せた土壌を豊かにするのにカルシウムやリン酸も必須だ。
これは魔獣や獣の骨を燃やしたものや伐採した木を燃やして作る草木灰から用意した。

「アレクー骨ここに捨てていくよー」

「OK!ありがとー」

みんなには食事で残った獣の骨や釜の灰などが溜まったら持ってきてもらっている。
個人では少しの量でもみんなの分を集めたらそれなりの量になってきている。

「ジョエルー俺もうだめー交代してくれ。はーはー」

「アレクー僕もダメだー交代してくれー。ぜーぜー」

「アールぼくも交代してくれー。ぜーはー」

水は川から引くことも考えたがまずは各家の畠に井戸を掘った。アールとジョエルと俺が順番に穴を掘り進めた。これは相当に疲れたがなんとか水の層までたどり着いた。
これまで天候頼りだったり村の中央にしかない共用の井戸から、個人宅に井戸ができたわけだ。水やりも以前より格段に楽になった。

堆肥はやはり長い目では家畜の糞だろう。
現在村に家畜はいない。
牛、豚、羊、鶏のような動物。飼いやすくおとなしい獣がほしいのでニャンタおじさんとも相談中だ。
いい獣がいなければ神父様やシスターナターシャにお願いして行商人に依頼をだそう。
近い将来、牛や豚や鶏が飼えたらいいな。

害獣と魔獣対策。
村に多いチューラットやアルマジローはバザーの屋台でその肉が肉団子(つくね)として美味しいことが村のみんなに周知された。
これからは積極的な駆除も進むだろう。

魔獣対策には、すでに家の四方を土塀で囲ってある。今後は森に面した各家のまわりも含めて、村全体を高くした土塀で囲む予定だ。
魔獣も怖いけど、人間の盗賊団も怖いからね。
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