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第1章 転生
013 葬儀(後)
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13 第1部転生編
第1章辺境伯の子編
モンデール神父様の説法のあと。
家族を代表して挨拶が行われた。
それに先立ち、家宰のアダムが羊皮紙を広げ参列者に向けて読み上げた。
「お館様のお言葉を申し上げます。
『アレックス・ヴィンサンダー北方辺境伯の名に於いて、ヴィンサンダー家は次男シリウス・ヴィンサンダーが継ぐ』
よってヴィンサンダー家の家宰わたくしアダムはアレックス・ヴィンサンダー様のお世継ぎシリウス・ヴィンサンダー様をお館様と変わらずお支え致します」
続いて継母のオリビアが参列者に向けて話した。
「本日は北方辺境伯アレックス・ヴィンサンダーの葬儀にお越しいただきありがとうございます。夫アレックス・ヴィンサンダーは突然女神様に召されましたが、最後に道筋を遺してくれました。わがヴィンサンダー辺境伯家はシリウス・ヴィンサンダーが跡を継ぎます。息子シリウス・ヴィンサンダーに変わらぬご支援をお願いします」
弟のシリウスが最後に言った。
「僕がヴィンサンダー家の2代目辺境伯です。父上、天より僕と母上を見守りください」
俺は違和感を感じ得なかった。
家宰のアダムは父上のことをヴィンサンダー辺境伯と呼んだ。
継母のオリビアもまた父上を辺境伯と呼んだ。
弟のシリウスも同じく辺境伯と。
でも俺は知っている。父上はこの北の領土を辺境と呼ぶことが嫌いだったことを。
辺境伯と人から呼ばれることも嫌いだった。
なのに。
家宰のアダムも継母のオリビアも、弟のシリウスでさえも父上とこの北の領土を辺境と呼んだ。
父上のことを誰もわかっていない!
長々と茶番劇に付き合わされた気がする。
かといって、この場で異議を唱える勇気もなにもない臆病な俺…。
葬儀の最後。
別れの祭壇に火がつけられた。
祭壇の下部廻りを赤く染めた炎はみるみる祭壇全体を覆う。
たちまちに父上は炎に包まれた。
曇天に向けゆっくりと上がっていく白煙。
ぼーっと白煙の行方を見上げていた俺。
(父上は母上の元に帰るのかなぁ。
いいなぁ。
俺も連れて行ってくれないかなぁ)
立ち上る白煙を見上げながら、涙はとめどなく溢れた。
第1章辺境伯の子編
モンデール神父様の説法のあと。
家族を代表して挨拶が行われた。
それに先立ち、家宰のアダムが羊皮紙を広げ参列者に向けて読み上げた。
「お館様のお言葉を申し上げます。
『アレックス・ヴィンサンダー北方辺境伯の名に於いて、ヴィンサンダー家は次男シリウス・ヴィンサンダーが継ぐ』
よってヴィンサンダー家の家宰わたくしアダムはアレックス・ヴィンサンダー様のお世継ぎシリウス・ヴィンサンダー様をお館様と変わらずお支え致します」
続いて継母のオリビアが参列者に向けて話した。
「本日は北方辺境伯アレックス・ヴィンサンダーの葬儀にお越しいただきありがとうございます。夫アレックス・ヴィンサンダーは突然女神様に召されましたが、最後に道筋を遺してくれました。わがヴィンサンダー辺境伯家はシリウス・ヴィンサンダーが跡を継ぎます。息子シリウス・ヴィンサンダーに変わらぬご支援をお願いします」
弟のシリウスが最後に言った。
「僕がヴィンサンダー家の2代目辺境伯です。父上、天より僕と母上を見守りください」
俺は違和感を感じ得なかった。
家宰のアダムは父上のことをヴィンサンダー辺境伯と呼んだ。
継母のオリビアもまた父上を辺境伯と呼んだ。
弟のシリウスも同じく辺境伯と。
でも俺は知っている。父上はこの北の領土を辺境と呼ぶことが嫌いだったことを。
辺境伯と人から呼ばれることも嫌いだった。
なのに。
家宰のアダムも継母のオリビアも、弟のシリウスでさえも父上とこの北の領土を辺境と呼んだ。
父上のことを誰もわかっていない!
長々と茶番劇に付き合わされた気がする。
かといって、この場で異議を唱える勇気もなにもない臆病な俺…。
葬儀の最後。
別れの祭壇に火がつけられた。
祭壇の下部廻りを赤く染めた炎はみるみる祭壇全体を覆う。
たちまちに父上は炎に包まれた。
曇天に向けゆっくりと上がっていく白煙。
ぼーっと白煙の行方を見上げていた俺。
(父上は母上の元に帰るのかなぁ。
いいなぁ。
俺も連れて行ってくれないかなぁ)
立ち上る白煙を見上げながら、涙はとめどなく溢れた。
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