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衝撃的な出会い②

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初登校のオリエンテーションとは、クラス皆の顔合わせのようなものである。担任の先生から始まり、まずは簡単な自己紹介をひとりひとりが済ませる。

こういうのが苦手な僕は、自分の番が回ってくるまで何を話そうかしきりに考えていて、終わった後はほっとした気持ちでボケーっとしていた。

ソイツも自己紹介をしていたはずだが、サッカー部ということ以外、頭にはほとんど残っていない。




自己紹介の後は、各書類を記入。その時に冒頭の事件が起きる。


ソイツは身体ごと僕の方を向いて座りながら、静まった教室内で言った。


「おい、女みてぇな字、書いてんじゃねぇよ」


周りの「何?」というざわめきもあり、僕はとても恥ずかしくなった。


「いや、、そんなことないです、、」

そうとしかしか言えなかった。
ソイツの顔すら見ずに下を向いたまま。



ソイツはその後もこちらを向いたまま「ほら、女みてぇな字じゃねぇかよ」と書類に触れながら指を指す。


自慢ではないが、僕は「字が綺麗」と大抵の人に言われてきた。だが「女みたいな字」というのは確実に悪意を感じたし、何より初めて言われたことだった。しかも初対面の人に言われたことなんて尚更ない。


「やめてもらえますか?」


僕はソイツの手を払い、僕は黙々と記入を続けた。

ソイツは「おい、無視すんじゃねぇよ」と何度か話しかけてきたが、ひたすら無視していると大人しくなって話しかけてこなくなった。



勝った…



その後記入用紙は後ろから回収され、皆がひととき解放されるも、ソイツはまだこちらを向いて何だかニヤニヤしている。



友達にでもなってほしいんだろうか…



僕はソイツの方を見ることもなく相手にしないことを決め込み、お次は委員決め。お決まりの美化委員や清掃委員などを決めていくのだが、何より先に「学級委員を誰かやりたい人?」と担任。


初めて顔を合わせたばかりの中で学級委員を立候補するなんて「私は権力や栄誉を欲しています!」と宣言するようなものだ。

誰も立候補しないまま数分が経ち、担任が一言「誰も立候補しないならこっちから指名制にするぞ~」と言った瞬間だった。



「はーい!僕は仁科くんがいいと思いまーす!」





え...なんで?


その余計な一言を発したのは、紛れもないソイツだった。

「おぉ、そうか!推薦もありだな!どうだ、仁科やるか?」
「え、いや、全然やりたくないんですが......やります!!!」





つい、やると言ってしまった...

どうせ誰も立候補をせず、このロシアンルーレットみたいな時間が過ぎていくのなら、もういっそのこと自分がやると言って終わらせた方がいいのかも知れないと思った。

いや、そう思ってしまったのも、ソイツが訳の分からない一言を発したことに対して怒りを覚え感情的になったからだろう。






コイツ、、何故こんなに僕に絡んでくる?

学級委員が無事に決まったかと思いきや、二人一組だったためもう1人を誰にするかをまた決めなければならなかった。


「先生~。もう1人は星名くんにして欲しいんですけどどうですかー?」
「はぁ??何言ってんだよ!!」



勝った…人を勝手に吊し上げたままに出来ると思うなよ



ところが結果としては惨敗...サッカー部で忙しいから厳しいだろうということで流れ、もう1人の学級委員はメガネの川原くんになった...

こうして僕ら新学級委員の主導で、誰が何委員をやるかを黒板の前で決めていくことになり、ソイツは特に自分が委員になることもなく、ニヤニヤしながら終始大人しくしていた。


くそ、人の不幸を喜ぶドSめ。一体僕が何をした?
僕の中で、コイツの印象は最悪のどん底だった。




かくして一通りが終わり、その日は終了という流れになった頃。


教室の前のドアの所に青いサッカー部のカバンを持った、色黒イケメンが立っていた。やや長めの髪の毛がサラサラで、僕はしばし目を奪われた。めちゃめちゃカッコいいじゃないか...


彼、大野くんは他のクラスの生徒で、青いカバンを持っている通りサッカー部である。どうやら大野くんはアイツを迎えに来たらしい。

特待生は僕ら一般の生徒よりもずっと先に顔合わせをし、練習などを通して共に過ごしてきたのだろう。入学したばかりの時期は特に絆が深まりそうだ。


大野くんが「おい、太聖!練習行こうぜ~!」呼び、アイツは大野くんの所へ行った。
こんなイケメンが迎えに来てしまったら僕は完全に勘違いするなと考えながら、僕も部活に行くので横切ってドアを出ようとした。



「おい、聞いてくれよ~。うちの学級委員、女子なんだぜ~」



また意味不明な発言をされたどころか、髪サラサライケメンに対してそういう紹介の仕方をされるほど腹が立つものはなく。


「女子じゃねぇし」と言い返しそうだったが、イケメンの手前「女子じゃないよ」とニコッと返し、ソイツは「女子学級委員じゃねぇかよ~」と言っていたが、僕は無視して部活の練習へと向かった。

胸くそ悪い、濃い1日。
初めて会ってこんなことある??

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