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ああ神様!2(合格願掛けツアー)
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最終保護者面談が終わると、あとは受験当日まで真剣勝負が続く。その一方で、息抜き、気分転換が必要となってくる。宮原中学校三年二組でも現実逃避の計画が練られていた。
「剛、お前勉強の方順調か?」
「拓也、タクヤ俺の成績知ってるだろ。このままじゃ危ないよ」
「俺たち落ちこぼれにはつらいよなあ」
「分かんないとこ人に聞けって言うけどかっこ悪くて聞けないよ。それよりもどこ聞けばいいかさえ分かんない」
すると、
「ねえ頭にくるわね」
と言って割り込んできたのは政美だった。彼女はクラス一の頭脳の持ち主だ。
「えっ政美に勉強の悩みってあんの?」
「当たり前じゃない。おおありよ。私だって毎日が不安よ」
「へーそうなんだ。頭のいい人にも悩みがあるんだね」
「そこでだけど三人で願掛け行かない?」
「願掛け?」
「そう隣町の山吹山の佐野助神社へ行くの。それも夜間に行くの。オールナイトで歩くのよ。何かに挑戦すれば神様も願い叶をえてくれるはずよ」
「へえ、おもしろうそうだな。でも俺ん家夜間外出なんて許してくれないよ」
「もちろん家もよ。だから親には内緒で出る。いいわね明日の夜10時に校門前。」
話がトントン拍子で進み、明日の夜決行となった。
「拓也、拓也。あれ返事がないわね、もう寝たのかしら?」
危うく母親にバレそうになったが、どうにか脱出成功。急いで校門へ向かうと、剛と政美はすでに待っていた。
「拓也遅いぞ。怖じ気づいたのかと思った」
「なわけないだろう、昨日は興奮して寝られなかったくらいだぜ」
これはまずい。今から夜通しで歩くのに体力がもつのだろうか。
「現在の時刻は夜10時30分。佐野助神社までは約12kmだから1kmを30分のペースで行けば、朝の5時前には着く予定。神社は山頂にあるから御来光を拝むの」
出発だ オー
この三人は、幼稚園の頃からの幼なじみで、男女を超えて仲のよい親友。おそらく高校へ進学したら離ればなれになることは、みんなが気づいる。だからこそ、何か思い出を作りたかった。
佐野助神社までは、直線距離で12kmだが、途中気を遣う箇所がいくつかある。その一つが、やぶの中を通ること。日中でも暗闇なのに、夜間はほぼ先が見えなくなる。そこで、三人は離れまいとそれぞれを体をロープで結び合いうと、スマホの電灯だけでは心許ない明かりだ。そのとき、
「きゃっ、何かいる」
と、政美の足が止まった。でもただの木っ端を踏んだだけなのに。
「しょうがないなあ、よし三人で手をつないで行こう」
剛の提案に、政美は少し照れたが、怖さがそれを勝った。どこか恥ずかしげな気持ちと、なぜか懐かしささえが感じられる。
「こうやってみんなで手をつなぐのは幼稚園の遠足のとき以来ね」
もう一つの難所が沢登り。他に舗装された道はあるが、そこだと時間がかかってしまい、肝心な御来光に間に合わない。でもそのルートだと、一歩間違うと危険な目に遭い、命を落としかねない。
「今3時、沢沿いに上らないと間に合わないわ」
「それなら挑戦あるのみ!」
三人は意を決して、沢登りを始めた。水かさは多くなかったが、真冬の清水だけに手が凍りつく。そのため何度も滑りかけてしまった。
冷たい、痛い
それでもようやく上り詰めると、全身びしょ濡れになってしまった。
あとは神社まで一直線。同時に闇も白み始め、きれいな朝焼けで次第にオレンジ色に包まれてきた。それはまさに神秘的で、荘厳という言葉がぴったり当てはまる。
見て、神社よ
それまでの疲れを忘れたかのごとく駆けていく。そして御堂に向かい合格祈願。時間にしてわずか数分。そのために数時間も歩き続けてきた。
「ねえ、拓也、剛、何お願いしたの?」
「政美こそ何を。でも言っちゃうと御利益なくなるか、ハハハ」
三人が神様にお願いしている側を、いく台ものパトカーが通り過ぎていく。
「剛、お前勉強の方順調か?」
「拓也、タクヤ俺の成績知ってるだろ。このままじゃ危ないよ」
「俺たち落ちこぼれにはつらいよなあ」
「分かんないとこ人に聞けって言うけどかっこ悪くて聞けないよ。それよりもどこ聞けばいいかさえ分かんない」
すると、
「ねえ頭にくるわね」
と言って割り込んできたのは政美だった。彼女はクラス一の頭脳の持ち主だ。
「えっ政美に勉強の悩みってあんの?」
「当たり前じゃない。おおありよ。私だって毎日が不安よ」
「へーそうなんだ。頭のいい人にも悩みがあるんだね」
「そこでだけど三人で願掛け行かない?」
「願掛け?」
「そう隣町の山吹山の佐野助神社へ行くの。それも夜間に行くの。オールナイトで歩くのよ。何かに挑戦すれば神様も願い叶をえてくれるはずよ」
「へえ、おもしろうそうだな。でも俺ん家夜間外出なんて許してくれないよ」
「もちろん家もよ。だから親には内緒で出る。いいわね明日の夜10時に校門前。」
話がトントン拍子で進み、明日の夜決行となった。
「拓也、拓也。あれ返事がないわね、もう寝たのかしら?」
危うく母親にバレそうになったが、どうにか脱出成功。急いで校門へ向かうと、剛と政美はすでに待っていた。
「拓也遅いぞ。怖じ気づいたのかと思った」
「なわけないだろう、昨日は興奮して寝られなかったくらいだぜ」
これはまずい。今から夜通しで歩くのに体力がもつのだろうか。
「現在の時刻は夜10時30分。佐野助神社までは約12kmだから1kmを30分のペースで行けば、朝の5時前には着く予定。神社は山頂にあるから御来光を拝むの」
出発だ オー
この三人は、幼稚園の頃からの幼なじみで、男女を超えて仲のよい親友。おそらく高校へ進学したら離ればなれになることは、みんなが気づいる。だからこそ、何か思い出を作りたかった。
佐野助神社までは、直線距離で12kmだが、途中気を遣う箇所がいくつかある。その一つが、やぶの中を通ること。日中でも暗闇なのに、夜間はほぼ先が見えなくなる。そこで、三人は離れまいとそれぞれを体をロープで結び合いうと、スマホの電灯だけでは心許ない明かりだ。そのとき、
「きゃっ、何かいる」
と、政美の足が止まった。でもただの木っ端を踏んだだけなのに。
「しょうがないなあ、よし三人で手をつないで行こう」
剛の提案に、政美は少し照れたが、怖さがそれを勝った。どこか恥ずかしげな気持ちと、なぜか懐かしささえが感じられる。
「こうやってみんなで手をつなぐのは幼稚園の遠足のとき以来ね」
もう一つの難所が沢登り。他に舗装された道はあるが、そこだと時間がかかってしまい、肝心な御来光に間に合わない。でもそのルートだと、一歩間違うと危険な目に遭い、命を落としかねない。
「今3時、沢沿いに上らないと間に合わないわ」
「それなら挑戦あるのみ!」
三人は意を決して、沢登りを始めた。水かさは多くなかったが、真冬の清水だけに手が凍りつく。そのため何度も滑りかけてしまった。
冷たい、痛い
それでもようやく上り詰めると、全身びしょ濡れになってしまった。
あとは神社まで一直線。同時に闇も白み始め、きれいな朝焼けで次第にオレンジ色に包まれてきた。それはまさに神秘的で、荘厳という言葉がぴったり当てはまる。
見て、神社よ
それまでの疲れを忘れたかのごとく駆けていく。そして御堂に向かい合格祈願。時間にしてわずか数分。そのために数時間も歩き続けてきた。
「ねえ、拓也、剛、何お願いしたの?」
「政美こそ何を。でも言っちゃうと御利益なくなるか、ハハハ」
三人が神様にお願いしている側を、いく台ものパトカーが通り過ぎていく。
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