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仮面曰く、面白い依頼について

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   幸太郎と別れ、大学の校門へ行くと白い普通自動車が停まっている。真宮家はもっと見栄えが良い物を用意したかったらしいが、悪目立ちしない車種がいいと、実際に運転する曜一の一存でありふれた車になった。
 流石は曜一だ。中学校からリムジンで移動していると分かるが、あれはいけない。余計な反感を買うし、友達も出来ない。
 運転席から曜一が降りて甲斐甲斐しく世話をする前に、素早く助手席側へと向かった魁利はドアを自分で開けると、後ろの席に荷物を投げ、ボスン、と席に収まった。

「シートベルトを締めて」

「はいはい」

 魁利がベルトを装着すると、ゆっくりと車が発進する。
 
「さっきの彼が、幸太郎君か?」

「ああ、うん。ちょっとチャラいけど、良い奴なんだ」

「……一般人に気を許しすぎるのも、どうかと思うぞ。いつ、ボロが出るとも限らない」

 こちらを咎めるやけに棘のある言葉が、癇に障った。

「そんな言い方ないだろう。俺の交友関係にまで口を出せって、親父に言われてるのかよ。へえ、分家の次期当主様ってのは随分と暇なんだな。男友達でこれなら、女の時はいつデートだとかキスしたとか、わざわざ聞くわけ? つか、俺の事がバレたって、分家の幻術で頭ン中いじくって、記憶を都合よく作りかえちまうだけだろう。なあ、そうだろう仮面野郎!」

「お坊ちゃんにそれが必要なら、そうするだろうな、私は」

 肯定をたぶんに含んだ解答は、どこまでも真宮曜一のもので、魁利は舌打ちをした。ああ、くそ。もっと鬼仮面変態野郎とか、口汚く言ってやれば良かった。

「冗談はさておき、仕事の話をしてもいいか?」

 彼のそれには反応せず、拗ねたように魁利は流れていく窓の外の風景を眺める。彼はいつもの子供の癇癪と気にも留めず、先を続けた。

「詳細は家に戻ってから。いつもの通り、政府専用の式神が届いている」

 へえ、と魁利は相槌を打つ。国にはお抱えの異能者が幾人かいるが、それ以外は魁利達のような家柄の者に委嘱し、妖怪や悪霊の退治を執行している。その内容を伝えるのは、今時の電子的なものではなく、昔ながらの式神だ。こちらにあらかじめ割り振られている合言葉を言うと、その式神から依頼内容が解放される仕組みだ。

「で? また何かと追いかけっこでもしろって? あーあ、面倒くせぇ」

「それが、ちょっと変わった内容なんだ。――――人探しならぬ、人魚探しをしろ、だそうだ」

「はあ? 人魚?」

 思わぬ言葉に、魁利は弾かれたように運転中の曜一へと顔を向けた。彼の横顔は、そう反応すると思っていたと言わんばかりに、嬉々としていた。
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