上 下
27 / 47

ループ、26

しおりを挟む
 母様は、父様が宰相に就いてから代わりに領地を治めていた。
 当然、生活拠点は領地だ。
 広大な領地は各おさ達に任せきりでは運営できないので母様が各地を飛び回っている。

 中々会えず、会えても年に数回が限度。
 本邸に帰ってきて、ゆっくりして貰いたいと思っている。
 けど、今日の様に捕まって撫でくりまわされ夜になるまで離してもらえない。
 御免なさい、反面私も嬉しいです。

「で?私の可愛いリオンに不埒ふらちな真似をしたカルヴァイスバカは勿論去勢するんだろうね?」

 母様の帰宅に合わせて帰ってきていた父様が、その言葉に青褪める。

「去勢・・・」

「旦那様?何を青褪める必要があるのかな?貴方がする訳でもないのに」

「いや。未遂だし自分の意思ではなかった。しかも、王家の血を残せぬ様にするには・・・」

「後継者が1人いれば、血統が残るのでは?」

「母様・・・」

「怖かっただろう?母様が本邸ここにいる間側に居てあげるから、安心なさい」

 心強い味方が側にいるのはいいなぁ。
 ぎゅっと抱き着いて母様の匂いを堪能する。

「リチャード殿下のの後継とはいえ、仮にも王族。言葉を控えなさい」

「おや?こんな時とばかりに宰相職が出るんだね。父親はどこへ行ったのやら」

 私はギュウギュウ抱き締められ、父様には毒舌攻撃。

「リチャード殿下が平穏無事であるなら、要らないでしょう。特にリオンを大事にしない輩は」

「リヴァイ」

「とにかく、私は許さないよ。このまま謹慎だけで済ます王族は勿論、貴方もね・・・旦那様フレン

 父様に厳しい目を向けて母様は私を連れ去る様に自身の部屋へと歩き出した。




 茶会の度、ユーリへの愚痴が酷くなる第1王子。
 将来貴族の茶会や夜会に、何故かユーリがおり、到着と同時に探し出されてまとわり付かれるのだとか。
 仕事関連の事もあるので一緒に行動は出来ないと諭しても、いつの間にか側にいるんだって。

「いっそ、リオンを婚約者だと言っては駄目だろうか」

「駄目です。やめて下さい」

 巻き込み事故、反対‼︎

「本気で婚約者にしたいなぁ・・・」

 聞かなかった事にしよう。

「父上、男爵家に勅命を出してください」

「どうにもならんか・・・」

「なりませんね。私のめいではその場凌ぎです」

「解った。勅命を出そう」

「有難う御座います」

 心からホッとした顔をしている。
 妃でもなければ護衛でも無く、侍従でもないユーリがウロチョロしてたら妙な噂が付き纏うからね。

「ところでリオン」

「はい」

「リヴァイが帰ってきているとか?」

 国王の問いに頷く。
 それを聞いた途端、国王の麗しい顔が苦渋に歪む。

「あ~・・・はい。昨日帰ってきましたね」

「それはマズイ・・・」

 ん?何がマズイ?

「国・・・」

「何がマズイのでしょう?」

 心配になって掛けた声に被せてよく知る美声が届く。
 振り返ると、仁王立ちした母様リヴァイが父様を従えて立っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

賢者となって逆行したら「稀代のたらし」だと言われるようになりました。

かるぼん
BL
******************** ヴィンセント・ウィンバークの最悪の人生はやはり最悪の形で終わりを迎えた。 監禁され、牢獄の中で誰にも看取られず、ひとり悲しくこの生を終える。 もう一度、やり直せたなら… そう思いながら遠のく意識に身をゆだね…… 気が付くと「最悪」の始まりだった子ども時代に逆行していた。 逆行したヴィンセントは今回こそ、後悔のない人生を送ることを固く決意し二度目となる新たな人生を歩み始めた。 自分の最悪だった人生を回収していく過程で、逆行前には得られなかった多くの大事な人と出会う。 孤独だったヴィンセントにとって、とても貴重でありがたい存在。 しかし彼らは口をそろえてこう言うのだ 「君は稀代のたらしだね。」 ほのかにBLが漂う、逆行やり直し系ファンタジー! よろしくお願い致します!! ********************

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

もう一度、貴方に出会えたなら。今度こそ、共に生きてもらえませんか。

天海みつき
BL
 何気なく母が買ってきた、安物のペットボトルの紅茶。何故か湧き上がる嫌悪感に疑問を持ちつつもグラスに注がれる琥珀色の液体を眺め、安っぽい香りに違和感を覚えて、それでも抑えきれない好奇心に負けて口に含んで人工的な甘みを感じた瞬間。大量に流れ込んできた、人ひとり分の短くも壮絶な人生の記憶に押しつぶされて意識を失うなんて、思いもしなかった――。  自作「貴方の事を心から愛していました。ありがとう。」のIFストーリー、もしも二人が生まれ変わったらという設定。平和になった世界で、戸惑う僕と、それでも僕を求める彼の出会いから手を取り合うまでの穏やかなお話。

Ωの皇妃

永峯 祥司
BL
転生者の男は皇后となる運命を背負った。しかし、その運命は「転移者」の少女によって狂い始める──一度狂った歯車は、もう止められない。

異世界召喚されたら神子の乳父になりました。もれなく国王の妃となる予定らしいです。

トモモト ヨシユキ
BL
異世界召喚されてしまい、突然、神子の乳父になることになった俺。 そんなの出るわけないじゃん! なんですと? 俺が発情しなきゃ、乳は、出ないんですと? エブリスタ、フジョッシー、ノベルアップにも掲載しています。

悪役令息の兄には全てが視えている

翡翠飾
BL
「そういえば、この間臣麗くんにお兄さんが居るって聞きました!意外です、てっきり臣麗くんは一人っ子だと思っていたので」 駄目だ、それを言っては。それを言ったら君は───。 大企業の御曹司で跡取りである美少年高校生、神水流皇麗。彼はある日、噂の編入生と自身の弟である神水流臣麗がもめているのを止めてほしいと頼まれ、そちらへ向かう。けれどそこで聞いた編入生の言葉に、酷い頭痛を覚え前世の記憶を思い出す。 そして彼は気付いた、現代学園もののファンタジー乙女ゲームに転生していた事に。そして自身の弟は悪役令息。自殺したり、家が没落したり、殺人鬼として少年院に入れられたり、父に勘当されキャラ全員を皆殺しにしたり───?!?!しかもそんな中、皇麗はことごとく死亡し臣麗の闇堕ちに体よく使われる?! 絶対死んでたまるか、臣麗も死なせないし人も殺させない。臣麗は僕の弟、だから僕の使命として彼を幸せにする。 僕の持っている予知能力で、全てを見透してみせるから───。 けれど見えてくるのは、乙女ゲームの暗い闇で?! これは人が能力を使う世界での、予知能力を持った秀才美少年のお話。

薬師は語る、その・・・

香野ジャスミン
BL
微かに香る薬草の匂い、息が乱れ、体の奥が熱くなる。人は死が近づくとこのようになるのだと、頭のどこかで理解しそのまま、身体の力は抜け、もう、なにもできなくなっていました。 目を閉じ、かすかに聞こえる兄の声、母の声、 そして多くの民の怒号。 最後に映るものが美しいものであったなら、最後に聞こえるものが、心を動かす音ならば・・・ 私の人生は幸せだったのかもしれません。※「ムーンライトノベルズ」で公開中

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。

無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。 そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。 でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。 ___________________ 異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分) わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか 現在体調不良により休止中 2021/9月20日 最新話更新 2022/12月27日

処理中です...