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ループ、19
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思いの外、あれからユーリは現れなかった。
余りにも静かなのがかえって不気味だ。
第1王子のお言葉に甘えて東家を使わせてもらっている。
なんでも、周りを囲んでいる花壇は見えない様に棘の鋭い薔薇が植えられているらしく、刺さるとかなり痛いのだとか。
そんなものがある所を好んで通る者は居ないはずだから安心して使えばいいと言われた。
一箇所しかない入り口は護衛の方が護ってくれてるし、周りは薔薇の棘。
ゆっくりできるかな?
「はぁ。ここで癒されても、教室では好奇の目線が煩すぎる」
私の平穏は何処へやら。がっつり王家に関わられてますよ。
前回は第2王子と共にいる事で羨望の眼差しと嫉妬の眼差しに晒されていた。
そう思うと、好奇の視線の方がいいのか。
「リオン様‼︎」
小さいが、護衛騎士が慌てて叫ぶ。
「な、何?」
「例の男爵子息が学園に現れました」
「え?謹慎て解かれたんですか?」
「聞いておりません。恐らく、また禁を破ったのかと」
王命を何だと思ってるんだろうか。
それとも、破った所でお咎め無しだとでも言うのだろうか。
「教室に帰った方がいいですか?」
「その方が良いかと」
「では教室に帰ります」
スクっと立ち上がり、ユーリと遭遇しない様慎重に教室へ向かった。
いつも、ギリギリの時間に帰ってくる私が早めに教室に現れた事にクラスメイト達が騒めく。
またユーリが現れた事を告げると彼らは絶対に教室に入れないと宣言してくれた。
早く午後の授業が始まらないかと席に座っていると、廊下の方から騒動が起きた。
「何?」
「オルガスト様はこちらでお待ちください。私達が見てきます」
隣の席の子息が周りに目配せをして席を立つ。
数名を伴って外に出ると、ユーリの怒鳴り声が響いて来た。
「何で教室に入れないのさ‼︎」
「君は今謹慎中だろう?学園に来る所か、屋敷すら出てはいけないはずだよね?何故ここにいるの?」
「用事があるんだよ‼︎いいから邪魔‼︎退いて‼︎」
「行かせられないよ。学園長から君を教室に入れるなと言われてるからね。今なら、僕達からは学園長に報告しないでおくから、このまま帰って」
え?学園長から言われたの?
彼らの言葉に驚きつつ、ユーリに帰る気がないのに呆れた。
これ以上ユーリがやらかすと、学園全体に迷惑が掛かりそうなので帰る準備を始めた。
「帰ります。彼の目的は私でしょうし」
鞄を持ち上げてクラスメイトに帰る挨拶をする。
戸惑いを見せた者が大半だが止められなかったのでそのまま教室を出た。
「皆さん、有難う御座いました。本日、これで帰らせて頂きますので午後からの授業頑張ってください」
「あ!リオン様‼︎」
礼を述べ、皆の体の隙間を縫う様にこちらへ向かって来そうなユーリとは正反対に歩き出した。
立ち止まってはヤバいから。
迎えの馬車が来るまで時間が掛かりそうなので、再び東家へと足を向ける。
学園の中で一番護衛がしやすいからと言われたから。
結局帰ってからも騒動が収まらなかったらしく、学園に通う事に難色を示した私は休学届を提出した。
余りにも静かなのがかえって不気味だ。
第1王子のお言葉に甘えて東家を使わせてもらっている。
なんでも、周りを囲んでいる花壇は見えない様に棘の鋭い薔薇が植えられているらしく、刺さるとかなり痛いのだとか。
そんなものがある所を好んで通る者は居ないはずだから安心して使えばいいと言われた。
一箇所しかない入り口は護衛の方が護ってくれてるし、周りは薔薇の棘。
ゆっくりできるかな?
「はぁ。ここで癒されても、教室では好奇の目線が煩すぎる」
私の平穏は何処へやら。がっつり王家に関わられてますよ。
前回は第2王子と共にいる事で羨望の眼差しと嫉妬の眼差しに晒されていた。
そう思うと、好奇の視線の方がいいのか。
「リオン様‼︎」
小さいが、護衛騎士が慌てて叫ぶ。
「な、何?」
「例の男爵子息が学園に現れました」
「え?謹慎て解かれたんですか?」
「聞いておりません。恐らく、また禁を破ったのかと」
王命を何だと思ってるんだろうか。
それとも、破った所でお咎め無しだとでも言うのだろうか。
「教室に帰った方がいいですか?」
「その方が良いかと」
「では教室に帰ります」
スクっと立ち上がり、ユーリと遭遇しない様慎重に教室へ向かった。
いつも、ギリギリの時間に帰ってくる私が早めに教室に現れた事にクラスメイト達が騒めく。
またユーリが現れた事を告げると彼らは絶対に教室に入れないと宣言してくれた。
早く午後の授業が始まらないかと席に座っていると、廊下の方から騒動が起きた。
「何?」
「オルガスト様はこちらでお待ちください。私達が見てきます」
隣の席の子息が周りに目配せをして席を立つ。
数名を伴って外に出ると、ユーリの怒鳴り声が響いて来た。
「何で教室に入れないのさ‼︎」
「君は今謹慎中だろう?学園に来る所か、屋敷すら出てはいけないはずだよね?何故ここにいるの?」
「用事があるんだよ‼︎いいから邪魔‼︎退いて‼︎」
「行かせられないよ。学園長から君を教室に入れるなと言われてるからね。今なら、僕達からは学園長に報告しないでおくから、このまま帰って」
え?学園長から言われたの?
彼らの言葉に驚きつつ、ユーリに帰る気がないのに呆れた。
これ以上ユーリがやらかすと、学園全体に迷惑が掛かりそうなので帰る準備を始めた。
「帰ります。彼の目的は私でしょうし」
鞄を持ち上げてクラスメイトに帰る挨拶をする。
戸惑いを見せた者が大半だが止められなかったのでそのまま教室を出た。
「皆さん、有難う御座いました。本日、これで帰らせて頂きますので午後からの授業頑張ってください」
「あ!リオン様‼︎」
礼を述べ、皆の体の隙間を縫う様にこちらへ向かって来そうなユーリとは正反対に歩き出した。
立ち止まってはヤバいから。
迎えの馬車が来るまで時間が掛かりそうなので、再び東家へと足を向ける。
学園の中で一番護衛がしやすいからと言われたから。
結局帰ってからも騒動が収まらなかったらしく、学園に通う事に難色を示した私は休学届を提出した。
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