上 下
42 / 54
第3章

3

しおりを挟む
 リディア皇子の性格は、素直・・・の一言です。
 まぁ、があれば別ですが。

 留学されてから半月、殿下と共に模擬戦や勉学に励んでおられるご様子。
 その間、殿下が当家にお越しではないのでお父様が歓喜乱舞されておられますが。

 そんなある日。
 久々に殿下がお見えになられました。

「突然すまない」

「いえ。で、どうされたのです?新たな報告でも?」

 遠回しはやめろと言わんばかりにお父様が殿下に話を促して、当の殿下は苦笑されてます。

「報告と言えば報告かな?」

 あれ?本当に報告だったのですか?

「リリア・・・失礼な事考えてる?」

「い、いえ。そんな事は・・・」

「ふぅん。まぁ、いいや。取り敢えず、話をしようか」

 勝手知ったるで、先頭を切って応接室へと向かわれる殿下に私達は慌てて後を追いました。





 お茶の用意をした侍女が退室すると、懐から取り出した魔道具を設置した殿下がお父様に暫く人払いをする様にお願いされました。
 セバスチャンにその事を告げると、お父様は応接室を完全に締め切り、席に戻られました。

「起動」

 微かにヴンと音が空気を揺らします。
 防音結界ですね、この魔道具。
 それが正常に動いた証拠で、魔道具を見つめていた殿下が私達へと目線を向けられました。

「昨日、リディア皇子から話があってね」

「リディア皇子・・・帝国の第二皇子ですね。その方がどんな話を?」

「・・・協力要請だ」

「は?何の協力です?」

「ターシャ達の捕縛と魅了魔術の封印だ」

「お待ちください。なぜ、リディア皇子が我々が追っている事をご存知なのです?」

「向こうも魅了魔術を厄介としているらしく、何とかしようと調査をしている最中・・・王国こちらも調査している事に気付いたそうだ」

 帝国側に調査がバレているということでしょうか?

「気付いたのはリディア皇子だけだから、安心して欲しい。元々彼が魅了魔術の封印を考えたのは、帝国内で起こった出来事が原因だと言われた」

「どんな事です?」

「本人から説明したいとの事で、公爵家の二人に秘密裏に会ってもらえないかと打診された。どうだろう?」

「私は構いません」

「リリアローズ?」

「お父様、王国だけでは解決へと導けない可能性もあります。ましてや、ターシャ達は帝国にいます。王国の人間が帝国に行きにくいなら、帝国の人間リディア皇子のお話を聞くべきだと思います」

「私もそう思う。いくら調査に長けた者が向こうに潜入しているから、と悠長に構えている余裕はない。被害者がまた出る可能性もある。なら、リディア皇子の話を聞いてもいいんじゃないかな?」

「真実でない可能性もあります」

「さすが公爵、用心深いね。けど、大丈夫。協力するにあたり、交換条件をつけるから」

 交換条件・・・。
 殿下が仰ると、怖くなるのは何故でしょう?

「この件は既に殿下に委ねております。話を聞くだけなら当家をお使い下さって構いません」

「ありがとう。早速リディア皇子に伝えておくよ」

 そう言って殿下はサッと魔道具を解除して立ち上がられます。

魔道具これは次までここに置いていくよ。必需品だしね」

「わかりました。お預かりいたします」

「では・・・あ、そうそう。リリア」

「はい」

「これを」

 手品ですか?
 渡された花束は何もない所から出現しましたが。

「魔道具だよ。リディア皇子に頂いたものでね、仮想空間に物を収納できるそうだ。人間や動物は無理だけどこういった物を持ち運ぶ為の便利道具だ。なんだって。こうすれば、いちいちマットにリリアへのプレゼントを触らせるなんて事しなくていい」

「そ、そうですか・・・」

「容量がかなりあるらしいから、今度はもう少し大きいものでも持ってこれるね」

 いえ、これ以上の大きいものは困ります。

「じゃあ、また来るよ」

 断りの言葉を発する前に殿下は颯爽と馬車へと乗り込んでしまわれました。
 手際が良すぎます、殿下。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

【本編完結】番って便利な言葉ね

朝山みどり
恋愛
番だと言われて異世界に召喚されたわたしは、番との永遠の愛に胸躍らせたが、番は迎えに来なかった。 召喚者が持つ能力もなく。番の家も冷たかった。 しかし、能力があることが分かり、わたしは一人で生きて行こうと思った・・・・ 本編完結しましたが、ときおり番外編をあげます。 ぜひ読んで下さい。 「第17回恋愛小説大賞」 で奨励賞をいただきました。 ありがとうございます 短編から長編へ変更しました。 62話で完結しました。

王命を忘れた恋

水夏(すいか)
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

婚約者は義妹に夢中なのはわかってましたから婚約破棄ですね、私はこの国を去ります。

十条沙良
恋愛
義妹の言いなりなのは両親だけじゃないのね。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。 物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。 週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。 当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。 家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。 でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。 家族の中心は姉だから。 決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。 ………… 処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。 本編完結。 番外編数話続きます。 続編(2章) 『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。 そちらもよろしくお願いします。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

処理中です...