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第3章
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リディア皇子の性格は、素直・・・の一言です。
まぁ、裏側があれば別ですが。
留学されてから半月、殿下と共に模擬戦や勉学に励んでおられるご様子。
その間、殿下が当家にお越しではないのでお父様が歓喜乱舞されておられますが。
そんなある日。
久々に殿下がお見えになられました。
「突然すまない」
「いえ。で、どうされたのです?新たな報告でも?」
遠回しはやめろと言わんばかりにお父様が殿下に話を促して、当の殿下は苦笑されてます。
「報告と言えば報告かな?」
あれ?本当に報告だったのですか?
「リリア・・・失礼な事考えてる?」
「い、いえ。そんな事は・・・」
「ふぅん。まぁ、いいや。取り敢えず、話をしようか」
勝手知ったるで、先頭を切って応接室へと向かわれる殿下に私達は慌てて後を追いました。
お茶の用意をした侍女が退室すると、懐から取り出した魔道具を設置した殿下がお父様に暫く人払いをする様にお願いされました。
セバスチャンにその事を告げると、お父様は応接室を完全に締め切り、席に戻られました。
「起動」
微かにヴンと音が空気を揺らします。
防音結界ですね、この魔道具。
それが正常に動いた証拠で、魔道具を見つめていた殿下が私達へと目線を向けられました。
「昨日、リディア皇子から話があってね」
「リディア皇子・・・帝国の第二皇子ですね。その方がどんな話を?」
「・・・協力要請だ」
「は?何の協力です?」
「ターシャ達の捕縛と魅了魔術の封印だ」
「お待ちください。なぜ、リディア皇子が我々が追っている事をご存知なのです?」
「向こうも魅了魔術を厄介としているらしく、何とかしようと調査をしている最中・・・王国も調査している事に気付いたそうだ」
帝国側に調査がバレているということでしょうか?
「気付いたのはリディア皇子だけだから、安心して欲しい。元々彼が魅了魔術の封印を考えたのは、帝国内で起こった出来事が原因だと言われた」
「どんな事です?」
「本人から説明したいとの事で、公爵家の二人に秘密裏に会ってもらえないかと打診された。どうだろう?」
「私は構いません」
「リリアローズ?」
「お父様、王国だけでは解決へと導けない可能性もあります。ましてや、ターシャ達は帝国にいます。王国の人間が帝国に行きにくいなら、帝国の人間のお話を聞くべきだと思います」
「私もそう思う。いくら調査に長けた者が向こうに潜入しているから、と悠長に構えている余裕はない。被害者がまた出る可能性もある。なら、リディア皇子の話を聞いてもいいんじゃないかな?」
「真実でない可能性もあります」
「さすが公爵、用心深いね。けど、大丈夫。協力するにあたり、交換条件をつけるから」
交換条件・・・。
殿下が仰ると、怖くなるのは何故でしょう?
「この件は既に殿下に委ねております。話を聞くだけなら当家をお使い下さって構いません」
「ありがとう。早速リディア皇子に伝えておくよ」
そう言って殿下はサッと魔道具を解除して立ち上がられます。
「魔道具は次までここに置いていくよ。必需品だしね」
「わかりました。お預かりいたします」
「では・・・あ、そうそう。リリア」
「はい」
「これを」
手品ですか?
渡された花束は何もない所から出現しましたが。
「魔道具だよ。リディア皇子に頂いたものでね、仮想空間に物を収納できるそうだ。人間や動物は無理だけどこういった物を持ち運ぶ為の便利道具だ。友好の証なんだって。こうすれば、いちいちマットにリリアへのプレゼントを触らせるなんて事しなくていい」
「そ、そうですか・・・」
「容量がかなりあるらしいから、今度はもう少し大きいものでも持ってこれるね」
いえ、これ以上の大きいものは困ります。
「じゃあ、また来るよ」
断りの言葉を発する前に殿下は颯爽と馬車へと乗り込んでしまわれました。
手際が良すぎます、殿下。
まぁ、裏側があれば別ですが。
留学されてから半月、殿下と共に模擬戦や勉学に励んでおられるご様子。
その間、殿下が当家にお越しではないのでお父様が歓喜乱舞されておられますが。
そんなある日。
久々に殿下がお見えになられました。
「突然すまない」
「いえ。で、どうされたのです?新たな報告でも?」
遠回しはやめろと言わんばかりにお父様が殿下に話を促して、当の殿下は苦笑されてます。
「報告と言えば報告かな?」
あれ?本当に報告だったのですか?
「リリア・・・失礼な事考えてる?」
「い、いえ。そんな事は・・・」
「ふぅん。まぁ、いいや。取り敢えず、話をしようか」
勝手知ったるで、先頭を切って応接室へと向かわれる殿下に私達は慌てて後を追いました。
お茶の用意をした侍女が退室すると、懐から取り出した魔道具を設置した殿下がお父様に暫く人払いをする様にお願いされました。
セバスチャンにその事を告げると、お父様は応接室を完全に締め切り、席に戻られました。
「起動」
微かにヴンと音が空気を揺らします。
防音結界ですね、この魔道具。
それが正常に動いた証拠で、魔道具を見つめていた殿下が私達へと目線を向けられました。
「昨日、リディア皇子から話があってね」
「リディア皇子・・・帝国の第二皇子ですね。その方がどんな話を?」
「・・・協力要請だ」
「は?何の協力です?」
「ターシャ達の捕縛と魅了魔術の封印だ」
「お待ちください。なぜ、リディア皇子が我々が追っている事をご存知なのです?」
「向こうも魅了魔術を厄介としているらしく、何とかしようと調査をしている最中・・・王国も調査している事に気付いたそうだ」
帝国側に調査がバレているということでしょうか?
「気付いたのはリディア皇子だけだから、安心して欲しい。元々彼が魅了魔術の封印を考えたのは、帝国内で起こった出来事が原因だと言われた」
「どんな事です?」
「本人から説明したいとの事で、公爵家の二人に秘密裏に会ってもらえないかと打診された。どうだろう?」
「私は構いません」
「リリアローズ?」
「お父様、王国だけでは解決へと導けない可能性もあります。ましてや、ターシャ達は帝国にいます。王国の人間が帝国に行きにくいなら、帝国の人間のお話を聞くべきだと思います」
「私もそう思う。いくら調査に長けた者が向こうに潜入しているから、と悠長に構えている余裕はない。被害者がまた出る可能性もある。なら、リディア皇子の話を聞いてもいいんじゃないかな?」
「真実でない可能性もあります」
「さすが公爵、用心深いね。けど、大丈夫。協力するにあたり、交換条件をつけるから」
交換条件・・・。
殿下が仰ると、怖くなるのは何故でしょう?
「この件は既に殿下に委ねております。話を聞くだけなら当家をお使い下さって構いません」
「ありがとう。早速リディア皇子に伝えておくよ」
そう言って殿下はサッと魔道具を解除して立ち上がられます。
「魔道具は次までここに置いていくよ。必需品だしね」
「わかりました。お預かりいたします」
「では・・・あ、そうそう。リリア」
「はい」
「これを」
手品ですか?
渡された花束は何もない所から出現しましたが。
「魔道具だよ。リディア皇子に頂いたものでね、仮想空間に物を収納できるそうだ。人間や動物は無理だけどこういった物を持ち運ぶ為の便利道具だ。友好の証なんだって。こうすれば、いちいちマットにリリアへのプレゼントを触らせるなんて事しなくていい」
「そ、そうですか・・・」
「容量がかなりあるらしいから、今度はもう少し大きいものでも持ってこれるね」
いえ、これ以上の大きいものは困ります。
「じゃあ、また来るよ」
断りの言葉を発する前に殿下は颯爽と馬車へと乗り込んでしまわれました。
手際が良すぎます、殿下。
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