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第2章

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 取り敢えず、ターミアは捕縛対象となり、地下牢に封じられることとなりました。
 事情の知らない会場にいらっしゃる方々の為に全員で戻ります。
 
 廊下でお父様が隣にやって来られますが、反対隣の殿下が私の腕を自身の腕に絡ませます。
 え?今エスコート必要ですか?

「殿下・・・リリアローズのパートナー役は必要ないでしょう」

「夜会は終わってないから、まだパートナーだ」

 両脇で変に言い合いにならないでいただきたいです。
 頭の上がうるさいです。

「お父様、今夜だけのパートナーですから・・・」

「私は今夜だけにするつもりはないが?」

「え?」

「まぁ、その話は後だ」

「はぁ」

 よく分からない殿下のお言葉通り、会場が目前に迫っていたので話を切り上げました。
 中に入ると、好奇心旺盛な方々の目線がチクチク体に刺さってきます。
 王族全員と公爵家ウチが一斉に退出すれば何事かと詮索されますよね。
 感のいい方は気付いたかもしれませんが。

「さて。マット、まだ術が残っている者はいるか?」

「もう、いらっしゃらないかと。皆様が出られている間に命じられていましたから」

「上々。ターミア以外は捕縛命令が先程出されたから、これ以上はここで事が起きる心配はないだろう。ん?ちょうど曲が変わったな。リリアローズ、踊り直そうか」

 貴族のルールとして、一曲だけ異性と踊るのはOKとされています。
 付き合いは大事ですからね。
 ですが、二曲目以降となると意味合いがグンと重くなります。
 両家公認の恋人もしくは婚約者、夫婦という事になるのです。
 だから、皆様一曲だけで楽しまれます。

「駄目?」

「あ、いえ、あの・・・」

「さっきのは作戦中の業務。今からはプライベート。お願いできるかな?」

 あ、そうですね。作戦中のはカウントされませんよね。じゃあ・・・

「って、駄目ですよ。事情の知らないの方には二回目のダンスと認識されるではありませんか。殿下の今後に響きます」

「ちぇっ。駄目かぁ。まぁ、いいか。次の夜会は踊ってもらうから」

 次なんてありませんよ。
 何を仰っておられるのでしょう。
 溜息をコッソリ吐き出すと、視線を感じて顔を上げます。
 バッチリと、上機嫌な笑顔の王妃様と目が合いました。
 誰にもわからない様にサムズアップされてます。
 もう。意味が分かりません‼︎





 ターミアが捕縛さらてからは何事もなく、いつもの夜会でした。
 ただ違うのは、私の隣には殿下がおられるという事だけ。
 今まではウィリアムがそこに居たのですが、私は当然ながら、お父様も二度と隣に立つ事は許さないはずです。
 今後、侯爵家との関係はどうなるか分かりませんが、今夜の夜会でターミアをパートナーとして連れ立って現れた時点で修復不可能でしょう。
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