自称病弱の姉に婚約者を奪われたけど、もう気にしない

蒼葉

文字の大きさ
上 下
31 / 54
第2章

20

しおりを挟む
 殿下の思惑通り、現れました・・・ターミアが。
 驚いた事に、パートナーはウィリアムでした。
 いつ、何処で再会したのでしょう?

 虚な目でターミアの隣にいるウィリアムは組んでいる腕を引っ張られる様に子息達で賑わう輪に入って行きました。

「出てきたな」

「何故ウィリアムなのでしょう?彼はターシャ達と近付くことのない様に説得されていたと思いましたが」

「したね。でも、結果は・・・アレだ」

 至極残念そうに彼等を一瞥して、殿下は上座に座する陛下に目配せを送られました。

「取り敢えず、踊ろうか。私が踊らないと夜会が始まらない」

 本来なら、主催者である国王夫妻がダンスを披露して、初めて夜会が始まります。
 しかし、今夜は殿下が代わりを努めます・・・私と。

 陛下の挨拶と共に殿下とホールの中央に向かいます。
 ダンスは苦手ではありませんが、得意でもありません。
 足を引っ張らない様に頑張りませんと。

「緊張、してる?」

「していないとは言えません。失敗したら、お許しください」

「フフ。大丈夫、フォローするから。私に身を任せるといい」

 心強いお言葉をいただき、フロア全体に曲が響き始めました。





 私達のダンスが終わると、次々と子息令嬢をはじめとする貴族達が各々のパートナーとダンスを始めます。
 皆様、大変お上手です。羨ましい。
 当然、ウィリアムとターミアも踊っていますが、ターミアの目線は他の子息達に向かっています。
 あからさま過ぎやしませんか?

「やらかすな、アレは」

「申し訳ありません」

「彼女はもうリリアローズの姉ではないだろう?謝罪する必要はない」

 気持ち的に謝罪したい気分です。
 先日まではでしたので。
 少しだけ肩身の狭い思いをしていると、ダンスを終えたターミアが次のダンス相手に手を合わせている所でした。
 瞬間、微かにターミアの手首にあるブレスレットが揺らめいた気がしました。

「殿下」

「わかっている。マット」

「はい」

 影の様に殿下の後ろで控えていたマット様が微かな気配と共に現れました。
 ヌッと現れるよりかはマシですが、気配なく存在していた方がいきなり現れるのも心臓に悪いです。

「見張っていろ」

「御意」

 もう・・・あの方は魔術師を辞めて影が諜報部に転属なさった方がいいのでは?

「リリアローズ、私達は挨拶の続きだ」

「・・・はい」

 ターミアに向けていた目線を前に向き直し、挨拶をする為に並んでいた貴族達に、貼り付けた笑顔を向けました。





「大丈夫か?」

 挨拶の一区切りがついた途端、特に精神が疲弊し、心の中で項垂れてた私をケロッとしている殿下が気遣ってくださいます。

「初めて、殿下を、尊敬致しました・・・」

「喧嘩なら、買うよ?」

「いえ、滅相もございません」

「まぁ、これ位の挨拶は常だね。だから、慣れてるだけだよ。リリアローズもそのうち慣れる」

 慣れる程回数をこなす機会は訪れないと思います。

「リリア、休憩にしましょうか」

 壇上に居られたはずの王妃様が私を抱き締めて王族専用の休憩室に誘われます。
 良いのでしょうか?

「大丈夫。陛下が残って下さるから、今のうちに休憩しましょう」

 確かに、壇上には陛下が座って会場を眺めておられます・・・と言うより、ターミアの動向を探っておいでですね、あれは。

「・・・お言葉に甘えさせて頂きます」

「えぇ。じゃあ、行きましょうか・・・って、フレン、貴方も来るの?」

「当然です。リリアローズはですからね」

「・・・そこまで言うなら、必ず落としなさい」

 ポソリと小さな声で殿下に何かを伝えられた王妃様に殿下が力強く頷かれました。
 何を落とすのでしょう?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

蜜柑
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?

ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。 13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。 16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。 そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか? ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯ 婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。 恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~

ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。

養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
恋愛
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!大勢の男性から求婚されましたが誰を選べば正解なのかわかりません!〜 タイトルちょっと変更しました。 政略結婚の夫との冷えきった関係。義母は私が気に入らないらしく、しきりに夫に私と別れて再婚するようほのめかしてくる。 それを否定もしない夫。伯爵夫人の地位を狙って夫をあからさまに誘惑するメイドたち。私の心は限界だった。 なんとか自立するために仕事を始めようとするけれど、夫は自分の仕事につながる社交以外を認めてくれない。 そんな時に出会った画材工房で、私は絵を描く喜びに目覚めた。 そして気付いたのだ。今貴族女性でもつくことの出来る数少ない仕事のひとつである、魔法絵師としての力が私にあることに。 このまま絵を描き続けて、いざという時の為に自立しよう! そう思っていた矢先、高価な魔石の粉末入りの絵の具を夫に捨てられてしまう。 絶望した私は、初めて夫に反抗した。 私の態度に驚いた夫だったけれど、私が絵を描く姿を見てから、なんだか夫の様子が変わってきて……? そして新たに私の前に現れた5人の男性。 宮廷に出入りする化粧師。 新進気鋭の若手魔法絵師。 王弟の子息の魔塔の賢者。 工房長の孫の絵の具職人。 引退した元第一騎士団長。 何故か彼らに口説かれだした私。 このまま自立?再構築? どちらにしても私、一人でも生きていけるように変わりたい! コメントの人気投票で、どのヒーローと結ばれるかが変わるかも?

旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり
恋愛
 ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。  けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。  バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

処理中です...