自称病弱の姉に婚約者を奪われたけど、もう気にしない

蒼葉

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第2章

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 かつて、大きな領土を持つ帝国が武力を持って他の国を蹂躙し属国とした。

 多くの国が帝国に屈した中、我が国王国は抵抗し続けていたが、それ程火力のない兵力ではいずれ属国となる運命がやって来る。
 憂いた当時の国王が攻めの一手に出た。

 まさか、自国より小さな国が攻めの姿勢を見せるとは思わなかった帝国側は油断し、皇帝が住う帝城に侵入を許した。
 玉座に胡座をかいて座っているだけの、戦好きの無能な皇帝は侵入を果たした王国の騎士に抵抗虚しく首を刎ねられた。

 帝国側の高位貴族は皇帝と同じく、弱者を痛ぶるだけの無能者ばかりだった。
 早々に帝国民から見放されたその貴族達は、身の保証と引き換えに王国に次々と差し出された。
 属国となった国々は解放され、王国と友好を刻む一方、次々と処刑されてゆく帝国貴族達。
 それらを見て、何故か帝国民は嘲笑うかの様な安堵の溜息を吐いた。





「今になって、何故帝国が?属国となった小国らも、過去の二の舞にならない様に兵力の底上げをしているので、帝国もおいそれと戦を起こす事は出来ないと思いますが」

「それだよ」

「それ?」

「今回の件は、戦争ではない。混乱に乗じて我が国を乗っ取る気なのだろう」

「我が国とて油断はしておりません。一体・・・」

「公爵。奴等の狙いは私だ。だから『王家主催の夜会』なのだ」

 仕掛けるのは、おそらくターミア。
 ターシャでは、お父様と婚姻状態の時に夜会に出向いていましたから、離縁した今、公爵家以下の貴族は離縁理由の事もあり、誰も近付かないでしょう。

「ターミアも、ターシャと同じ様なコネ作りをしていると報告があった。公爵家ここにいる時は外出を控えていたのが功を奏したらしく、茶会にしれっと参加しても誰に気付かれる事なく下位貴族の子息に媚びまくっている様だ」

 頭が痛くなってきました。
 それとも、変わりなくて安心した方がいいのでしょうか?
 ここまでくれば、自主的にターシャの悪事に参加しているとしか思えません。

「恐らく、誰かしらと共に夜会に参加するだろう」

「誰かとは?」

「・・・そこまでは分からん」
 
 殿下の言い回しに何かしら引っ掛かるものがありますが、私達も気を引き締めねばなりません。

「そこで、リリアローズにお願いがある」

「私に・・・ですか?」

「そう。君へのお願いだ」

 真っ黒な笑みが見えています・・・殿下。
 うんと頷きたくありません。
 断りましょう。

「あの・・・」

嗚呼あぁ。悪いけど、断れないからね。はお願いだけど、からの勅命だよ?」

 床を抱き締めて泣いてもいいでしょうか。
 お父様と共に、引き攣りそうな顔を頑張って笑顔に変える気苦労を誰か労って下さい。
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