27 / 54
第2章
16
しおりを挟む
大変・・・気まずいです。
殿下とウィリアムが向かい合う間に私が座っています。
お父様はウィリアムの施術が終わると同時に仕事に向かわれたので、ここにいらっしゃいません。
お茶は王家御用達のものらしいので、大変美味しいです・・・が、殿下の威圧とウィリアムの困惑が私を疲弊させます。
「スラット子息は・・・」
「は、はい」
「リリアローズと婚約を解消したんだよね?」
「・・・そう、ですね」
「なら、遠慮はいらないか」
最後の呟きは小さ過ぎて聞こえませんでした。
聞き返すのも礼儀に反するので問いかける事はしません。
ウィリアムも同じです。
「リリアローズ、後で公爵と話があるんだけど・・・公爵はいつ時間が空いているかな?」
「聞いて来ましょうか?」
「お願い出来る?」
「では、少し席を外す事をお許しください」
「急がなくていいからね」
「はい」
お父様は執務室にいらっしゃるはずです。
そちらに向かう為に応接室を出ます。
扉を開けてくれたマリオがウィリアムに気の毒そうな目線を一瞬だけ見せ、私の後に付き従いました。
「何を言われるやら」
「何がです?」
「いえ。接点のないお二人はどの様な会話をされるのだろうか、と」
マリオの言葉に、思わず遠い目をしてしまいました。
応接室には重苦しい空気が漂う・・・と感じるのはウィリアムだけ。
王太子は王家特有の笑みを浮かべながらカップを傾けていた。
微かな茶器の音がすれば、いつの間にかソーサーに戻されたカップ。
順々に目線を辿れば視線が合ってしまった。
「も、申し訳ございません・・・」
王族と目線を合わす事は禁忌。
顔を凝視する事も許されていない。
一瞬で目線を合わせてしまったウィリアムの顔はサッと青に変わる。
「構わないよ。今は私達だけだし」
「は、はい」
今は、と言う事は今だけ許されたのだ。
「でね。今言っておこうか悩んでいたんだけど・・・」
ニコリと笑うも、目が威圧を放っている。
それを感じたウィリアムの体が震えはじめた。
「私はリリアローズを婚約者にするつもりだ。勿論、父上も母上も賛成している。あ、母上は大賛成か。婚約すっ飛ばして婚姻させようかとか言ってるくらいだし」
いや、それは無理でしょう。と萎縮していながらも、ウィリアムは内心突っ込む。
「で、殿下は既に婚約者が居られるのでは?」
「それ、嫌味?居るわけないだろ?元々私達王家はリリアローズを婚約者にするつもりだったんだから」
「は?」
「初めは学生時代の母上とティアラローズ夫人との間で交わされた他愛無い約束だったらしいが、母上は生まれたばかりのリリアローズを見て本気になったんだ」
「・・・」
「未だに赤子のリリアローズを思い浮かべて可愛いを連発しているよ。最近なんか孫の教育のシミュレーションまで始めているくらいだ」
「孫⁉︎」
婚姻どころか婚約すらしていないのに、気が早すぎる王妃。
呆れビックリな感情は、どうしたらいいのだろうとウィリアムは戸惑いをみせる。
「リリアローズとの子供なら、きっと可愛い子が生まれるだろうね」
「き、気が早いのでは・・・?」
「そうかな。頓挫した計画がまた浮上したからね・・・邪魔されたくはないんだよ」
すっと細められた瞳。
無くならない威圧でウィリアムの体が硬直する。
「幼馴染というだけで婚約者になった君を、殺してやろうかと思ったくらいには憎々しかったけど・・・解消されてよかったよ。あ、君はターミアとかいう女がいいんだろう?一緒になれる様取り図ろうか?」
「い、いいえ・・・結構です・・・」
「そう?気が変わったら教えて?いつでも協力するから」
無邪気に恐ろしい事を提案する王太子。
恐怖で早くリリアローズが帰ってくる事をウィリアムは強く願った。
殿下とウィリアムが向かい合う間に私が座っています。
お父様はウィリアムの施術が終わると同時に仕事に向かわれたので、ここにいらっしゃいません。
お茶は王家御用達のものらしいので、大変美味しいです・・・が、殿下の威圧とウィリアムの困惑が私を疲弊させます。
「スラット子息は・・・」
「は、はい」
「リリアローズと婚約を解消したんだよね?」
「・・・そう、ですね」
「なら、遠慮はいらないか」
最後の呟きは小さ過ぎて聞こえませんでした。
聞き返すのも礼儀に反するので問いかける事はしません。
ウィリアムも同じです。
「リリアローズ、後で公爵と話があるんだけど・・・公爵はいつ時間が空いているかな?」
「聞いて来ましょうか?」
「お願い出来る?」
「では、少し席を外す事をお許しください」
「急がなくていいからね」
「はい」
お父様は執務室にいらっしゃるはずです。
そちらに向かう為に応接室を出ます。
扉を開けてくれたマリオがウィリアムに気の毒そうな目線を一瞬だけ見せ、私の後に付き従いました。
「何を言われるやら」
「何がです?」
「いえ。接点のないお二人はどの様な会話をされるのだろうか、と」
マリオの言葉に、思わず遠い目をしてしまいました。
応接室には重苦しい空気が漂う・・・と感じるのはウィリアムだけ。
王太子は王家特有の笑みを浮かべながらカップを傾けていた。
微かな茶器の音がすれば、いつの間にかソーサーに戻されたカップ。
順々に目線を辿れば視線が合ってしまった。
「も、申し訳ございません・・・」
王族と目線を合わす事は禁忌。
顔を凝視する事も許されていない。
一瞬で目線を合わせてしまったウィリアムの顔はサッと青に変わる。
「構わないよ。今は私達だけだし」
「は、はい」
今は、と言う事は今だけ許されたのだ。
「でね。今言っておこうか悩んでいたんだけど・・・」
ニコリと笑うも、目が威圧を放っている。
それを感じたウィリアムの体が震えはじめた。
「私はリリアローズを婚約者にするつもりだ。勿論、父上も母上も賛成している。あ、母上は大賛成か。婚約すっ飛ばして婚姻させようかとか言ってるくらいだし」
いや、それは無理でしょう。と萎縮していながらも、ウィリアムは内心突っ込む。
「で、殿下は既に婚約者が居られるのでは?」
「それ、嫌味?居るわけないだろ?元々私達王家はリリアローズを婚約者にするつもりだったんだから」
「は?」
「初めは学生時代の母上とティアラローズ夫人との間で交わされた他愛無い約束だったらしいが、母上は生まれたばかりのリリアローズを見て本気になったんだ」
「・・・」
「未だに赤子のリリアローズを思い浮かべて可愛いを連発しているよ。最近なんか孫の教育のシミュレーションまで始めているくらいだ」
「孫⁉︎」
婚姻どころか婚約すらしていないのに、気が早すぎる王妃。
呆れビックリな感情は、どうしたらいいのだろうとウィリアムは戸惑いをみせる。
「リリアローズとの子供なら、きっと可愛い子が生まれるだろうね」
「き、気が早いのでは・・・?」
「そうかな。頓挫した計画がまた浮上したからね・・・邪魔されたくはないんだよ」
すっと細められた瞳。
無くならない威圧でウィリアムの体が硬直する。
「幼馴染というだけで婚約者になった君を、殺してやろうかと思ったくらいには憎々しかったけど・・・解消されてよかったよ。あ、君はターミアとかいう女がいいんだろう?一緒になれる様取り図ろうか?」
「い、いいえ・・・結構です・・・」
「そう?気が変わったら教えて?いつでも協力するから」
無邪気に恐ろしい事を提案する王太子。
恐怖で早くリリアローズが帰ってくる事をウィリアムは強く願った。
11
お気に入りに追加
483
あなたにおすすめの小説

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。
蜜柑
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。
妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。
婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?
ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。
13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。
16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。
そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか?
ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯
婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。
恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~
ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。

養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
恋愛
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!大勢の男性から求婚されましたが誰を選べば正解なのかわかりません!〜
タイトルちょっと変更しました。
政略結婚の夫との冷えきった関係。義母は私が気に入らないらしく、しきりに夫に私と別れて再婚するようほのめかしてくる。
それを否定もしない夫。伯爵夫人の地位を狙って夫をあからさまに誘惑するメイドたち。私の心は限界だった。
なんとか自立するために仕事を始めようとするけれど、夫は自分の仕事につながる社交以外を認めてくれない。
そんな時に出会った画材工房で、私は絵を描く喜びに目覚めた。
そして気付いたのだ。今貴族女性でもつくことの出来る数少ない仕事のひとつである、魔法絵師としての力が私にあることに。
このまま絵を描き続けて、いざという時の為に自立しよう!
そう思っていた矢先、高価な魔石の粉末入りの絵の具を夫に捨てられてしまう。
絶望した私は、初めて夫に反抗した。
私の態度に驚いた夫だったけれど、私が絵を描く姿を見てから、なんだか夫の様子が変わってきて……?
そして新たに私の前に現れた5人の男性。
宮廷に出入りする化粧師。
新進気鋭の若手魔法絵師。
王弟の子息の魔塔の賢者。
工房長の孫の絵の具職人。
引退した元第一騎士団長。
何故か彼らに口説かれだした私。
このまま自立?再構築?
どちらにしても私、一人でも生きていけるように変わりたい!
コメントの人気投票で、どのヒーローと結ばれるかが変わるかも?

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる