自称病弱の姉に婚約者を奪われたけど、もう気にしない

蒼葉

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第2章

15

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「やあ、リリアローズ」

 お父様とウィリアムと共に魔術師長様を出迎えると、何故か一番乗りで殿下が扉を潜られました。
 しかも、いつの間にか『嬢』呼びが消え去っています。

「ご機嫌よう、王太子殿下」

 カーテシーで挨拶を返すと、お父様の隣にいたウィリアムが複雑な表情で私達を見ていました。

「さて。魔術師長、解呪をお願いできるかい?」

「わかりました。スラット子息、ここに座って頂けますか?」

 備え付けられているソファに魔術師長様が促すと、素直に従ったウィリアムは初めて見る施術に戸惑いを見せます。

「痛くないですよ~。リラックスなさって下さいね」

 少し間延びした言い方はわざとなのか、肩の力が抜けたウィリアムの体は淡い光に包まれた。
 それが解呪の力だとわかりました。

「終わりです。お疲れまさでした」

「え?もう?」

「長くても短くても、効果は同じですよ。何十時間もかけて解呪するより、回数重ねて短時間でやる方がスラット子息も私も楽ちんです」

 ね?と笑顔で告げる魔術師長様にウィリアムも曖昧に笑顔でそうですねと答えていました。

「また明日、この時間に公爵家に来ればいいのかな?」

「そうですね。殿下はどうであれ、私はこの時間に来るとしましょう」

 いい笑顔で殿下に告げる魔術師長様。
 ・・・お二人の間に異空間が存在してそうですね。

「では、私はこれで失礼します」

 お忙しい中来て頂いた魔術師長様は用事が終わると早々に王城に帰ろうとなさいます。
 お止めするわけにはいきませんので、お見送りをする為に移動いたします。

「今日はありがとうございました」

 ウィリアムが頭を下げてお礼を口にすると、それに魔術師長様が頷き、私の横にいる殿下に向き直りコテンと首を傾げられます。

「ご一緒に帰られるのでは?」

「私は後で帰るよ?」

 お父様、私、ウィリアムが一斉に殿下に振り向きます。
 何を言っちゃってるんでしょう、この方。

「お、お帰りになられないのですか?」

「ん?居ては駄目なのか?公爵」

「そんな事はありませんが・・・」

「では。リリアローズ、お茶にしょうか。城から茶葉を持参してきたんだ。セバスチャンに渡してあるから淹れてもらおう」

 そっと私の手を握りしめ、何故か上機嫌に応接室に向かう殿下に引きずられる形で歩き出します。
 置いてきぼりのお父様達は唖然と私達を見送っておられました。
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