26 / 54
第2章
15
しおりを挟む
「やあ、リリアローズ」
お父様とウィリアムと共に魔術師長様を出迎えると、何故か一番乗りで殿下が扉を潜られました。
しかも、いつの間にか『嬢』呼びが消え去っています。
「ご機嫌よう、王太子殿下」
カーテシーで挨拶を返すと、お父様の隣にいたウィリアムが複雑な表情で私達を見ていました。
「さて。魔術師長、解呪をお願いできるかい?」
「わかりました。スラット子息、ここに座って頂けますか?」
備え付けられているソファに魔術師長様が促すと、素直に従ったウィリアムは初めて見る施術に戸惑いを見せます。
「痛くないですよ~。リラックスなさって下さいね」
少し間延びした言い方はわざとなのか、肩の力が抜けたウィリアムの体は淡い光に包まれた。
それが解呪の力だとわかりました。
「終わりです。お疲れまさでした」
「え?もう?」
「長くても短くても、効果は同じですよ。何十時間もかけて解呪するより、回数重ねて短時間でやる方がスラット子息も私も楽ちんです」
ね?と笑顔で告げる魔術師長様にウィリアムも曖昧に笑顔でそうですねと答えていました。
「また明日、この時間に公爵家に来ればいいのかな?」
「そうですね。殿下はどうであれ、私はこの時間に来るとしましょう」
いい笑顔で殿下に告げる魔術師長様。
・・・お二人の間に異空間が存在してそうですね。
「では、私はこれで失礼します」
お忙しい中来て頂いた魔術師長様は用事が終わると早々に王城に帰ろうとなさいます。
お止めするわけにはいきませんので、お見送りをする為に移動いたします。
「今日はありがとうございました」
ウィリアムが頭を下げてお礼を口にすると、それに魔術師長様が頷き、私の横にいる殿下に向き直りコテンと首を傾げられます。
「ご一緒に帰られるのでは?」
「私は後で帰るよ?」
お父様、私、ウィリアムが一斉に殿下に振り向きます。
何を言っちゃってるんでしょう、この方。
「お、お帰りになられないのですか?」
「ん?居ては駄目なのか?公爵」
「そんな事はありませんが・・・」
「では。リリアローズ、お茶にしょうか。城から茶葉を持参してきたんだ。セバスチャンに渡してあるから淹れてもらおう」
そっと私の手を握りしめ、何故か上機嫌に応接室に向かう殿下に引きずられる形で歩き出します。
置いてきぼりのお父様達は唖然と私達を見送っておられました。
お父様とウィリアムと共に魔術師長様を出迎えると、何故か一番乗りで殿下が扉を潜られました。
しかも、いつの間にか『嬢』呼びが消え去っています。
「ご機嫌よう、王太子殿下」
カーテシーで挨拶を返すと、お父様の隣にいたウィリアムが複雑な表情で私達を見ていました。
「さて。魔術師長、解呪をお願いできるかい?」
「わかりました。スラット子息、ここに座って頂けますか?」
備え付けられているソファに魔術師長様が促すと、素直に従ったウィリアムは初めて見る施術に戸惑いを見せます。
「痛くないですよ~。リラックスなさって下さいね」
少し間延びした言い方はわざとなのか、肩の力が抜けたウィリアムの体は淡い光に包まれた。
それが解呪の力だとわかりました。
「終わりです。お疲れまさでした」
「え?もう?」
「長くても短くても、効果は同じですよ。何十時間もかけて解呪するより、回数重ねて短時間でやる方がスラット子息も私も楽ちんです」
ね?と笑顔で告げる魔術師長様にウィリアムも曖昧に笑顔でそうですねと答えていました。
「また明日、この時間に公爵家に来ればいいのかな?」
「そうですね。殿下はどうであれ、私はこの時間に来るとしましょう」
いい笑顔で殿下に告げる魔術師長様。
・・・お二人の間に異空間が存在してそうですね。
「では、私はこれで失礼します」
お忙しい中来て頂いた魔術師長様は用事が終わると早々に王城に帰ろうとなさいます。
お止めするわけにはいきませんので、お見送りをする為に移動いたします。
「今日はありがとうございました」
ウィリアムが頭を下げてお礼を口にすると、それに魔術師長様が頷き、私の横にいる殿下に向き直りコテンと首を傾げられます。
「ご一緒に帰られるのでは?」
「私は後で帰るよ?」
お父様、私、ウィリアムが一斉に殿下に振り向きます。
何を言っちゃってるんでしょう、この方。
「お、お帰りになられないのですか?」
「ん?居ては駄目なのか?公爵」
「そんな事はありませんが・・・」
「では。リリアローズ、お茶にしょうか。城から茶葉を持参してきたんだ。セバスチャンに渡してあるから淹れてもらおう」
そっと私の手を握りしめ、何故か上機嫌に応接室に向かう殿下に引きずられる形で歩き出します。
置いてきぼりのお父様達は唖然と私達を見送っておられました。
11
お気に入りに追加
483
あなたにおすすめの小説

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。
蜜柑
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。
妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。
婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?
ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。
13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。
16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。
そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか?
ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯
婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。
恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~
ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。

養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
恋愛
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!大勢の男性から求婚されましたが誰を選べば正解なのかわかりません!〜
タイトルちょっと変更しました。
政略結婚の夫との冷えきった関係。義母は私が気に入らないらしく、しきりに夫に私と別れて再婚するようほのめかしてくる。
それを否定もしない夫。伯爵夫人の地位を狙って夫をあからさまに誘惑するメイドたち。私の心は限界だった。
なんとか自立するために仕事を始めようとするけれど、夫は自分の仕事につながる社交以外を認めてくれない。
そんな時に出会った画材工房で、私は絵を描く喜びに目覚めた。
そして気付いたのだ。今貴族女性でもつくことの出来る数少ない仕事のひとつである、魔法絵師としての力が私にあることに。
このまま絵を描き続けて、いざという時の為に自立しよう!
そう思っていた矢先、高価な魔石の粉末入りの絵の具を夫に捨てられてしまう。
絶望した私は、初めて夫に反抗した。
私の態度に驚いた夫だったけれど、私が絵を描く姿を見てから、なんだか夫の様子が変わってきて……?
そして新たに私の前に現れた5人の男性。
宮廷に出入りする化粧師。
新進気鋭の若手魔法絵師。
王弟の子息の魔塔の賢者。
工房長の孫の絵の具職人。
引退した元第一騎士団長。
何故か彼らに口説かれだした私。
このまま自立?再構築?
どちらにしても私、一人でも生きていけるように変わりたい!
コメントの人気投票で、どのヒーローと結ばれるかが変わるかも?

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる