自称病弱の姉に婚約者を奪われたけど、もう気にしない

蒼葉

文字の大きさ
上 下
19 / 54
第2章

8

しおりを挟む
 帝国は、はるか昔から我が国の領土を欲していると聞き及んでいます。
 広大で資源あふれるこの地は、国民全員を豊かにしてきました。
 王家の方々も、勤勉であり、頂点に立つ歴代の国王陛下は全員賢王と呼ばれる程です。

 打って変わって、帝国の皇帝は私利私欲に走り、国民は困窮していると聞き及んでいます。
 亡命する方々も年々増えているとか。

「本格的に我が国に手を伸ばしてきたか」

 陛下のお言葉に皆が頷きます。

「帝国から呪術玉がどういった経緯で我が国に流れて着いたかの調査。それと並行して件の子息がいつそれを手に入れたか。調べねばならん」

「父上、どれくらいの貴族が呪術玉の餌食になっているかも調べなければ」

「そうだな。フレン、そちらはお前に任せる」

「はい」

「公爵は子息について調べよ。帝国の方は潜入している影に調べさせよう」

 テキパキと割り振り、迅速に対応するすお姿はまさしく賢王です。

「国民には被害が出ておらんのだな?」

「我が公爵家では、使用人の何名かが掛かっておりましたが、来て頂いた魔術師殿のおかげで事なきを得ました。それを踏まえて申し上げますと、男爵家の者達も恐らく術に落ちているでしょう」

 国民を大切になさっている陛下と殿下のお顔が曇ります。

「マーベルはフレンと共に貴族及び国民の調査だ」

「御意」

 数日後、途中経過の報告を上げる為集まるよう厳命され、今日はお開きとなりました。





 調査に参加しない私は日常生活に戻りました。
 陛下からの命はありませんが、お父様から学園でも異変が起きたら知らせる様にお願いされました。

 学園で魅了の症状が現れたのなら、それは十中八九姉の仕業・・・となるでしょう。
 姉はでないらしいので。

「お聞きになられました?」

 学園の廊下を歩いていると、そんな声が聞こえてきました。
 どうやら近くでご令嬢達が立ち話をしているようです。

「最近、スラット様が学園においでになられていないとか」

 スラットと言えば、ウィリアムですね。
 学園に来ていないとは・・・どうしたのでしょう?

「学園長直々に邸に様子を見に行かれた様ですわ」

「それで、どうだったのです?」

「お会いできなかったそうです」

「まぁ。どうなさったのでしょう・・・」

 姉の件がなければ、ウィリアムは人に好かれる好青年でした。
 勿論、婚約期間中もかなりのラブレターを貰っていました。

 渡す方もどうかと思いますが、断らずに貰うウィリアムもどうかと呆れた記憶があります。

「ご両親も部屋からお出にならないスラット様をご心配なさっているとか」

 出てこない?何故?

「あの。少し宜しいでしょうか?」

 たまらず声を掛けると、ご令嬢達が私を見て唖然としておられました。

「あ、リリアローズ様・・・」

「いきなり申し訳ございません。今、ウィリアム様のお話をされておられましたよね」

「はい。あの・・・」

「お気遣いありがとうございます。もう婚約者ではないのでご安心下さい。ただ、幼馴染としてお聞きしたいのですが・・・彼は部屋から出て来ないのですか?出て来れないのではなく?」

「詳しくは分かりませんが、教員室に用があって行った時に学園長が他の先生方に仰っていたのを聞いてしまって・・・確かにそう仰っておられました」

「詳しいお話は学園長にお聞きしないと分かりませんね」

「はい。申し訳・・・」

「貴女の所為ではありませんので、そう畏まらないで下さい」

 重ねて謝罪するご令嬢を気の毒に思い、すぐさまその場を辞する旨を伝えて学園長を探しに足を踏み出しました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

蜜柑
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?

ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。 13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。 16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。 そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか? ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯ 婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。 恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~

ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。

養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
恋愛
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!大勢の男性から求婚されましたが誰を選べば正解なのかわかりません!〜 タイトルちょっと変更しました。 政略結婚の夫との冷えきった関係。義母は私が気に入らないらしく、しきりに夫に私と別れて再婚するようほのめかしてくる。 それを否定もしない夫。伯爵夫人の地位を狙って夫をあからさまに誘惑するメイドたち。私の心は限界だった。 なんとか自立するために仕事を始めようとするけれど、夫は自分の仕事につながる社交以外を認めてくれない。 そんな時に出会った画材工房で、私は絵を描く喜びに目覚めた。 そして気付いたのだ。今貴族女性でもつくことの出来る数少ない仕事のひとつである、魔法絵師としての力が私にあることに。 このまま絵を描き続けて、いざという時の為に自立しよう! そう思っていた矢先、高価な魔石の粉末入りの絵の具を夫に捨てられてしまう。 絶望した私は、初めて夫に反抗した。 私の態度に驚いた夫だったけれど、私が絵を描く姿を見てから、なんだか夫の様子が変わってきて……? そして新たに私の前に現れた5人の男性。 宮廷に出入りする化粧師。 新進気鋭の若手魔法絵師。 王弟の子息の魔塔の賢者。 工房長の孫の絵の具職人。 引退した元第一騎士団長。 何故か彼らに口説かれだした私。 このまま自立?再構築? どちらにしても私、一人でも生きていけるように変わりたい! コメントの人気投票で、どのヒーローと結ばれるかが変わるかも?

旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり
恋愛
 ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。  けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。  バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

処理中です...