自称病弱の姉に婚約者を奪われたけど、もう気にしない

蒼葉

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第1章

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 朝、食堂へ向かう。
 廊下を歩いて扉の前へと辿り着く。
 扉の前には誰も居ないので、自分で開けようと手を伸ばせば、中から楽しそうな会話が聞こえてきた。
 両親と姉、そして侯爵家の両親とウィリアムの六人。
 すでに食事は始められており、入るのが躊躇われた。

「昨夜は家族で泊めて貰って悪いな」

「構わない。ターミアの誕生日を祝いにきて貰ったのだからな。それに、遅くまで語り合うのは久しぶりだったしな」

「本当に。昨夜は楽しかった」

「お父様、ウィリアム様からドレスとイヤリングを頂いたの‼︎」

 ドレス・・・。私は一度もプレゼントなんて貰ったことないのだけれど。

「ウィリアム、本当か?」

「え?えぇ。ターミアに似合うドレスがなかったので、オーダーメイドで作らせました。いますよ?」

 自信満々に笑顔で話すウィリアムとは正反対に、表情を無くした侯爵様が食事の手を止める。

「ウィリアム」

 侯爵様の低い声が聞こえてくる。どうしたのかしら?

「父上?」

「昨日、ターミア嬢がパーティーで着ていたドレスの事か?」

「いえ。昨日のは夫人が用意された物ですよ」

「なら、のだ?」

「そう言えばそうだな。いつ見たんだ?ウィリアム」

「あ、あの・・・」

「一昨日ですわ、お父様。態々わざわざウィリアムが持って来てくれたんです。昨日のドレスはお母様が用意してくださったので、それを着たの。ウィリアムのドレスの方は、くれた日に着てみてくれと言われてので着替えて、見せたんです」

「なっ⁉︎」

 姉の言葉に両家の両親が絶句。
 当然、ウィリアムは真っ青になって焦ってる。

「た、ターミア」

「なぁに?本当の事でしょう?その場で着替えて見せてって言ったじゃない」

 その場で?まさか、ウィリアムが居る部屋で着替えて見せたと言うの?

「ターミア。ウィリアムを、お前の部屋に、入れたのか?」

「えぇ、お父様。毎日会いに来てくれるのよ?お見舞いだって、プレゼントも沢山くれるし。優しいの‼︎一昨日のプレゼントが一番嬉しかったわ」

 お母様と侯爵夫人がフラリと倒れる。
 周りにいた侍女達が慌てて介抱にまわるのが見えた。
 自分で言ってしまっても、悪びれてないのがある意味凄いわ。

「どういう事だ‼︎ウィリアム‼︎」

「違っ・・・」 

「お前は・・・何と言う事を・・・」

「父上、違うんです‼︎僕はそんな事言っていません‼︎」

 胸倉を掴み上げられながらも、ウィリアムは侯爵様に言い訳を始める。
 姉はお父様に詰め寄られていた。

「ターミア、言った事が事実なら・・・お前は妹の婚約者を寝・・・取った事に・・・」

 はっと、何かに気付いたお父様。やっとなのね。
 扉を開けて中に入る。
 隙間から見ていた状況より、更に酷い有様になっていた。

「リリアローズ・・・」

「おはようございます公爵様。お久しぶりにございます侯爵様」

 ゆっくりカーテシーを披露する。
 制服なのであまりスカートは広げない。

「リリアローズ、昨日は・・・」

「お姉様の誕生日パーティーとお聞きしましたので、お邪魔にならない様ずっと部屋におりました。楽しかったそうで何よりです」

 笑顔を見せると、お父様が泣きそうに顔を歪める。
 何故?

 ・・・ギシ・・・

 あれ?まただ。

「リリアローズ、お前を邪魔になどと思った事は・・・」

 ギシ・・・

「良いのです。呼ばれておりませんでしたし、皆様が楽しく過ごされたのなら、それで」

 ギシギシ・・・

「何やら大変なご様子なので、私はこれで失礼させていただきます。セバスチャン、朝食の用意はしないでと料理人の方にお願いしておいてね」

「リリアローズ‼︎助けてくれ‼︎誤解だと父上達に言って欲しいんだ」

「何処が誤解なのです?お姉様が仰った事は事実でしょう?両家の両親が悲しい思いをしないならと黙っていたけど・・・もう、無理ですね」

 爆弾は投げられた。
 だから、もう黙る必要は、ない。

 ギシギシギシギシギシ・・・


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