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第1章
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「私の事は気にしないで下さい。お姉様にお茶を頼まれたのでしょう?」
「はい。申し訳ございません・・・」
「フフ。本当にいいのですよ。さぁ、行ってください」
私の言葉に躊躇いを見せながらも、主である姉の用事を済ませる為にミアは深く頭を下げた後、一階へと下りて行った。
一人残された私。
此処からでも楽しそうに笑う二人の声が聞こえてくる。
聞きたくなくて踵を返し、自室へと早足で戻った。
翌日。
また、私に気づく事なく姉の部屋へと向かうウィリアムを廊下で見かけた。
今日は最近流行りの薔薇の花束と大きな箱を抱えている。
姉への贈り物なのだろう。
満面の笑みを浮かべて歩く姿を、部屋へと消えるまで見続ける。
視界から消え、一人になると溜息が無意識に出た。
「リリアローズ様」
後ろからの声でビクリと肩が揺れる。
振り返れば家令のセバスチャンが痛ましげに私を見ていた。
「・・・誰にも言ってはいけませんよ」
「なぜでございます・・・あれは明らかに・・・」
「駄目です。それ以上は」
「ですが・・・」
「お父様達のお手を煩わせる訳にはいかないの。だから、内緒です。ごめんなさい」
「・・・分かりました。ですが、これ以上悪い状況になるのと判断しましたら、報告致します」
「ありがとうございます。ごめんなさいね」
悩みに悩んだ初老の家令にまた気を使わせてしまった事への罪悪感が湧く。
でも、これらは私への罰なのだから仕方がない。
「部屋に戻りますね」
姉達の邪魔ならならない様に、今度は私がウィリアムが帰るまで部屋に籠ることにした。
「お早う、私。おめでとう、私」
今日は私の18回目の誕生日。
毎年朝になると自分でお祝いする。もう、慣れだ。
いつも通り学園に行き、変わらぬ一日が終わった。
鞄を持って教室から馬車まで向かう。
一人でやって来た私に公爵家専属の御者が花一輪差し出して来た。
「リリアローズお嬢様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます。綺麗ですね。頂いてもよろしいのですか?」
「はい。花一輪で申し訳ないのですが・・・」
「いいえ。嬉しいです」
そっと花を受け取る。よく見ると生花ではない。
「造花?」
「はい。これなら枯れずに飾れますから」
生花を部屋に飾ると、水の世話をするのは当然、私。
それに気遣って造花にしてくれたのだろう。
一輪挿しの花瓶を探さないと。
久しぶりの祝われたプレゼント。
嬉しくて屋敷に帰るまで花を見つめて笑顔でいたらしく、馬車を下りる私を見て御者の彼もニコニコしていた。
「お帰りなさいませ、リリアローズ様」
「セバスチャン。ただいま帰りました」
「おや?先を越されましたね」
「え?」
「お嬢様、コレを」
セバスチャンから差し出された物・・・御者の彼から貰った同じ花一輪。
「これが、何か?」
「遅くなりましたが、お誕生日おめでとうございます」
「あ・・・ありがとうございます」
誕生日プレゼントに同じ花一輪。
二人は私を心から祝ってくれようとしているのが分かった。
嬉しかった。久々に『誕生日おめでとう』と言われたから。
「本当に、ありがとうございます。この二輪飾れる花瓶あったかしら」
「探して参りますね」
「あ、自分で・・・」
「いえ。私が探して参りますので、リリアローズ様は着替えの為にお部屋へお戻りを」
「じゃあ、お願いしますね」
家令の気遣いにも感謝し、二本になった花を大事に抱えて部屋へと戻る私の後ろでセバスチャンが廊下の向こう側に目配せをしている事など知る由もなかった。
「はい。申し訳ございません・・・」
「フフ。本当にいいのですよ。さぁ、行ってください」
私の言葉に躊躇いを見せながらも、主である姉の用事を済ませる為にミアは深く頭を下げた後、一階へと下りて行った。
一人残された私。
此処からでも楽しそうに笑う二人の声が聞こえてくる。
聞きたくなくて踵を返し、自室へと早足で戻った。
翌日。
また、私に気づく事なく姉の部屋へと向かうウィリアムを廊下で見かけた。
今日は最近流行りの薔薇の花束と大きな箱を抱えている。
姉への贈り物なのだろう。
満面の笑みを浮かべて歩く姿を、部屋へと消えるまで見続ける。
視界から消え、一人になると溜息が無意識に出た。
「リリアローズ様」
後ろからの声でビクリと肩が揺れる。
振り返れば家令のセバスチャンが痛ましげに私を見ていた。
「・・・誰にも言ってはいけませんよ」
「なぜでございます・・・あれは明らかに・・・」
「駄目です。それ以上は」
「ですが・・・」
「お父様達のお手を煩わせる訳にはいかないの。だから、内緒です。ごめんなさい」
「・・・分かりました。ですが、これ以上悪い状況になるのと判断しましたら、報告致します」
「ありがとうございます。ごめんなさいね」
悩みに悩んだ初老の家令にまた気を使わせてしまった事への罪悪感が湧く。
でも、これらは私への罰なのだから仕方がない。
「部屋に戻りますね」
姉達の邪魔ならならない様に、今度は私がウィリアムが帰るまで部屋に籠ることにした。
「お早う、私。おめでとう、私」
今日は私の18回目の誕生日。
毎年朝になると自分でお祝いする。もう、慣れだ。
いつも通り学園に行き、変わらぬ一日が終わった。
鞄を持って教室から馬車まで向かう。
一人でやって来た私に公爵家専属の御者が花一輪差し出して来た。
「リリアローズお嬢様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます。綺麗ですね。頂いてもよろしいのですか?」
「はい。花一輪で申し訳ないのですが・・・」
「いいえ。嬉しいです」
そっと花を受け取る。よく見ると生花ではない。
「造花?」
「はい。これなら枯れずに飾れますから」
生花を部屋に飾ると、水の世話をするのは当然、私。
それに気遣って造花にしてくれたのだろう。
一輪挿しの花瓶を探さないと。
久しぶりの祝われたプレゼント。
嬉しくて屋敷に帰るまで花を見つめて笑顔でいたらしく、馬車を下りる私を見て御者の彼もニコニコしていた。
「お帰りなさいませ、リリアローズ様」
「セバスチャン。ただいま帰りました」
「おや?先を越されましたね」
「え?」
「お嬢様、コレを」
セバスチャンから差し出された物・・・御者の彼から貰った同じ花一輪。
「これが、何か?」
「遅くなりましたが、お誕生日おめでとうございます」
「あ・・・ありがとうございます」
誕生日プレゼントに同じ花一輪。
二人は私を心から祝ってくれようとしているのが分かった。
嬉しかった。久々に『誕生日おめでとう』と言われたから。
「本当に、ありがとうございます。この二輪飾れる花瓶あったかしら」
「探して参りますね」
「あ、自分で・・・」
「いえ。私が探して参りますので、リリアローズ様は着替えの為にお部屋へお戻りを」
「じゃあ、お願いしますね」
家令の気遣いにも感謝し、二本になった花を大事に抱えて部屋へと戻る私の後ろでセバスチャンが廊下の向こう側に目配せをしている事など知る由もなかった。
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