異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
上 下
216 / 227
第十五章 ハルハンディア共和国

第二百十話 情報収集

しおりを挟む
屋敷で振る舞われた朝食を取り終え外へ出ると、カーネリアが空から降りてきた。

「イズミ、おはよう!」

「おはよう」

「やっぱり身体が重いよ。運動不足だ!」

カーネリアは運動不足解消の為に、朝から彼方此方を飛び回っていたらしい。
挨拶もそこそこに2人でマスタングの元へ向かうと、既にベリアが待機していた。

「卵は無事に渡せたし、やっとフリーだな」

「そうだな。予定通り火山地帯に行って、まずは温泉だ」

ベリアとイズミは旅の目的を再確認し、マスタングのモニターにて目的地をポイントする。

「アタシは此処でお別れだね。色々な所に挨拶回りがあるし、仲間と一緒に卵を主の元に届くまで見届けるんだ」

「そうか。ならこれを渡しておくよ。火山地帯で会えるだろうし、とりあえずな」

イズミはカーネリアのお気に入りである、七味唐辛子の瓶を渡す。

「…いいの?」

「勿論。何処かで薬師に見せて、同じような物を作って貰うのが良いと思う」

マスタング頼りにし過ぎると、移動範囲に制限がかかってしまう。
それはイズミには問題無いレベルだが、カーネリアにとっては制限になりかねないからだ。

「分かった。じゃ、火山地帯で会おうね!」

「おう」

カーネリアが馬車置場から出ると、仲間と一緒に飛び立って行った。

トレットも馬車置場へやって来たが、グラテミアと一緒に行動をするとの事だったので、イズミ達は完全にフリー状態になった。
とは言っても皆の次の目的地はほぼ一緒なので、離れ離れとも言い難いが。

「さてベリア、まずはこの国の冒険者ギルドに聞き込みを頼む。要注意地点や魔物の出没情報が欲しい」

「分かった。イズミも一応顔を見せてみるか?国が違うと組織も違うぞ」

ベリアの提案も魅力的ではあったが、人混みは疲れそうなので断った。

ギルドの建物は商店街の先にあるらしいので、イズミは商店街で物色をして時間を潰すと言ってふらつき始めた。


ベリアとは昼過ぎに合流すると、飯屋に入り収集してもらった情報を聞く。
勿論、食事のオーダーをするのも忘れない。

「まず魔物騒ぎだが、沼地の一部と森林地帯でチラホラある」

ベリアが持って来た地図を見ながら、場所の照らし合わせをする。

「沼地と言っても時期的な物で、冬場は凍土になるそうだ」

ベリアが指差す場所は、目的地よりも北にある。
ひとまず旅の問題にはならなそうである。

「森林地帯と言ってしまうと広大だけど、目的地までの道では厄介な魔物の情報は無かった。変に迂回をする必要は無いと思う」

森林地帯は大雑把な括りのようで、人によって微妙に認識の差があるらしい。

「気になったのは、最近不法入国者が増えているみたいなんだ」

「国境に壁がある訳ではないからな、入ろうと思えばって所か」

頼んでいた料理が届いたので、それを食べながら話を続ける。

「人攫いや強盗騒ぎの被害が増加してるって、ギルドの受付がボヤいてたよ」

「帝国絡みの可能性は?」

「あるだろうな。根拠は無いけど」

スープを飲んで身体を温めながら、一度周囲を見渡す。
パッと見た限り、自分達を観察している者は見当たらなかった。

「なら気に病んでも仕方が無いな」

イズミはスパッと考えるのを止めて、旅の事を考えるように切り替える。

「今日はあの屋敷に泊まって良いと許可も貰ってる。明日出発しよう」

「じゃ、今日のうちに買い出しだな」

食事を済ませ会計をして飯屋を出る。

「イズミ、あれ!」

飯屋から出た途端、ベリアが武器屋へ一直線に走り出す。
イズミが追いつくと、ベリアは武器屋に飾られているククリナイフを見ていた。

「どうした?」

「ドワーフ特製の大型ナイフだ」

興味津々なベリアが店員にナイフを取り出してもらうと、軽く構えて相性を確かめる。

「?なんか違う」

ベリアが困ったような声でナイフを構え直すが、首を傾げたままである。

「何が違うんだ?」

店の奥からドワーフの男がやって来た。

「なんか、しっくり来ない」

ベリアが正直に答え、自分のナイフと見比べる。
使っている素材が違うからか、ドワーフのナイフの方が輝きが良い気がするが、一方はマスタングの魔改造ククリナイフだからか、見劣りはしない。

「うん?お前さん、こりゃ随分なナイフじゃないか!買い替えるなんて勿体無い」

「ドワーフ特製のナイフに憧れがあって」

「そうなのか?なら火山地帯にあるドワーフ工房に行くと良い。彼処なら特注で作ってくれるし、色々と相談にも乗ってくれるだろう。そのナイフを見せたらな」

ドワーフからの助言を受けたベリアが、ナイフを仕舞って頷いた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

最強スキルで無双したからって、美女達によってこられても迷惑なだけなのだが……。冥府王は普通目指して今日も無双する

覧都
ファンタジー
男は四人の魔王を倒し力の回復と傷ついた体を治す為に魔法で眠りについた。 三十四年の後、完全回復をした男は、配下の大魔女マリーに眠りの世界から魔法により連れ戻される。 三十四年間ずっと見ていたの夢の中では、ノコと言う名前で貧相で虚弱体質のさえない日本人として生活していた。 目覚めた男はマリーに、このさえない男ノコに姿を変えてもらう。 それはノコに自分の世界で、人生を満喫してもらおうと思ったからだ。 この世界でノコは世界最強のスキルを持っていた。 同時に四人の魔王を倒せるほどのスキル<冥府の王> このスキルはゾンビやゴーストを自由に使役するスキルであり、世界中をゾンビだらけに出来るスキルだ。 だがノコの目標はゾンビだらけにすることでは無い。 彼女いない歴イコール年齢のノコに普通の彼女を作ることであった。 だがノコに近づいて来るのは、大賢者やお姫様、ドラゴンなどの普通じゃない美女ばかりでした。 果たして普通の彼女など出来るのでしょうか。 普通で平凡な幸せな生活をしたいと思うノコに、そんな平凡な日々がやって来ないという物語です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

処理中です...