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第十五章 ハルハンディア共和国
第二百八話 卵の引き渡し
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色々とあった移動ではあったが、遂に火山地帯の麓の都市に到着した。
車内でカーネリアがソワソワしているのがバックミラー越しに分かる。
都市の入り口は城門のようにしっかりとした作りであり、巨人族にも対応しているのかと思える大きさである。
トレットの馬車が旗を掲げると、門の方から兵士がやって来た。
「これはトレット様!緊急の用件ですな。此方へ」
「後ろの者は特別な客人だ。彼等も一緒に」
「御意に」
兵士はトレットからそれ以上の訳を聞く事無く、イズミ達を門へ通した。
兵士達のエスコートで到着したのは、豪華とは違う良い作りの屋敷だった。
馬車置場にマスタングを停めると、カーネリアを降ろす。
直ぐにハーピーの姿に戻ったカーネリアは、勢い良く馬車置場から飛び出した。
「故郷の空は落ち着くわ!」
屋敷の周りを飛んでいるカーネリアの側に、他のハーピー達が寄ってくる。
「皆、ただいま!」
「思ったより早かったじゃない!」
「無事で良かった!」
ハーピー仲間の歓迎を受けるカーネリアを見て、イズミは無事に此処まで来れた事に安堵していた。
「イズミさん、安心するのは未だ早いです。卵と剣の説明が終わってません」
トレットがため息混じりに言ったので、イズミは大きく深呼吸をした。
「どう説明したものか」
当事者2名は気が重かった。
屋敷の従者に案内され、一度身を整える為に浴室を割り当てられた。
武装をショルダーバッグに仕舞い、身体を洗いに向かう。
浴室と言ってもシャワー室のようなものだったが、これでも有り難い。
魔石に触れると心地よい温度の湯が出て来ると説明を受け、使ってみると少し熱いくらいの湯が出て来て少し泣けてしまった。
屋敷の者が用意した服に着替えると、広間へ案内された。
そこには既にトレットが座っていた。
「ベリアは?」
「彼女はカーネリアさん達と旅の話で盛り上がってます」
イズミは指定された椅子に座り待っていると、大きな扉が開かれた。
現れたのは、トレットより二回りは大きなラミア族の女性だった。
「始めまして、私はグラテミアと申します。この娘の母の代理です。貴方が娘を救い出してくれたのね?感謝してもしきれませんわ。お礼に付きましては後程ご相談させて頂ければと存じます」
「私は手助けをしただけでして。お礼については、卵が無事に主の元へ届いてからで構いません。元々は私が届けるつもりでしたので」
優しくおっとりとした落ち着いた声のグラテミアは、ブランケットに包まれた件の卵を抱き締めている。
一通りの再会は済ませ、大分落ち着いているようだ。
「…薄汚い人間族の盗賊がこの娘を誘拐した時より、魔力量が増えているのが気になりますが」
「それはですね」
トレットが説明を始める前に、イズミが正直に言った。
「グラテミア様。我々にも説明が難しい事象もありまして、その辺りは御容赦頂きたく…」
そして、トレットとイズミは卵にあった事を全て伝えた。
「はぁ…疲れた」
全ての説明を聞いたグラテミアは、暫く放心状態だった。
無理もない。
どうやらグラテミアが娘の様子を調べると、マスタングの魔力と魔剣?の能力が娘に完全に融合しているらしい。
過去に例が無い事象の為、共和国きっての魔術師達が調査をする手筈になったそうだ。
「私は娘が元気に産まれてくれれば、それで良いのよ。私からしたら孫だけれども」
疲れた表情のグラテミアが、卵を撫でながら呟く。
「これで、私の仕事も終わりです」
イズミは卵の引き渡しをもって、仕事の完了と判断した。
「あらイズミさん、次は何方に?」
「ちゃんと火山地帯まで行きますよ。折角此処まで来たのですから、温泉とやらに入ってみたいので」
トレットの質問に答える。
この仕事を引き受ける前からの目的の1つ、それが温泉である。
「温泉ですか…」
何か考え込む様子のトレットを見て、グラテミアが目を細める。
「トレット、公務以外に考え事でも?」
「い、いえ!そんな事はありませんわ!」
トレットの顔色がコロコロと変わるので、隠し事があるのがバレバレなのである。
どうやら公務以外に思い悩む事があると踏んだグラテミアが、イズミを見てから小さくため息をついた。
「この子は真面目なのだけど、少し執着心が強くて。それが普段は公務に向いているのですが、今は何か別の物に興味があるようね」
イズミはグラテミアの台詞を聞いて、ここ数日のトレットを思い出す。
浮かんで来るのは1つだけ、ジントニックの存在である。
車内でカーネリアがソワソワしているのがバックミラー越しに分かる。
都市の入り口は城門のようにしっかりとした作りであり、巨人族にも対応しているのかと思える大きさである。
トレットの馬車が旗を掲げると、門の方から兵士がやって来た。
「これはトレット様!緊急の用件ですな。此方へ」
「後ろの者は特別な客人だ。彼等も一緒に」
「御意に」
兵士はトレットからそれ以上の訳を聞く事無く、イズミ達を門へ通した。
兵士達のエスコートで到着したのは、豪華とは違う良い作りの屋敷だった。
馬車置場にマスタングを停めると、カーネリアを降ろす。
直ぐにハーピーの姿に戻ったカーネリアは、勢い良く馬車置場から飛び出した。
「故郷の空は落ち着くわ!」
屋敷の周りを飛んでいるカーネリアの側に、他のハーピー達が寄ってくる。
「皆、ただいま!」
「思ったより早かったじゃない!」
「無事で良かった!」
ハーピー仲間の歓迎を受けるカーネリアを見て、イズミは無事に此処まで来れた事に安堵していた。
「イズミさん、安心するのは未だ早いです。卵と剣の説明が終わってません」
トレットがため息混じりに言ったので、イズミは大きく深呼吸をした。
「どう説明したものか」
当事者2名は気が重かった。
屋敷の従者に案内され、一度身を整える為に浴室を割り当てられた。
武装をショルダーバッグに仕舞い、身体を洗いに向かう。
浴室と言ってもシャワー室のようなものだったが、これでも有り難い。
魔石に触れると心地よい温度の湯が出て来ると説明を受け、使ってみると少し熱いくらいの湯が出て来て少し泣けてしまった。
屋敷の者が用意した服に着替えると、広間へ案内された。
そこには既にトレットが座っていた。
「ベリアは?」
「彼女はカーネリアさん達と旅の話で盛り上がってます」
イズミは指定された椅子に座り待っていると、大きな扉が開かれた。
現れたのは、トレットより二回りは大きなラミア族の女性だった。
「始めまして、私はグラテミアと申します。この娘の母の代理です。貴方が娘を救い出してくれたのね?感謝してもしきれませんわ。お礼に付きましては後程ご相談させて頂ければと存じます」
「私は手助けをしただけでして。お礼については、卵が無事に主の元へ届いてからで構いません。元々は私が届けるつもりでしたので」
優しくおっとりとした落ち着いた声のグラテミアは、ブランケットに包まれた件の卵を抱き締めている。
一通りの再会は済ませ、大分落ち着いているようだ。
「…薄汚い人間族の盗賊がこの娘を誘拐した時より、魔力量が増えているのが気になりますが」
「それはですね」
トレットが説明を始める前に、イズミが正直に言った。
「グラテミア様。我々にも説明が難しい事象もありまして、その辺りは御容赦頂きたく…」
そして、トレットとイズミは卵にあった事を全て伝えた。
「はぁ…疲れた」
全ての説明を聞いたグラテミアは、暫く放心状態だった。
無理もない。
どうやらグラテミアが娘の様子を調べると、マスタングの魔力と魔剣?の能力が娘に完全に融合しているらしい。
過去に例が無い事象の為、共和国きっての魔術師達が調査をする手筈になったそうだ。
「私は娘が元気に産まれてくれれば、それで良いのよ。私からしたら孫だけれども」
疲れた表情のグラテミアが、卵を撫でながら呟く。
「これで、私の仕事も終わりです」
イズミは卵の引き渡しをもって、仕事の完了と判断した。
「あらイズミさん、次は何方に?」
「ちゃんと火山地帯まで行きますよ。折角此処まで来たのですから、温泉とやらに入ってみたいので」
トレットの質問に答える。
この仕事を引き受ける前からの目的の1つ、それが温泉である。
「温泉ですか…」
何か考え込む様子のトレットを見て、グラテミアが目を細める。
「トレット、公務以外に考え事でも?」
「い、いえ!そんな事はありませんわ!」
トレットの顔色がコロコロと変わるので、隠し事があるのがバレバレなのである。
どうやら公務以外に思い悩む事があると踏んだグラテミアが、イズミを見てから小さくため息をついた。
「この子は真面目なのだけど、少し執着心が強くて。それが普段は公務に向いているのですが、今は何か別の物に興味があるようね」
イズミはグラテミアの台詞を聞いて、ここ数日のトレットを思い出す。
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