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第十四章 運び屋稼業も楽じゃない
第百八十一話 信用してません
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ベリアは冒険者ギルドが運営する宿屋で宿泊を決め、カーネリアと共に一泊する事にした。
イズミは相も変わらずマスタングから離れる選択をせず、馬車置場にて眠る準備をする。
宿屋も馬車置場から歩いて2分程度の距離であるが、緊急時の2分は痛い。
ショルダーホルスターからマグナムを取り出し、シリンダーを外して弾を込め直す。
撃ち終えた2発の空薬莢をバッグに入れ込み、仮眠を取り始める。
翌朝、鳥の鳴き声で目覚めたイズミは、馬車置場の隣にある広場でコーヒーを作り始める。
朝の1杯は格別なのだ。
「…苦い」
何度作っても苦いコーヒーしか作れない。
不味い訳ではないので、時間をかけて飲み切る。
「イズミ様、ギルドマスターがお呼びなのですが…ご都合よろしいでしょうか?」
冒険者ギルドの従業員が呼びに来たが、マスタングを1人にするのは不安だったので、ベリアとカーネリアが来たタイミングでギルドマスターの元へ向かった。
ギルドマスターの部屋に入ると、奥のデスクで事務作業をしているギルドマスターと、手前のソファに座る男が2人居る。
格好からして冒険者だ。
「用があるなら要領良く簡潔に頼みたい」
イズミはソファに座らず、壁に背中を預けてから口を開いた。
「では…イズミ殿が言った通りの場所にて馬車を発見した。証言通り金貨や銀貨、帝国籍の兵士の死体も確認出来た」
イズミは従業員から手渡された報告資料…勿論読めない…を眺めつつ、次の言葉を待った。
「馬車の所有者は帝国が運営する、この王国内でも有名なイスベランド商会のものだった」
「帝国とこの王国は仲は悪いが、交流は停止されている訳ではないんだ」
ソファに座っている男が話を繋げる。
「魔族の卵を強奪した件については、冒険者ギルド及び国王直属の部隊で調査する事になるだろう…昨晩早馬で書面を送ったので、書面の到着は4日後だ」
「魔族との協定に違反している連中への処罰は厳格に行われる事は保証する。それで…件の卵についてなのだが」
イズミは提案を聞く前に言い切った。
「卵は私が責任を持って主の下へお返しします。私が頼まれた仕事であり、私の任務です」
その言葉を聞いたギルドマスターが、声を低くしてイズミに問うた。
「冒険者でも無い貴方に、魔族との戦争にもなりかねない事案を任せる事は、国の威信にも関わるのです」
「俺のような無宿人には関係無い話だ…俺が依頼を受け、引き受けた仕事なんだ。支援をするならともかく、邪魔をするなら冒険者ギルドでも容赦しないぞ」
腕を組み悟られないようにマグナムのグリップを握る。
これで相手がどう動くか…
「ギルドマスター、この男に任せるのなら我々の信頼出来る者を付けた方が良いかと。責任感はありますが、敵味方の区別がシビア過ぎます。悪戯に敵を増やし卵を危険に晒すかもしれません」
「王国も一枚岩ではありません…帝国の息がかかった貴族も多い故、安全に運ぶには国王直属の騎士隊に取り次ぐのが理想かと存じます」
聞いている限りでは妥当な判断をしている2人に関心しつつ、自分とマスタングの能力に関して把握していない事から、国王はまだエレナとアレクセイから聞いた話を広めてはいないように感じた。
「議論を交わすのは構いませんが、我々は先を急ぎます。この仕事にはスピードが大切なので」
イズミは腕を組んだまま部屋を立ち去ろうと歩き出す。
「イズミ殿なら、どのくらいで目的地に到着するのです?」
背中越しに聞こえたギルドマスターの声は、イズミを試すかのようだった。
「…満月が新月に変わる迄には」
「有り得ん!」
ソファに座っていた男が立ち上がると、イズミへ詰め寄って来る。
「聞いていれば現実味の無い事ばかり吐かして、1人で出来る範疇に無い事くらい分かるだろう!もっと国と世界の事を見て考えたらどうだ?この事案は正しく危機的状況なのだぞ!」
「だったら尚更、貴方達を信用出来ない。国王直属の騎士隊?動き出すのに何日必要だ?その間に昨日現れた馬鹿野郎と同じ考えの者達が集団で襲撃して来たら守り切れるのか?魔族から直接依頼を受けた俺から依頼を奪った事になる騎士隊に対して、魔族はどう対応するか考えたか?」
男がイズミの肩を掴んだが、イズミは無視をして部屋の扉に左手を掛ける。
「昼過ぎにはこの町を出発します。移動しない運び屋は、運び屋ではありませんので」
イズミはマグナムを使う事が無くて安心したが、また冒険者ギルドとの関係悪化しただろう現状に苦笑するしかなかった。
イズミは相も変わらずマスタングから離れる選択をせず、馬車置場にて眠る準備をする。
宿屋も馬車置場から歩いて2分程度の距離であるが、緊急時の2分は痛い。
ショルダーホルスターからマグナムを取り出し、シリンダーを外して弾を込め直す。
撃ち終えた2発の空薬莢をバッグに入れ込み、仮眠を取り始める。
翌朝、鳥の鳴き声で目覚めたイズミは、馬車置場の隣にある広場でコーヒーを作り始める。
朝の1杯は格別なのだ。
「…苦い」
何度作っても苦いコーヒーしか作れない。
不味い訳ではないので、時間をかけて飲み切る。
「イズミ様、ギルドマスターがお呼びなのですが…ご都合よろしいでしょうか?」
冒険者ギルドの従業員が呼びに来たが、マスタングを1人にするのは不安だったので、ベリアとカーネリアが来たタイミングでギルドマスターの元へ向かった。
ギルドマスターの部屋に入ると、奥のデスクで事務作業をしているギルドマスターと、手前のソファに座る男が2人居る。
格好からして冒険者だ。
「用があるなら要領良く簡潔に頼みたい」
イズミはソファに座らず、壁に背中を預けてから口を開いた。
「では…イズミ殿が言った通りの場所にて馬車を発見した。証言通り金貨や銀貨、帝国籍の兵士の死体も確認出来た」
イズミは従業員から手渡された報告資料…勿論読めない…を眺めつつ、次の言葉を待った。
「馬車の所有者は帝国が運営する、この王国内でも有名なイスベランド商会のものだった」
「帝国とこの王国は仲は悪いが、交流は停止されている訳ではないんだ」
ソファに座っている男が話を繋げる。
「魔族の卵を強奪した件については、冒険者ギルド及び国王直属の部隊で調査する事になるだろう…昨晩早馬で書面を送ったので、書面の到着は4日後だ」
「魔族との協定に違反している連中への処罰は厳格に行われる事は保証する。それで…件の卵についてなのだが」
イズミは提案を聞く前に言い切った。
「卵は私が責任を持って主の下へお返しします。私が頼まれた仕事であり、私の任務です」
その言葉を聞いたギルドマスターが、声を低くしてイズミに問うた。
「冒険者でも無い貴方に、魔族との戦争にもなりかねない事案を任せる事は、国の威信にも関わるのです」
「俺のような無宿人には関係無い話だ…俺が依頼を受け、引き受けた仕事なんだ。支援をするならともかく、邪魔をするなら冒険者ギルドでも容赦しないぞ」
腕を組み悟られないようにマグナムのグリップを握る。
これで相手がどう動くか…
「ギルドマスター、この男に任せるのなら我々の信頼出来る者を付けた方が良いかと。責任感はありますが、敵味方の区別がシビア過ぎます。悪戯に敵を増やし卵を危険に晒すかもしれません」
「王国も一枚岩ではありません…帝国の息がかかった貴族も多い故、安全に運ぶには国王直属の騎士隊に取り次ぐのが理想かと存じます」
聞いている限りでは妥当な判断をしている2人に関心しつつ、自分とマスタングの能力に関して把握していない事から、国王はまだエレナとアレクセイから聞いた話を広めてはいないように感じた。
「議論を交わすのは構いませんが、我々は先を急ぎます。この仕事にはスピードが大切なので」
イズミは腕を組んだまま部屋を立ち去ろうと歩き出す。
「イズミ殿なら、どのくらいで目的地に到着するのです?」
背中越しに聞こえたギルドマスターの声は、イズミを試すかのようだった。
「…満月が新月に変わる迄には」
「有り得ん!」
ソファに座っていた男が立ち上がると、イズミへ詰め寄って来る。
「聞いていれば現実味の無い事ばかり吐かして、1人で出来る範疇に無い事くらい分かるだろう!もっと国と世界の事を見て考えたらどうだ?この事案は正しく危機的状況なのだぞ!」
「だったら尚更、貴方達を信用出来ない。国王直属の騎士隊?動き出すのに何日必要だ?その間に昨日現れた馬鹿野郎と同じ考えの者達が集団で襲撃して来たら守り切れるのか?魔族から直接依頼を受けた俺から依頼を奪った事になる騎士隊に対して、魔族はどう対応するか考えたか?」
男がイズミの肩を掴んだが、イズミは無視をして部屋の扉に左手を掛ける。
「昼過ぎにはこの町を出発します。移動しない運び屋は、運び屋ではありませんので」
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