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第十四章 運び屋稼業も楽じゃない
第百八十話 味気無さには調味料
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カーネリアが抱き抱えている卵を、マスタングに頼んで厳重に守護させてから、3人で冒険者ギルドが運営する宿屋の食事処へ向かう。
ギルド長にも話をしてから向かったので、店に入るのはスムーズだった。
そこまでは良かった。
頼んだ料理も悪くは無い。
牛の姿にそっくりだと言う魔物のステーキ、地元で採れた野菜のスープ、保存の効く黒パンよりは柔らかく作られたパン。
悪くは無いのだ。
しかし。
「味気が足りない」
イズミはもう少し味気が欲しい気分だったのだ。
「そうか?美味いと思うが。カーネリアはどうだ?」
「そのまま食べるよりは美味しい」
「そのままって…生肉か?」
ステーキをパクパクと食べるカーネリアに、少し引いているベリアだった。
「調味料とか香辛料とか、そう言うのが欲しい気分なのかもな。エレナの所で食べた料理もこのくらいの味付けだったはず…」
馬鹿と話をしたストレスなのか、少しの気分転換を食事に求めているのかもしれない。
「イズミ…香辛料とかは臭い消しに使うのは知ってるが、味にまで関係があるのか?」
「勿論、上手に使えば激的に変わる」
ちょっと待ってろと言ってイズミはマスタングの待つ馬車置場へ向かう。
「マスタング、ブラックペッパーと七味唐辛子を小瓶で1個用意してくれ」
マスタングがトランクを開けると、ミニチュアボトルサイズの瓶が置いてある。
酒で言うなら50ml位の大きさの瓶だった。
それを回収すると、ベリア達の元へ帰る。
2人は丁度スープを飲む所だった。
イズミは小瓶をテーブルに置いて中身の説明をする。
「この瓶の中身は黒胡椒だ。少し入れるだけで味わい深いものになる。入れ過ぎると食えたもんじゃなくなる」
試しに自分のスープに少しだけ黒胡椒をかける。
「このくらいでも十分だ。コッチの赤いのは唐辛子と数種類の薬味を混ぜたものだ。辛さと風味が増して美味いぞ…これも入れ過ぎには注意が必要だ」
イズミの説明を聞き終えた2人は、恐る恐る瓶を手に取る。
ベリアは黒胡椒、カーネリアは七味唐辛子を1振りスープに振りかけた。
「…!?美味い」
「良い香り…スープの温かさとは違う熱で身体が温まる」
2人の反応が面白くて思わず笑いそうになったが、イズミも自分のスープを飲む。
素材の持つ素朴さも感じつつ、黒胡椒が効いて美味しい。
3人共完食し食器を片付け、馬車置場へ戻ろうとすると背後から声を掛けられた。
イズミが振り向くと、店の料理人らしき男が立っていた。
「なぁアンタ、さっきスープに何を振りかけてたんだ?」
「…貴方は?」
「おっとすまない。私は料理人のモンクスだ。休憩の時にチラッと見ちまってな…風に乗って良い香りがしたので気になっちまったんだ」
モンクスと名乗る料理人は、調味料に興味があるようだ。
香りが風に乗って来たと言うが、この料理人は嗅覚が鋭敏なのだろうか。
ポケットに仕舞っていた2つの小瓶を取り出し、静かにカウンターに乗せる。
「胡椒と七味唐辛子…薬味のブレンドです」
小瓶を見る料理人の目が輝いているように感じるが、あえて口には出さなかった。
「興味があるなら使ってみるか?」
「良いのか?」
探求心を隠せていない料理人が小瓶を手に取る。
「俺は商人じゃ無いから代金は要らん。代わりに、美味かったら感想くらいは聞きたいかな」
マスタングに実体化させるのも手間だ。
それも七味唐辛子の小瓶だけを実体化させるのも微妙な心境である。
しかし、この世界で作れるか分からない代物なのだ。
自分が知らないだけではあるが。
色々と考えた結果の言葉だった。
「分かった。早速試してみるとしよう」
料理人はその手に小瓶を握り締め、厨房へと入っていった。
ギルド長にも話をしてから向かったので、店に入るのはスムーズだった。
そこまでは良かった。
頼んだ料理も悪くは無い。
牛の姿にそっくりだと言う魔物のステーキ、地元で採れた野菜のスープ、保存の効く黒パンよりは柔らかく作られたパン。
悪くは無いのだ。
しかし。
「味気が足りない」
イズミはもう少し味気が欲しい気分だったのだ。
「そうか?美味いと思うが。カーネリアはどうだ?」
「そのまま食べるよりは美味しい」
「そのままって…生肉か?」
ステーキをパクパクと食べるカーネリアに、少し引いているベリアだった。
「調味料とか香辛料とか、そう言うのが欲しい気分なのかもな。エレナの所で食べた料理もこのくらいの味付けだったはず…」
馬鹿と話をしたストレスなのか、少しの気分転換を食事に求めているのかもしれない。
「イズミ…香辛料とかは臭い消しに使うのは知ってるが、味にまで関係があるのか?」
「勿論、上手に使えば激的に変わる」
ちょっと待ってろと言ってイズミはマスタングの待つ馬車置場へ向かう。
「マスタング、ブラックペッパーと七味唐辛子を小瓶で1個用意してくれ」
マスタングがトランクを開けると、ミニチュアボトルサイズの瓶が置いてある。
酒で言うなら50ml位の大きさの瓶だった。
それを回収すると、ベリア達の元へ帰る。
2人は丁度スープを飲む所だった。
イズミは小瓶をテーブルに置いて中身の説明をする。
「この瓶の中身は黒胡椒だ。少し入れるだけで味わい深いものになる。入れ過ぎると食えたもんじゃなくなる」
試しに自分のスープに少しだけ黒胡椒をかける。
「このくらいでも十分だ。コッチの赤いのは唐辛子と数種類の薬味を混ぜたものだ。辛さと風味が増して美味いぞ…これも入れ過ぎには注意が必要だ」
イズミの説明を聞き終えた2人は、恐る恐る瓶を手に取る。
ベリアは黒胡椒、カーネリアは七味唐辛子を1振りスープに振りかけた。
「…!?美味い」
「良い香り…スープの温かさとは違う熱で身体が温まる」
2人の反応が面白くて思わず笑いそうになったが、イズミも自分のスープを飲む。
素材の持つ素朴さも感じつつ、黒胡椒が効いて美味しい。
3人共完食し食器を片付け、馬車置場へ戻ろうとすると背後から声を掛けられた。
イズミが振り向くと、店の料理人らしき男が立っていた。
「なぁアンタ、さっきスープに何を振りかけてたんだ?」
「…貴方は?」
「おっとすまない。私は料理人のモンクスだ。休憩の時にチラッと見ちまってな…風に乗って良い香りがしたので気になっちまったんだ」
モンクスと名乗る料理人は、調味料に興味があるようだ。
香りが風に乗って来たと言うが、この料理人は嗅覚が鋭敏なのだろうか。
ポケットに仕舞っていた2つの小瓶を取り出し、静かにカウンターに乗せる。
「胡椒と七味唐辛子…薬味のブレンドです」
小瓶を見る料理人の目が輝いているように感じるが、あえて口には出さなかった。
「興味があるなら使ってみるか?」
「良いのか?」
探求心を隠せていない料理人が小瓶を手に取る。
「俺は商人じゃ無いから代金は要らん。代わりに、美味かったら感想くらいは聞きたいかな」
マスタングに実体化させるのも手間だ。
それも七味唐辛子の小瓶だけを実体化させるのも微妙な心境である。
しかし、この世界で作れるか分からない代物なのだ。
自分が知らないだけではあるが。
色々と考えた結果の言葉だった。
「分かった。早速試してみるとしよう」
料理人はその手に小瓶を握り締め、厨房へと入っていった。
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