異世界無宿

ゆきねる

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第十四章 運び屋稼業も楽じゃない

第百七十九話 油断は禁物

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イズミが冒険者ギルドの建物から出ようと歩いていると、何人かの冒険者からの視線を感じたが無視を決め込む。

マスタングを停めている馬車置場へ向かうと、職員によって閉められた筈の扉が開いている。

「マスタング、索敵をしてくれ」

「馬車置場内に1名、敵意は…あるようです」

「分かった」

冒険者ギルドの敷地内でもお構い無しなのだろうか?
詳しい話を聞く為にも、殺さずに捕まえないといけない。
イズミはマグナムを抜いて馬車置場へ入った。

「何か用か?」

「!?」

静かに馬車置場に入り込んだイズミが、マスタングに近付いている男に声をかけた。
男は腰に下げた剣を抜いた所だったが、イズミの声に驚いたものの直ぐ様剣をイズミへ向けて急接近する。

しかし、男の剣がイズミに届く事は無かった。
剣を握る右腕をマグナムで撃たれ、その腕が千切れて地面に落ちたからだ。

「ガァ!?ぐぅ…」

血の滴る右腕を抑えた男がうめき声を上げつつ、イズミを睨みつける。
銃声を聞いたギルド職員と冒険者達が駆け寄って来る。

「何かありましたか?」

「チィッ!」

男が逃げようと振り向くと同時に、イズミがもう1発撃った。
今度は足に命中したが、掠めただけで終わった。
それでも男は倒れ込んだ。

「この男が襲いかかって来たので、反撃しただけさ」

イズミは地面に落ちた男の右腕が握っている剣を回収する。
この世界で見慣れた銀色系の剣ではなく、赤味がかった蛇行剣だった。

「これは…見慣れない形の剣だな」

イズミはそうボヤいてから、剣を冒険者ギルドの職員へ手渡した。

「愚か者共め…我々がこの世界の破滅を防ごうとしているのに、何故邪魔をする!?また魔王が復活するぞ!」

どうやらこの男は自分達が正義を司っていると思っているようだ。

「世界の破滅が必然ならば、別に破滅しても構わない。魔王の復活にも危機感を抱いてはいない」

イズミはギルド職員に立たされた男に話を続けた。

「だがな…それを口実に他者の命を奪う奴の方が許せないね。案外世界の破滅のきっかけは、お前みたいな馬鹿野郎が下らない正義を掲げて殺しをするからかもしれんぞ」

「そんな筈は無い!我々は破滅の芽を摘んでいるのだ…断じてそんな筈は無い!」

「そうか?既にアンタは戦争と言う名の松明に炎魔法を投げつける馬鹿をした」

「違う!我々はしているのは火消しだ!魔族と言う邪悪な炎を消さねばならない!」

話が通じないと判断したイズミは男の腹部に1発蹴りをお見舞いし、対話を止めてマグナムを仕舞った。
連行される男は、最後まで世界の破滅を防ぐ為と叫んでいた。

「マスタングから離れるのもリスクがあるか。たく、世界の破滅程度でガタツキやがって…」

「まるでイズミは恐れていないみたいな口振りだな」

「勿論。破滅する時はどんな対策を講じても破滅するし、良くて破滅の先送りと言った所だろう。俺はマスタングと一緒なら、地獄だろうと魔界だろうと破滅後の世界だろうと大歓迎だ。無宿人の覚悟を舐めてもらっちゃ困るな」

小言を聞いていたのか、説明を終えただろうベリアからの指摘に笑顔で答えた。

「イズミ、お腹空いた!」

マスタングの車内からカーネリアが言った。
イズミとベリアは、笑いながら何処で食事をしようかと考え始めた。
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