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第十二章 辺境伯領にて
第百五十九話 不穏な動き
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侵入者騒ぎの翌日。
イズミはブロズムナード辺境伯の屋敷から出て、周囲の散策をしていた。
ベリアはエレナと一緒にゾルダ達から魔法の活用法を学ぶと言って、屋敷に残っている。
しばらくぶりの1人である。
「この辺りか?」
散策ついでに屋敷の囲む壁を見ながら、侵入経路を調べていたのだ。
壁の高さは2.5メートル程であり、やろうと思えば侵入は可能ではあった。
痕跡でもあればと思って地面を眺めてみるが、夜の間に消えてしまったようだ。
めぼしいものは無かった。
「手掛かりは無し、マスタングで反応を追うしかないな」
追跡は後回しにして、今度は商店街のある通りへと歩き出した。
辺境伯の屋敷が近くにあるからなのか、商店街の活気は非常に良い。
軽い朝食を出店で購入する。
薄く平らに焼いたパン生地の上に、焼いた後に食べやすく解された魚と葉野菜を乗せて巻いたような料理だ。
手掴みで食べられる為、街歩きには良い料理だった。
調味料が物足りない以外の欠点は特に感じなかった。
さくっと平らげたイズミは、商店街の散策を再開した。
武器屋だったり魔道具屋だったりをぶらついていると、妙に視線を感じる瞬間があるが、今のところは気にしない事にする。
どんな相手かも分かっていない状態で、変な行動はしたくないのだ。
魔道具屋を出たら、イズミは真っ直ぐ辺境伯の屋敷へと歩き出す。
「マスタング、何人だ?」
「怪しいのは6名で、2人はマスターを追って移動しています」
屋敷に戻る前に、軽く挨拶をすべきか否か。
そんな事を考えつつ、商店街からそそくさと脱出する。
屋敷の入口手前で、イズミはメガネをかけて振り返った。
通りの左右に1人ずつ、コチラを見ている者がいた。
イズミは警告がてら、その者達に向けて指鉄砲で狙い撃つ素振りをした。
分かっているぞと、丁寧に教えたのだ。
「バン、バン…ってな」
多少の気恥ずかしさはあったが、効果はあった。
物陰に隠れるように下がった2人を見てから、イズミはブロズムナード辺境伯の屋敷の入口の門をくぐった。
屋敷に戻ると、ゾルダの訓練を受けている2人の姿があった。
ベリアは魔改造ククリナイフに風魔法を纏わせる訓練を、エレナは氷魔法で剣や盾を作る訓練をしていた。
「イズミか。イズミも魔法の特訓をするか?」
「俺は魔法が使えない体質なんだ」
そう言ってイズミは、2人の訓練を観察する事にした。
「氷魔法ってのは、広範囲攻撃や防御ってのは出来るのか?」
まだ剣と盾を同時には作れていないエレナを見ながら、ふと呟いた。
「例えば?」
「例えば…氷の鎧を瞬時に纏うとか、氷の壁とか繭みたいに氷で空間を守る感じかな」
近くに落ちていた木の棒で、地面にイメージを簡単に描いてみる。
「…出来なくはないだろう。要訓練だな」
イズミの言う氷魔法の運用に感心するゾルダだったが、簡単に出来るものではない。
氷魔法は水魔法の上位魔法なのだ。
先ずは水魔法に慣れ、簡単な氷魔法へと繋げる訓練が必要なのだ。
「氷魔法を体得出来れば、王家からも重宝されるな」
辺境伯としての業務の休憩中だったアレクセイが、エレナの様子を見に来ていた。
「王国広しと言えども、氷魔法の使い手は少ない。貴族なら尚更だ」
だからこそ、王家の人間との結婚話にエレナの存在が急浮上する訳だがと、アレクセイは苦笑しつつ付け加えた。
「他の貴族達も、エレナ様の情報収集に動き出しているかと」
ゾルダがアレクセイに進言する。
「昨夜の侵入者の仲間なら、まだ近くにいるだろうな…今朝商店街に行ったら、俺ですら尾行されてたからな」
イズミが今朝の出来事を伝えておいた。
「…王家に取り入る為に、かなり手荒な事をする貴族も居る。注意しなければならんな」
アレクセイが屋敷に戻ると、イズミはゾルダ達と別れてマスタングへと向かった。
イズミはブロズムナード辺境伯の屋敷から出て、周囲の散策をしていた。
ベリアはエレナと一緒にゾルダ達から魔法の活用法を学ぶと言って、屋敷に残っている。
しばらくぶりの1人である。
「この辺りか?」
散策ついでに屋敷の囲む壁を見ながら、侵入経路を調べていたのだ。
壁の高さは2.5メートル程であり、やろうと思えば侵入は可能ではあった。
痕跡でもあればと思って地面を眺めてみるが、夜の間に消えてしまったようだ。
めぼしいものは無かった。
「手掛かりは無し、マスタングで反応を追うしかないな」
追跡は後回しにして、今度は商店街のある通りへと歩き出した。
辺境伯の屋敷が近くにあるからなのか、商店街の活気は非常に良い。
軽い朝食を出店で購入する。
薄く平らに焼いたパン生地の上に、焼いた後に食べやすく解された魚と葉野菜を乗せて巻いたような料理だ。
手掴みで食べられる為、街歩きには良い料理だった。
調味料が物足りない以外の欠点は特に感じなかった。
さくっと平らげたイズミは、商店街の散策を再開した。
武器屋だったり魔道具屋だったりをぶらついていると、妙に視線を感じる瞬間があるが、今のところは気にしない事にする。
どんな相手かも分かっていない状態で、変な行動はしたくないのだ。
魔道具屋を出たら、イズミは真っ直ぐ辺境伯の屋敷へと歩き出す。
「マスタング、何人だ?」
「怪しいのは6名で、2人はマスターを追って移動しています」
屋敷に戻る前に、軽く挨拶をすべきか否か。
そんな事を考えつつ、商店街からそそくさと脱出する。
屋敷の入口手前で、イズミはメガネをかけて振り返った。
通りの左右に1人ずつ、コチラを見ている者がいた。
イズミは警告がてら、その者達に向けて指鉄砲で狙い撃つ素振りをした。
分かっているぞと、丁寧に教えたのだ。
「バン、バン…ってな」
多少の気恥ずかしさはあったが、効果はあった。
物陰に隠れるように下がった2人を見てから、イズミはブロズムナード辺境伯の屋敷の入口の門をくぐった。
屋敷に戻ると、ゾルダの訓練を受けている2人の姿があった。
ベリアは魔改造ククリナイフに風魔法を纏わせる訓練を、エレナは氷魔法で剣や盾を作る訓練をしていた。
「イズミか。イズミも魔法の特訓をするか?」
「俺は魔法が使えない体質なんだ」
そう言ってイズミは、2人の訓練を観察する事にした。
「氷魔法ってのは、広範囲攻撃や防御ってのは出来るのか?」
まだ剣と盾を同時には作れていないエレナを見ながら、ふと呟いた。
「例えば?」
「例えば…氷の鎧を瞬時に纏うとか、氷の壁とか繭みたいに氷で空間を守る感じかな」
近くに落ちていた木の棒で、地面にイメージを簡単に描いてみる。
「…出来なくはないだろう。要訓練だな」
イズミの言う氷魔法の運用に感心するゾルダだったが、簡単に出来るものではない。
氷魔法は水魔法の上位魔法なのだ。
先ずは水魔法に慣れ、簡単な氷魔法へと繋げる訓練が必要なのだ。
「氷魔法を体得出来れば、王家からも重宝されるな」
辺境伯としての業務の休憩中だったアレクセイが、エレナの様子を見に来ていた。
「王国広しと言えども、氷魔法の使い手は少ない。貴族なら尚更だ」
だからこそ、王家の人間との結婚話にエレナの存在が急浮上する訳だがと、アレクセイは苦笑しつつ付け加えた。
「他の貴族達も、エレナ様の情報収集に動き出しているかと」
ゾルダがアレクセイに進言する。
「昨夜の侵入者の仲間なら、まだ近くにいるだろうな…今朝商店街に行ったら、俺ですら尾行されてたからな」
イズミが今朝の出来事を伝えておいた。
「…王家に取り入る為に、かなり手荒な事をする貴族も居る。注意しなければならんな」
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