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第十二章 辺境伯領にて
第百五十七話 銀の指輪
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イズミは目の前に貴族とSランク冒険者がいる事を利用し、ここ最近で疑問に感じた事に関して相談をしてみた。
「先日、不思議な事がありまして…少し相談に乗っては頂けませんか?」
相談内容は、マスタングですら特定の出来ない魔法反応に関してだ。
イズミはマスタングを世界最強クラスのアーティファクトであり、ほぼチートかつ無敵と呼んでも良い存在だと信じて疑っていない。
そのマスタングが特定出来ないと言うのだから、普通では無い例外的な物や存在なのではと考えたのだ。
例えば、幽霊とか。
「姿形が見えないのに、魔力の気配がある。ですか…」
アレクセイが魔法に詳しい従者を呼び出して話を聞いてくれたが、そんな魔力や魔法反応は聞いたことが無いと言う。
「発見してから、その魔法反応は動いていないのですか?」
「はい、その場に留まっていました。翌朝には消えていましたが」
ゾルダの質問に答える。
「日中帯でも反応を捉えられるのかどうかも気になりますが、何故それを知りたいのです?」
皆の疑問を代弁するかのように、ゾルダが尋ねた。
「分からないままってのは、どうも気分が悪くて…その時はお供え物として酒を瓶1本ままで置いてみたりしたんですが、翌朝には瓶ごと消えておりまして」
イズミはアレクセイにひと声かけてから、マスタングへ向かい銀の指輪を取り出した。
指輪を持って部屋に戻ると、テーブルの上に置いた。
「酒瓶はまるっと消えましたが、代わりにコレが」
アレクセイの従者が魔法で鑑定をしたが、呪術等はかかっていなかった。
マジックアイテムかどうかも見てもらうが、普通の指輪だった。
指輪自体もかなり黒ずんでいるので、装飾だろう彫り物が見づらい状態だった。
「磨き布を持ってまいりました」
従者が持って来た布を使って、指輪を丁寧に磨く。
その動作は慣れたもので、見ていて感心してしまった。
「ありがとう。どれ…」
アレクセイとエレナが、輝きを取り戻した指輪をマジマジと見つめる。
「模様と文字でしょうか?」
「なにかの動物にも見えなくはない」
アレクセイがゾルダへ指輪を渡すと、ゾルダは目を細めながら確認をする。
「…文字よりは、模様に見えますね。動物の頭部にも見えなくは無いですが…古い指輪なので何とも言えませんね」
ゾルダがテーブルの上に指輪を置いた。
イズミがそれを回収して、ポケットへ仕舞った。
「なにかマジックアイテムの類かとも思いましたが、それも無いとすると…手詰まりです」
イズミはアレクセイ達との話を終えると同時に、自身の空腹に気が付いた。
最後に口にしたのは、あの不味い飲み物だ。
軽い食事を取る為にマスタングへと向かい、黒パンでも食べようと思い屋敷から出る。
夜風が心地良い。
「結局、この指輪は何なのか分からずじまいか。なにか意味があるような気がしたが、空振りだったな」
磨かれて綺麗になった指輪を月にかざしてみる。
なかり大柄な人間用の指輪で、イズミの人差し指以上、親指未満のサイズだ。
自分の指には合わない装飾品である。
「ま、酒代の代わりって事で…有り難く頂戴しておくとしますか」
イズミは銀の指輪をマスタングにて保管する事に決めて、まったりと馬車置場へと歩き始めた。
やっとの夜食にありつこうとしていると、マスタングの警戒網に反応があった。
折角のご馳走…硬い黒パンにベリーのジャムを塗っただけ…に口をつける直前と言うタイミングたった。
何と間の悪い者が現れたものだ。
「マスター、本屋敷内に侵入者です。数は3人、全員人間です」
「ベリアに魔法通信を…しまった、まだアーリアに頼んでなかったな」
イズミはベリアとの個別の魔法通信を繋げていない事を思い出し、屋敷へ戻るか1人で対応するかを考える。
「侵入者の武装は分かるか?」
「…ナイフとクロスボウで、防具類は軽装です」
黒パンを一口だけ齧り、最近の戦闘時では必須アイテムになっているメガネをかける。
「この前実体化出来るようにした、消音武器を試してみるか?」
「威力不足かと」
「今回は負傷させられれば良いんだ。侵入者を生け捕りして、色々とお話を聞けたら良いなぁ。なんて」
黒パンを木皿に置いてから、実体化されたサブマシンガンを取り出した。
警察や特殊部隊も愛用するドイツ製のサブマシンガンで、サプレッサーが標準で搭載されているタイプだ。
使用する弾は9mm×19mmのパラベラム弾。
「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ。だったか?」
「力不足です」
相変わらず威力に関しては厳しい意見のマスタングだったが、今回は個人的な実験も兼ねているので良しとしよう。
ストックを伸ばしてからマガジンを挿して初弾を装填し、セレクターをフルオートに切り替える。
予備のマガジンをズボンにねじ込んで移動を開始した。
「先日、不思議な事がありまして…少し相談に乗っては頂けませんか?」
相談内容は、マスタングですら特定の出来ない魔法反応に関してだ。
イズミはマスタングを世界最強クラスのアーティファクトであり、ほぼチートかつ無敵と呼んでも良い存在だと信じて疑っていない。
そのマスタングが特定出来ないと言うのだから、普通では無い例外的な物や存在なのではと考えたのだ。
例えば、幽霊とか。
「姿形が見えないのに、魔力の気配がある。ですか…」
アレクセイが魔法に詳しい従者を呼び出して話を聞いてくれたが、そんな魔力や魔法反応は聞いたことが無いと言う。
「発見してから、その魔法反応は動いていないのですか?」
「はい、その場に留まっていました。翌朝には消えていましたが」
ゾルダの質問に答える。
「日中帯でも反応を捉えられるのかどうかも気になりますが、何故それを知りたいのです?」
皆の疑問を代弁するかのように、ゾルダが尋ねた。
「分からないままってのは、どうも気分が悪くて…その時はお供え物として酒を瓶1本ままで置いてみたりしたんですが、翌朝には瓶ごと消えておりまして」
イズミはアレクセイにひと声かけてから、マスタングへ向かい銀の指輪を取り出した。
指輪を持って部屋に戻ると、テーブルの上に置いた。
「酒瓶はまるっと消えましたが、代わりにコレが」
アレクセイの従者が魔法で鑑定をしたが、呪術等はかかっていなかった。
マジックアイテムかどうかも見てもらうが、普通の指輪だった。
指輪自体もかなり黒ずんでいるので、装飾だろう彫り物が見づらい状態だった。
「磨き布を持ってまいりました」
従者が持って来た布を使って、指輪を丁寧に磨く。
その動作は慣れたもので、見ていて感心してしまった。
「ありがとう。どれ…」
アレクセイとエレナが、輝きを取り戻した指輪をマジマジと見つめる。
「模様と文字でしょうか?」
「なにかの動物にも見えなくはない」
アレクセイがゾルダへ指輪を渡すと、ゾルダは目を細めながら確認をする。
「…文字よりは、模様に見えますね。動物の頭部にも見えなくは無いですが…古い指輪なので何とも言えませんね」
ゾルダがテーブルの上に指輪を置いた。
イズミがそれを回収して、ポケットへ仕舞った。
「なにかマジックアイテムの類かとも思いましたが、それも無いとすると…手詰まりです」
イズミはアレクセイ達との話を終えると同時に、自身の空腹に気が付いた。
最後に口にしたのは、あの不味い飲み物だ。
軽い食事を取る為にマスタングへと向かい、黒パンでも食べようと思い屋敷から出る。
夜風が心地良い。
「結局、この指輪は何なのか分からずじまいか。なにか意味があるような気がしたが、空振りだったな」
磨かれて綺麗になった指輪を月にかざしてみる。
なかり大柄な人間用の指輪で、イズミの人差し指以上、親指未満のサイズだ。
自分の指には合わない装飾品である。
「ま、酒代の代わりって事で…有り難く頂戴しておくとしますか」
イズミは銀の指輪をマスタングにて保管する事に決めて、まったりと馬車置場へと歩き始めた。
やっとの夜食にありつこうとしていると、マスタングの警戒網に反応があった。
折角のご馳走…硬い黒パンにベリーのジャムを塗っただけ…に口をつける直前と言うタイミングたった。
何と間の悪い者が現れたものだ。
「マスター、本屋敷内に侵入者です。数は3人、全員人間です」
「ベリアに魔法通信を…しまった、まだアーリアに頼んでなかったな」
イズミはベリアとの個別の魔法通信を繋げていない事を思い出し、屋敷へ戻るか1人で対応するかを考える。
「侵入者の武装は分かるか?」
「…ナイフとクロスボウで、防具類は軽装です」
黒パンを一口だけ齧り、最近の戦闘時では必須アイテムになっているメガネをかける。
「この前実体化出来るようにした、消音武器を試してみるか?」
「威力不足かと」
「今回は負傷させられれば良いんだ。侵入者を生け捕りして、色々とお話を聞けたら良いなぁ。なんて」
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警察や特殊部隊も愛用するドイツ製のサブマシンガンで、サプレッサーが標準で搭載されているタイプだ。
使用する弾は9mm×19mmのパラベラム弾。
「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ。だったか?」
「力不足です」
相変わらず威力に関しては厳しい意見のマスタングだったが、今回は個人的な実験も兼ねているので良しとしよう。
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