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第十一章 新たな相棒
第百四十九話 再現戦
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イズミが訓練場から出ようとした時、見た目から魔術師だと分かる者が広場に魔法で壁を作り始めた。
「彼女と王都から来た訓練官です。特技は過去視とゴーレムでの再現です」
男が魔術師に声をかけると、ふらふらと近付いて来た。
「何でしょうか?」
「こちらの方が貴方様の魔法に興味を持っておりましたので」
男が魔術師に何か小声で話をしていたが、そこはイズミには聞こえなかった。
「貴方…私の魔法を受けてみる?」
フードを外した女性は、青い髪をしたエルフだった。
「受けるって、俺は冒険者では無いし…多分、何の参考にもならないと思う」
イズミは過去の戦闘を思い出してみた。
村を巻き込んだ賊との戦闘、ゴブリンの巣の討伐、サイクロプス戦、ドラゴンやグリフォン。
見られたとしても、どの冒険者にも参考にならない戦闘ばかりな気がする。
「大丈夫。戦いの記憶はどんな形であっても大切なものだから」
困ったイズミがベリアを見るが、ベリアもイズミの過去の戦闘に興味があるようだ。
大きなため息をついてから、イズミはエルフに答えた。
「分かった…受けよう」
エルフが取り出した水晶にイズミが手をかざすと、呪文を唱え始める。
水晶が光ったと思えば、様々な色に変化する。
暫くして、光が消える。
「終わった…こんな戦闘スタイルは初めて見た」
エルフがそう言いながら、訓練場に魔法をかけた。
広場に現れたのは、サイクロプスだった。
「サイクロプスだと!?」
訓練場内にいた冒険者達から声が上がった。
「記憶だと攻撃をしていたのは4人だけど、私の魔法では相手だけしか再現出来ない」
サイクロプスのゴーレムは1番厄介だった奴を再現しているようで、近くで見てみるとその大きさに圧倒される。
「こんなデカかったのか?」
「過去視で見たから間違いない」
エルフがそんな事を言うので、聞いていた冒険者達も訓練官も近寄って来た。
質問攻めから逃げるように訓練場から出ようとするも、ベリアに左手を掴まれて外へ出られない。
再現とは言えサイクロプスである。
イズミはマスタングに魔法通信を繋げる。
「マスタング。ちょっと面倒な事になった」
「…状況を把握しました。ショットガンをお使い下さい」
イズミはベリアと一緒にマスタングに向かうと、トランクから武器の入った袋を取り出した。
「フルオートショットガンと訓練弾です。散弾ではありませんのでご注意下さい」
マスタングは訓練である事を考慮して、訓練用の弾で実体化をしてくれた。
有り難い事に、マグナムの弾も訓練用のものが入っている。
「…今までで1番シビアな戦闘になるかもな」
イズミは覚悟を決めて訓練場へと歩いて行く。
歩きながらベリアと戦闘での役割分担を説明する。
広場に立つ前に準備を整えると、エルフに声をかけた。
「準備出来たぞ」
「分かった。動かすね」
戦闘判定用だと言うバングルを両方の手に付ける。
ショットガンに初弾を装填して、サイクロプスに銃口を向けた。
ベリアもナイフを抜いて体勢を低くしている。
エルフの声と共に、サイクロプスが動き始めた。
ドンドンドンドン!
ショットガンの連射がサイクロプスの胸部より下へと着弾する。
本物との戦闘より近距離なのもあってか、機敏な動きをするサイクロプスに当てるのは難しいものの、最初の数発以外は命中し始めた。
太腿に命中したのか、体勢が崩れたサイクロプスに対してベリアがナイフで斬りかかる。
ナイフに風魔法を纏わせたらしく、実戦の時のようにサイクロプスは胴体から真っ二つになった。
「やった!?」
ベリアは倒したと思ったようだが、イズミは知っている。
このサイクロプスは上半身のみでも戦闘を続ける怪物だと。
サイクロプスの単眼がベリアを睨みつけると、光線を出そうと構え始める。
光線まで再現するのか分からないが、イズミは弾切れになったショットガンを地面に置くとマグナムと戦闘用ライトを構える。
「ベリア!離れろ!」
素早く後ろへ距離を取るベリアとほぼ同時に、イズミはライトでサイクロプスの目に照射する。
サイクロプスが目を閉じた瞬間を逃さず、胸部を狙ってマグナムを6発撃ち込んだ。
腕に命中してサイクロプスが倒れ込む。
イズミはライトを口に咥えてからマグナムに弾を込め、近付きつつ今度は頭を狙って6発撃ち込んだ。
「ベリア!頭を斬り落とせ!」
「分かった!」
イズミの指示を聞いたベリアが、全力疾走でサイクロプスへ接近してナイフを振り落とした。
実戦の時と同じように、サイクロプスの頭が地面に落ちた。
「再現戦、終了」
エルフの声が聞こえたと思ったら、サイクロプスのゴーレムは土塊へと戻った。
「彼女と王都から来た訓練官です。特技は過去視とゴーレムでの再現です」
男が魔術師に声をかけると、ふらふらと近付いて来た。
「何でしょうか?」
「こちらの方が貴方様の魔法に興味を持っておりましたので」
男が魔術師に何か小声で話をしていたが、そこはイズミには聞こえなかった。
「貴方…私の魔法を受けてみる?」
フードを外した女性は、青い髪をしたエルフだった。
「受けるって、俺は冒険者では無いし…多分、何の参考にもならないと思う」
イズミは過去の戦闘を思い出してみた。
村を巻き込んだ賊との戦闘、ゴブリンの巣の討伐、サイクロプス戦、ドラゴンやグリフォン。
見られたとしても、どの冒険者にも参考にならない戦闘ばかりな気がする。
「大丈夫。戦いの記憶はどんな形であっても大切なものだから」
困ったイズミがベリアを見るが、ベリアもイズミの過去の戦闘に興味があるようだ。
大きなため息をついてから、イズミはエルフに答えた。
「分かった…受けよう」
エルフが取り出した水晶にイズミが手をかざすと、呪文を唱え始める。
水晶が光ったと思えば、様々な色に変化する。
暫くして、光が消える。
「終わった…こんな戦闘スタイルは初めて見た」
エルフがそう言いながら、訓練場に魔法をかけた。
広場に現れたのは、サイクロプスだった。
「サイクロプスだと!?」
訓練場内にいた冒険者達から声が上がった。
「記憶だと攻撃をしていたのは4人だけど、私の魔法では相手だけしか再現出来ない」
サイクロプスのゴーレムは1番厄介だった奴を再現しているようで、近くで見てみるとその大きさに圧倒される。
「こんなデカかったのか?」
「過去視で見たから間違いない」
エルフがそんな事を言うので、聞いていた冒険者達も訓練官も近寄って来た。
質問攻めから逃げるように訓練場から出ようとするも、ベリアに左手を掴まれて外へ出られない。
再現とは言えサイクロプスである。
イズミはマスタングに魔法通信を繋げる。
「マスタング。ちょっと面倒な事になった」
「…状況を把握しました。ショットガンをお使い下さい」
イズミはベリアと一緒にマスタングに向かうと、トランクから武器の入った袋を取り出した。
「フルオートショットガンと訓練弾です。散弾ではありませんのでご注意下さい」
マスタングは訓練である事を考慮して、訓練用の弾で実体化をしてくれた。
有り難い事に、マグナムの弾も訓練用のものが入っている。
「…今までで1番シビアな戦闘になるかもな」
イズミは覚悟を決めて訓練場へと歩いて行く。
歩きながらベリアと戦闘での役割分担を説明する。
広場に立つ前に準備を整えると、エルフに声をかけた。
「準備出来たぞ」
「分かった。動かすね」
戦闘判定用だと言うバングルを両方の手に付ける。
ショットガンに初弾を装填して、サイクロプスに銃口を向けた。
ベリアもナイフを抜いて体勢を低くしている。
エルフの声と共に、サイクロプスが動き始めた。
ドンドンドンドン!
ショットガンの連射がサイクロプスの胸部より下へと着弾する。
本物との戦闘より近距離なのもあってか、機敏な動きをするサイクロプスに当てるのは難しいものの、最初の数発以外は命中し始めた。
太腿に命中したのか、体勢が崩れたサイクロプスに対してベリアがナイフで斬りかかる。
ナイフに風魔法を纏わせたらしく、実戦の時のようにサイクロプスは胴体から真っ二つになった。
「やった!?」
ベリアは倒したと思ったようだが、イズミは知っている。
このサイクロプスは上半身のみでも戦闘を続ける怪物だと。
サイクロプスの単眼がベリアを睨みつけると、光線を出そうと構え始める。
光線まで再現するのか分からないが、イズミは弾切れになったショットガンを地面に置くとマグナムと戦闘用ライトを構える。
「ベリア!離れろ!」
素早く後ろへ距離を取るベリアとほぼ同時に、イズミはライトでサイクロプスの目に照射する。
サイクロプスが目を閉じた瞬間を逃さず、胸部を狙ってマグナムを6発撃ち込んだ。
腕に命中してサイクロプスが倒れ込む。
イズミはライトを口に咥えてからマグナムに弾を込め、近付きつつ今度は頭を狙って6発撃ち込んだ。
「ベリア!頭を斬り落とせ!」
「分かった!」
イズミの指示を聞いたベリアが、全力疾走でサイクロプスへ接近してナイフを振り落とした。
実戦の時と同じように、サイクロプスの頭が地面に落ちた。
「再現戦、終了」
エルフの声が聞こえたと思ったら、サイクロプスのゴーレムは土塊へと戻った。
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