異世界無宿

ゆきねる

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第十一章 新たな相棒

第百四十二話 ご迷惑おかけします

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「マスター、魔法反応を検知しました。数は12、武装しています」

マスタングから報告を受けたイズミが、ベッドから起き上がり身支度を整える。

月明かりで腕時計を見ると2時を過ぎた所だった。

腕時計を掌側に付け替え、マグナムを抜いてから腰にあるライトに触れる。
底部にある魔石を強く押し込んでいる時だけ光る、戦闘用の強力なライトだ。

布袋からメガネを取り出してから、物音を立てないように注意しつつ扉を開ける。

廊下は深夜なので月明かりが差し込まない場所は真っ暗だ。
イズミはメガネをかけて暗闇を睨むが、廊下には誰もいないようだ。

「マスタング。現状報告を頼む」

「…魔法反応は12、全員が人間で武装中、宿屋への侵入は0、隣の建物を含めて囲むような陣形です」

イズミは廊下の壁際を静かに進む。
宿屋の玄関口付近までやって来ると、なんと先客がいた。

目を凝らしてみると、猫型の獣人だった。
ライトをつけずに銃を構えると、獣人と目があった。

手に持ったクロスボウを此方に向けて来たので、マグナムの銃口を外してから小声で話しかけた。

「待て…俺は敵じゃない。外で武器を持っている奴等に用がある」

「…分かった」

相手も分かってくれたのか、クロスボウを外へ向ける。

「俺は外へ出たら左手に入る。アンタは…好きに戦ってくれて構わない」

イズミはゆっくりと宿屋の扉を開けると、左へ曲がって物陰に隠れた。
幸運な事に、扉から出た時点での攻撃は来なかった。
マスタングからの情報がメガネに入って来る。

魔法反応が可視化されたので、近くの反応に対してマグナムを構えて1発撃ち込んだ。

減音弾では無いので、深夜の町に44マグナムの咆哮が轟いた。
同時に叫び声が聞こえたので、命中はしたがまだ命はあるようだ。

銃声を聞いた者達が一斉に行動を起こす。
素早く接近して来た者に対して、イズミは戦闘用ライトを照射した。

「グ!」

しっかりと相手の目に照射して、動きが止まった一瞬の間にマグナムを撃ち込む。

その場に残っていると危険なので、身を屈めながら素早く移動する。

通りに魔法反応が距離をおいて3つあったが、その中の1つが近付いて来た。
イズミの近くにナイフが刺さった。

相手の武器は投げナイフだったのだ。
再度投げて来る前に、ライトを握った左手を左上に伸ばし、身体を右側へ動きつつ照射した。

飛んできたナイフはライトの上を通過し、ほぼ同時にマグナムの轟音が響いた。

相手が倒れ込んだのを確認してから、別の物陰へと移動して弾込めをした。


「ぐぇ!」

マスタングを駐車している方から、カエルが潰されたかのような声がしたので駆け寄ると、マスタングが男を轢いていた。

見ると足が酷い事になっているが、敵なので気にしない事にした。

「なんだ?」

「デカい音を出しやがって!何時だと思ってるんだ!」

そんな声が聞こえて来た。
どうやら眠っていた人達を起こしてしまったようだ。

イズミはメガネで確認出来た反応を少しだけ追跡した。
反応が3つ、何か乗り物のような物に乗ったように見えたのでライトを照射する。

黒い馬車だった。
暗闇に紛れるように隠されていた馬車が、勢い良く動き出した。
走り去る馬車に対してイズミは両手でマグナムを構え5発撃ち込んだが、馬車は止まる事は無かった。


「おい、なんだあの派手な音を出す武器は?」

マグナムをショルダーホルスターに仕舞ったイズミの背後から、怠そうかつ荒い女の声が聞こえた。

「かなり五月蝿かったかな…すまない」

振り返ると、戦闘を始める直前に宿屋で会った先客の獣人だった。
宿屋の前には生け捕りになった者達が並べられ、残念ながら死んだ者達は深夜帯に銃声で起こされた男衆によって何処かへ運ばれていった。
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