141 / 313
第十章 気楽な一人旅
第百三十八話 第三王子来たる
しおりを挟む
町の通りから離れて宿屋へと歩いていると、やたら豪華絢爛な馬車が向かいからやって来るのが見えた。
イズミは嫌な予感がしたので、一瞬で周囲を見てから裏通りへと入って行った。
馬車が通り過ぎるのを確認してから、少しだけ間をあけて宿屋へと戻った。
「お客様、先程お客様宛てに来客がありました」
宿屋の従業員から声をかけられたイズミは、来客の特徴を聞いた。
「…心当たりは無いな」
緑髪のおかっぱ頭に紅い目、色白で高級な服を着た貴族か商人と言う説明に対して、イズミは一言で片付けた。
部屋に戻ったイズミがマスタングに確認をしてみる。
「マスタング。何か異常はあったか?俺宛てに来客があったらしいが」
「…特に問題はありません。来客に関してですが、まだ明確な敵意は感じませんでした」
マスタングがそう言うならば、取り敢えずは大丈夫なのだろう。
「俺に用事のある奴って、どんなだろうな」
「マスター。ほとんどの場合、マスターを利用して利益を得たい者達です。マスターの事を利益をもたらす駒としか考えていないと思っておいた方が良いかと」
駒とか歯車になるのは、元いた世界で生きていた時だけで十分である。
この世界では自由でありたい。
イズミはベッドに横になりつつ、明日にでもまたやって来そうな来客に頭を悩ませていた。
翌日。
朝1番で宿屋に挨拶を済ませたイズミは、マスタングへと乗り込み次の町へと向かおうと通りへ出る。
「嫌な予感ってのは、当たるもんだな」
道を何台もの馬車が塞いでいた。
そして、衛兵にも冒険者にも見えない兵士達が武器を持って立っている。
イズミは車内から周囲を見てみるが、町の住人は見当たらなかった。
ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、家から出て来ていないようだ。
「マスタング。取り敢えず戦闘態勢だ」
「かしこまりました」
グローブボックスから出て来たメガネをかけてから、兵士や馬車の動向を確認する。
「反応は全部で50です」
「厄介な相手はいるか?」
「…我々の火力であれば、問題ありません」
イズミはグレネードランチャーを実体化させてから、何時でも撃てるように準備をした。
マスタングから降車すると同時に、座席にグレネードランチャーを立て掛けて兵士達を睨みつける。
「貴殿がイズミだな?」
兵士達の間から現れたのは、一目で貴族と分かる程に仕立ての良い服を身に纏った男だった。
その隣には、先日宿屋に現れたと言う緑髪の男がいた。
「私はここジェヴェドール王国の第三王子、サンドヴァル・ジェヴェドールである!一度貴殿と話をしたくここへ来たのだ」
「…だったら、そんなに兵士を準備せずとも、隣の男に手紙の1枚でも渡しておけば良かったのでは?」
イズミは思わずツッコミを入れてしまった。
「手紙は貴族間とのやりとりで疲れたのだ。やはり直接会って話すのが良いのだ」
バカ正直なのか何なのか分からない王国の第三王子とやらの考え方に、どことなく剛の者の気配を感じる。
「確かに俺はイズミだ。話をしたいなら、まずは兵士を下げてくれ。このままじゃ町に住む人々が怖くて家から出れない」
「…それもそうだな。皆、武器を降ろせ」
王子の言葉を聞き即座に武器を降ろす兵士達の動きは、紛れもなく精鋭の動きだった。
「戦闘狂かと思っていたが、どうやら常識もあるようだな。しかし、あの目は正に戦闘狂のソレだった…読めぬ相手ならば下手に関わらないのが得策か?」
王子はイズミとの関わり方を、直ぐに決めたようだった。
「…で、話というのは」
イズミはこの町の長が住む屋敷へと案内され、大きな部屋で話をする事になった。
町長は突然の訪問者に驚き、大急ぎでもてなす準備をしようといていたが、王子が止めさせていた。
「ここ暫く、王都で話題になっている事に興味を持ったのだ」
第三王子は従者が淹れた紅茶を飲んでから、静かに話し始めた。
イズミは嫌な予感がしたので、一瞬で周囲を見てから裏通りへと入って行った。
馬車が通り過ぎるのを確認してから、少しだけ間をあけて宿屋へと戻った。
「お客様、先程お客様宛てに来客がありました」
宿屋の従業員から声をかけられたイズミは、来客の特徴を聞いた。
「…心当たりは無いな」
緑髪のおかっぱ頭に紅い目、色白で高級な服を着た貴族か商人と言う説明に対して、イズミは一言で片付けた。
部屋に戻ったイズミがマスタングに確認をしてみる。
「マスタング。何か異常はあったか?俺宛てに来客があったらしいが」
「…特に問題はありません。来客に関してですが、まだ明確な敵意は感じませんでした」
マスタングがそう言うならば、取り敢えずは大丈夫なのだろう。
「俺に用事のある奴って、どんなだろうな」
「マスター。ほとんどの場合、マスターを利用して利益を得たい者達です。マスターの事を利益をもたらす駒としか考えていないと思っておいた方が良いかと」
駒とか歯車になるのは、元いた世界で生きていた時だけで十分である。
この世界では自由でありたい。
イズミはベッドに横になりつつ、明日にでもまたやって来そうな来客に頭を悩ませていた。
翌日。
朝1番で宿屋に挨拶を済ませたイズミは、マスタングへと乗り込み次の町へと向かおうと通りへ出る。
「嫌な予感ってのは、当たるもんだな」
道を何台もの馬車が塞いでいた。
そして、衛兵にも冒険者にも見えない兵士達が武器を持って立っている。
イズミは車内から周囲を見てみるが、町の住人は見当たらなかった。
ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、家から出て来ていないようだ。
「マスタング。取り敢えず戦闘態勢だ」
「かしこまりました」
グローブボックスから出て来たメガネをかけてから、兵士や馬車の動向を確認する。
「反応は全部で50です」
「厄介な相手はいるか?」
「…我々の火力であれば、問題ありません」
イズミはグレネードランチャーを実体化させてから、何時でも撃てるように準備をした。
マスタングから降車すると同時に、座席にグレネードランチャーを立て掛けて兵士達を睨みつける。
「貴殿がイズミだな?」
兵士達の間から現れたのは、一目で貴族と分かる程に仕立ての良い服を身に纏った男だった。
その隣には、先日宿屋に現れたと言う緑髪の男がいた。
「私はここジェヴェドール王国の第三王子、サンドヴァル・ジェヴェドールである!一度貴殿と話をしたくここへ来たのだ」
「…だったら、そんなに兵士を準備せずとも、隣の男に手紙の1枚でも渡しておけば良かったのでは?」
イズミは思わずツッコミを入れてしまった。
「手紙は貴族間とのやりとりで疲れたのだ。やはり直接会って話すのが良いのだ」
バカ正直なのか何なのか分からない王国の第三王子とやらの考え方に、どことなく剛の者の気配を感じる。
「確かに俺はイズミだ。話をしたいなら、まずは兵士を下げてくれ。このままじゃ町に住む人々が怖くて家から出れない」
「…それもそうだな。皆、武器を降ろせ」
王子の言葉を聞き即座に武器を降ろす兵士達の動きは、紛れもなく精鋭の動きだった。
「戦闘狂かと思っていたが、どうやら常識もあるようだな。しかし、あの目は正に戦闘狂のソレだった…読めぬ相手ならば下手に関わらないのが得策か?」
王子はイズミとの関わり方を、直ぐに決めたようだった。
「…で、話というのは」
イズミはこの町の長が住む屋敷へと案内され、大きな部屋で話をする事になった。
町長は突然の訪問者に驚き、大急ぎでもてなす準備をしようといていたが、王子が止めさせていた。
「ここ暫く、王都で話題になっている事に興味を持ったのだ」
第三王子は従者が淹れた紅茶を飲んでから、静かに話し始めた。
32
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。
SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。
サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる