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第八章 王都での日々
閑話 エレナは未来を見る
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エレナはイズミ達と別れてからも、懸命にリハビリを続けていた。
日に日に自由に動く、歩けるようになるのが嬉しくてたまらない。
ふとした瞬間に思い出す。
冒険者通りから現れたイズミを一目見た瞬間に感じた、何かが変わるかもしれないと言う不思議な期待感。
従者に無茶を言って連れてきてもらったのは、今となっては私史上最大の行動だったと思う。
リハビリを終えて車椅子に座る。
足に感じる疲労感が、心地よい。
そして昨日の出来事を振り返った。
王家から父であるアレクセイと一緒に呼び出されたのだ。
人生で一番緊張したと言って間違い無いだろう。
魔法の適性が増えた事を中心に質問をすると言われたが、イズミは自分の事に関して、別に話しても構わないと別れ際に言っていたのもあるが、王家が任命した担当官からの質問には真実を話さなければならないと父から説明を受けた。
王城へ向かう馬車内では生きた心地がしなかった。
「…つまり、そのマスタングと言うアーティファクトが実験的に魔法適性の追加付与を行った。そう言う事ですな?」
担当官も理解に苦しむと言った感じであった。
「はい。私も未だに信じられないのですが…事実として、私の足は動くようになり、魔法の適性も増えています」
エレナは質問に答えながら、国王の前で宣誓をした時のどよめきを思い出す。
車椅子から立ち上がれない足の不自由な女。
従者が居ないと1人では何も出来ない、貴族としては『利用価値の無い女』だと、私を見下していた貴族やその取り巻き達が、私が車椅子から立ち上がり国王の前まで進んで宣誓をした際、驚きのあまり国王の面前だというのに声を上げていたのだから。
国王でさえも声に出さずとも驚いていたのだ。
これを面白いと言わず何と言うだろうか?
「そのイズミと言う男は、まだ王都にいるのか?」
「いえ、此処に呼ばれる前に王都を離れました。彼のパートナーであるカレンと言うエルフ族の方から聞きましたが、次の目的地は海だと」
担当官は話の内容を記録しつつ、質問を続ける。
「海ですか。そこへ向かう目的は聞いておりますかな?」
「はい。美味しい料理を求めて、と言っていました。彼は旅人であり、美味しい料理は旅の醍醐味と力説してましたので」
エレナは笑顔で答える。
「ふむ。話を戻しまして…その治療と魔法適性追加に関して、報酬として何を求められたのですかな?」
「金貨7枚と、王都の美味しい料理を提供するお店の紹介です」
担当官が記録をした後、その報酬に違和感を感じてエレナを見た。
「金貨7枚ですか?700枚や白金貨7枚とかではなくて?」
「間違いなく、金貨で7枚です。お金は魔物でも賊でも討伐すればいくらでも稼げるので、特に欲しくもないと言われました」
「冒険者ギルドに未登録でありながら、そんな考え方をするとは。イズミと言う男は、もしかすると…酔狂な男なのですかな?」
「変なのは確かですね…優しさと、恐らく冷酷さも持っている、不思議な方でした」
エレナの言葉からは、嘘偽りの類いを感じられない。
担当官の男は問題無いと判断して、質問の場を閉じた。
王城からの帰り道、アレクセイとエレナは馬車の中で話をしていた。
「お父様、私がしっかりと歩ける様になりましたら…海を見てみたいです」
「海か…私の領地も海に面してはいるが、王都より暑いぞ?」
アレクセイは笑いながら話を続ける。
「あの男も海を目指すと言っていたな…もしも私の領地に来たならば、是非とも盛大に持て成してやりたいな」
「そうですね。でも…その前に、お父様と一緒に砂浜を散策したいです。物心ついた時から、ずっと王都住まいでしたし」
エレナは足を動かしながら、馬車から見える夕焼け空を見つめた。
「そうだな!海辺は活気があるからな、きっと気に入るぞ!」
アレクセイが微笑むと、エレナもつられて微笑んだ。
今までとは違う世界が、求めていた景色が目の前にあり、これからは自分の足で進めるのだ。
日に日に自由に動く、歩けるようになるのが嬉しくてたまらない。
ふとした瞬間に思い出す。
冒険者通りから現れたイズミを一目見た瞬間に感じた、何かが変わるかもしれないと言う不思議な期待感。
従者に無茶を言って連れてきてもらったのは、今となっては私史上最大の行動だったと思う。
リハビリを終えて車椅子に座る。
足に感じる疲労感が、心地よい。
そして昨日の出来事を振り返った。
王家から父であるアレクセイと一緒に呼び出されたのだ。
人生で一番緊張したと言って間違い無いだろう。
魔法の適性が増えた事を中心に質問をすると言われたが、イズミは自分の事に関して、別に話しても構わないと別れ際に言っていたのもあるが、王家が任命した担当官からの質問には真実を話さなければならないと父から説明を受けた。
王城へ向かう馬車内では生きた心地がしなかった。
「…つまり、そのマスタングと言うアーティファクトが実験的に魔法適性の追加付与を行った。そう言う事ですな?」
担当官も理解に苦しむと言った感じであった。
「はい。私も未だに信じられないのですが…事実として、私の足は動くようになり、魔法の適性も増えています」
エレナは質問に答えながら、国王の前で宣誓をした時のどよめきを思い出す。
車椅子から立ち上がれない足の不自由な女。
従者が居ないと1人では何も出来ない、貴族としては『利用価値の無い女』だと、私を見下していた貴族やその取り巻き達が、私が車椅子から立ち上がり国王の前まで進んで宣誓をした際、驚きのあまり国王の面前だというのに声を上げていたのだから。
国王でさえも声に出さずとも驚いていたのだ。
これを面白いと言わず何と言うだろうか?
「そのイズミと言う男は、まだ王都にいるのか?」
「いえ、此処に呼ばれる前に王都を離れました。彼のパートナーであるカレンと言うエルフ族の方から聞きましたが、次の目的地は海だと」
担当官は話の内容を記録しつつ、質問を続ける。
「海ですか。そこへ向かう目的は聞いておりますかな?」
「はい。美味しい料理を求めて、と言っていました。彼は旅人であり、美味しい料理は旅の醍醐味と力説してましたので」
エレナは笑顔で答える。
「ふむ。話を戻しまして…その治療と魔法適性追加に関して、報酬として何を求められたのですかな?」
「金貨7枚と、王都の美味しい料理を提供するお店の紹介です」
担当官が記録をした後、その報酬に違和感を感じてエレナを見た。
「金貨7枚ですか?700枚や白金貨7枚とかではなくて?」
「間違いなく、金貨で7枚です。お金は魔物でも賊でも討伐すればいくらでも稼げるので、特に欲しくもないと言われました」
「冒険者ギルドに未登録でありながら、そんな考え方をするとは。イズミと言う男は、もしかすると…酔狂な男なのですかな?」
「変なのは確かですね…優しさと、恐らく冷酷さも持っている、不思議な方でした」
エレナの言葉からは、嘘偽りの類いを感じられない。
担当官の男は問題無いと判断して、質問の場を閉じた。
王城からの帰り道、アレクセイとエレナは馬車の中で話をしていた。
「お父様、私がしっかりと歩ける様になりましたら…海を見てみたいです」
「海か…私の領地も海に面してはいるが、王都より暑いぞ?」
アレクセイは笑いながら話を続ける。
「あの男も海を目指すと言っていたな…もしも私の領地に来たならば、是非とも盛大に持て成してやりたいな」
「そうですね。でも…その前に、お父様と一緒に砂浜を散策したいです。物心ついた時から、ずっと王都住まいでしたし」
エレナは足を動かしながら、馬車から見える夕焼け空を見つめた。
「そうだな!海辺は活気があるからな、きっと気に入るぞ!」
アレクセイが微笑むと、エレナもつられて微笑んだ。
今までとは違う世界が、求めていた景色が目の前にあり、これからは自分の足で進めるのだ。
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