異世界無宿

ゆきねる

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第八章 王都での日々

第百十話 災難

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マスタングの実験を如何にオブラートに包んで伝えようかと悩むイズミだったが、素直に言うと怪しまれる。
そこで…

「エレナ様。魔法治療の経過を確認したいので、またマスタングに乗って頂けませんか?」

それっぽい事を言って案内する事に成功した。
今回はアレクセイも同席すると言うので、より丁寧な対応が必要だ。

「マスタング…上手く連れて来たが、名目上は治療の経過確認だからな」

「かしこまりました」

マスタングは機械音声なのだが、心なしかウキウキしてそうな気がした。

「エレナ様。つかぬ事をお聞きしますが、魔法適性は何種類でしょうか?」

「え…私は水属性と風属性ですが、どうしてですか?」

車外には声が漏れていない為、イズミ以外は何を言っているのかは分からない。
その為、アレクセイがイズミに質問をして来た。

「イズミ。アーティファクトからこれまでの話は聞いたが、これから何をするのだ?」

「身体に違和感が無いどうかを調べています。特定の動きが出来ないとか、痺れがあるかどうか、とかですね」

説得力がありそうな事を言ってその場を乗り切っていると、マスタングのトランクが開いた。

イズミが覗き込むと、緑色をしたガラス製の小瓶が1つ入っていた。

「マスター。それを飲んで下さい」

マスタングに言われるがままに、キャップ代わりのコルクを抜いて一気に飲んだ。

「なんだコレ?変な味だ」

それは炭酸が抜けきったエナジードリンクに漢方薬でも混ぜたかのような味だった。

「飲み切りましたか?では始めます」

「始めるって?日に2回はキツいっ…グェェ」

マスタングの言葉を理解したイズミだったが、止めに入る前に魔力をほぼ全てマスタングに抜かれてしまった。
マスタングの車内が光に包まれるのと同時に、イズミが地面に倒れ込んだ。

それを目の当たりにしたアレクセイは軽く動揺していたが、エレナの従者とカレン達が素早く対応をしてくれた。

「コレをやると、イズミさんはいつも倒れるんです。大丈夫ですよ、私達は慣れてますから」

カレンは既に、イズミとマスタングの奇妙な関係性に慣れてしまっていた。


「エレナ様、魔力適性の追加及び、両足の微調整が完了しました」

「マスタング様、本当にありがとうございます。後で魔力鑑定をしてみますね」

そんな会話があった事は、気絶したイズミは知る由もなかった。


その後、意識を取り戻したイズミはブロズムナード邸にて夕食を振る舞われた。
最も、夜の9時過ぎに意識を取り戻したので、使用人や従者向けの食事との説明を受けたが、1日に2度も魔力を抜かれたイズミにとっては、かなりのご馳走であった。

「イズミさん。明日、エレナ様が王都の冒険者ギルドの人を呼んで魔力適性の鑑定をするそうですよ」

イズミはカレンからそんな報告を聞きつつ、ガツガツと食事を続けていた。
久しく感じなかった空腹感からか、何時もより多く食べていた。

「イズミさんも受けてみますか?ってエレナ様が」

「魔法が使えない人間が鑑定してもって気がするが」

とは言ったものの、自分の適性が分かるのは面白い。
流石は異世界だ、ファンタジーを感じられて楽しいのだ。

結果次第では、色々な陰謀に巻き込まれたりしそうだが、そんなものは全てマスタングと一緒に灰にしてしまえば良いのだ。

イズミはエレナの提案に乗ってみる事にした。
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